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M-Bankユーミン楽曲(コード進行・歌詞)研究レポート公開シリーズ3★★★

日本人の心の情景を変えたシンガーソングライター(改訂版)

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―研究レポート;ユーミン楽曲の和声分析と音楽的クオリアが紡ぐ作曲の手法―

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6和声技法事例集

ポピュラー音楽を創作するクリエイターにとっての日頃のインスピレーションとなるような「事例集」をイメージして制作した。

ユーミン楽曲の独自性を学習するためだけではなく、ユーミン楽曲に使われている手法を通じて、ポピュラー作曲技法(主に和声進行)の発展利用に活用頂きたい。

ユーミン楽曲の半数近くがこうした事例集に列挙できる実験的楽曲であり、そのもう半数は誰もが口ずさめるスタンダードメロディである、というこのバランスがまた見事である。

 

なお、コード進行体系の分類については、前回のビートルズ楽曲分析において行なった下記分類を最初は入り口とした。下記にその時の分類を列挙する。

 

分類I;

同主調の和音を混合して用いられた楽曲(I、III♭、IV、IVm、V、VI♭、VII♭系)他

例;C  |E♭ |F  |A♭ |

cを主音としてCメジャー、Cマイナーのダイアトニックコードを組み合わせて用いた楽曲構造を持つ形態をさす。ユーミン楽曲の中にも見られるが、明らかにこの考え方で収まってしまう展開については割愛した(ビートルズ楽曲のコード体系についてはビートルズ関連記事を参照されたし)。

 

分類II;各種7thコード(各音度調の属和音等)が用いられた楽曲(II7、VI♭7、VI7、VII7)他

例;CM7  |B7  |E7  |A7  |Dm7 G7 |CM7

いわゆるセカンダリードミナントコードなどを用いている形態をさす。ビートルズの場合はランダムに用いた形跡が感じられたが、ユーミン楽曲の場合は意図を明らかに感じたのでビートルズ色のない作風で特徴的な事例は可能な限り列挙した。

 

分類III;クリシェの手法が応用された楽曲

例;Cm  CmM7 |Cm7 Cm6  |

前の和音の一音を順次変化させて紡いでいくコード進行の形態をさす。これはビートルズの特徴的進行というよりも、ポップミュージックの特徴的進行であるので、これらの進行については、今回ほとんど割愛している。

 

分類IV;ブルース7thコード使用曲(分類IIと同系統であるが、ブルースという音楽性を背景に持っていると感じられる楽曲群)

例:C7  |C7  |F7  |F7  |

ビートルズの場合はロックンロール、リズム&ブルースがイメージされた作品が多いが、ユーミン楽曲のブルース7thは、ポップスとブルースの中間的な響きがする独自なものである。ブルースの匂いを洗い流して淡いカラーにしたような7thコードを適宜事例としてピックアップした。

 

分類 V;分類IからIVのケースを複合利用する等その他の用例 

 

これらの分類によって「ビートルズのコード進行」の特殊性と、ジャズ的ハーモニーのポップス化を成し遂げた事例としてのビートルズの実験的アプローチと成果、実績は明らかとなった。これらの進行事例を機能和声論で考えるのではなく、不定調性論(和声の自由連鎖コンセプトとして)の立場から求め直すことで、ポピュラーミュージック和声のもう一つの視点を作ることができた。これは「ビートルズのコード進行を機能和声論的音楽理論の先にある、ポップミュージック+ジャズアプローチの融合論で説明する」ために必要であった。これが60年代以降のポップミュージック和声の考え方に置かれる事で、従来のアプローチとは異なる不思議なコード進行を自在に想定することができるようになる。その先に位置する70年代以降に対して、どのような考え方が付されれば、機能和声論の理論的伝統を破壊せず最新ポピュラー和声を捉えられるか、についての一つの提案が不定調性論である。

 

ユーミン楽曲における特殊進行の多くは明らかに分類5またはそれ以外のタイプの進行が多い。ビートルズにおける分類5の進行の多くは、従来の機能進行に属さない、というよりも「知っているコードタイプを連鎖させた結果生まれた偶然的ともいえる進行」「ギターコードの運指の類似性や簡易移動によって作られる声部進行が特殊性を生み出した結果」にとどまっていたが、ユーミン楽曲のコード進行は意図的であり、ビートルズ的な音楽にとどまらない明らかなジャズ性が存在している。さらにジャズの抽象性の難所に着目し、II-Vや代理コードを「音楽進行上絶対必要なコード」に使用頻度を押さえることで、他の主要コード同様に音楽的文脈的意味を持たせたコードとして用いた、まさにジャズとビートルズが種をまいた特殊進行の発展形となっている(彼らの影響を受けている、と公言しているわけではないので誤解しないように)。

ユーミンがビートルズ的作曲技法の感覚をすでに熟知しており、それを越えた作風をデビューアルバムから確立していることが下記分析から理解して頂けると思う(参考文献の引用なども参考されたい)。

 

当初はビートルズの用いた技法以外に4つ、5つの技法にまとまればと面白いだろうという思い(ビートルズは多くても10種程度の技法に収まるだろう)で分析を進めていったが、気が付けば121もの事例集となったことは私の想像をはるかに超えた挑戦がなされていたことを意味している。その戦いの歴史と平行して、全国ツアーや数々のイベントをこなしてきたユーミンチームの尋常ではない精神力と体力は私には想像できない。

 

なお下記のコードアレンジ事例の部分は、必ず原曲の該当部分を各位が直接聴取しながら行なうことを推奨する。そしてこれらの進行表記は、発表当時のものであり、それからの歴史で、どのような和声解釈の変化が起きているかまでは把握できていない。ライブ版の演奏や、最新の各曲の演奏状態を各位自身の耳でチェックし続けて頂きたい。

また、下記の和声進行をただ模倣するのではなく、それをさらに発展させ、各位の音楽的なクオリア=聴いた時の印象と心象の具現化、を信じて拡張させることがこの和声分析の目的であるので、どしどし発展利用活用頂きたい。

 

<アルバム目次>

アルバム1;『ひこうき雲』(1973)(当記事下部より)

アルバム2;『MISSLIM』(1974)

アルバム3;『COBALT HOUR』(1975)

アルバム4;『14番目の月』(1976)

アルバム5;『紅雀』(1978)

ページ1 ページ2 ページ3

アルバム6;『流線形'80』(1978)

ページ1 ページ2 ページ3

アルバム7;『OLIVE』(1979)

アルバム8;『悲しいほどお天気』(1979)

アルバム9;『時のないホテル』(1980)

アルバム10;『SURF&SNOW』(1980)

アルバム11;『水の中のASIAへ』(1981)

アルバム12;『昨晩お会いしましょう』(1981)

アルバム13;『PEARL PIACE』(1982)

アルバム14;『REINCARNATION』(1983)

アルバム15;『VOYAGER』(1983)

アルバム16;『NO SIDE』(1984)

アルバム17;『DA・DI・DA』(1985)

アルバム18;『ALARM a la mode』(1986)

アルバム19;『ダイアモンドダストが消えぬまに』(1987)

アルバム20;『Delight Slight Light KISS』(1988)

アルバム21;『LOVE WARS』(1989)

アルバム22;『天国のドア』(1990)

アルバム23;『DAWN PURPLE』(1991)

アルバム24;『TEARS AND REASONS』(1992)

アルバム25;『U-miz』(1993)

アルバム26;『THE DANCING SUN』(1994)

アルバム27;『KATHMANDU』(1995)

アルバム28;『Cowgirl Dreamin'』(1997)

アルバム29;『スユアの波』(1997)

アルバム30;『Frozen Roses』(1999)

アルバム31;『acacia』(2001)

アルバム32;『Wings of Winter, Shades of Summer』(2002)

アルバム33;『VIVA! 6×7』(2004)

アルバム34;『A GIRL IN SUMMER』(2006)

アルバム35;『そしてもう一度夢見るだろう』(2009)

アルバム36;『ROAD SHOW』(2011)

アルバム37;『POP CLASSICO』(2013)

アルバム38;『宇宙図書館』(2016)

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アルバム1;『ひこうき雲』(1973)より

下記記事もご参考ください。

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事例1;ひこうき雲

open.spotify.com

解説は上記記事が最新なので、そちらをご参照ください。

上記記事を経て、「ひこうき雲」から得られるテクニックの用例を下記に記します。

 

用例1

CM7  |CM7  |FM7  |FM7  |→

CM7  |CM7  Gm7 C7|FM7  |FM7 |→

CM7  |CM7  Gm7 |FM7  |FM7 |

これにより、本来II-VとしてGm7 C7 FM7というII-V-Iの伝統的進行概念を越えて、その進行感だけを発展利用させたV7のない進行感を活用できる。

このときGm7を置くことが本当に意味があるかどうか、と考える時、作者がこのGm7にどんな印象を感じられるかがポイントだと思う。調的に自然、不自然ではなく、自分がどう感じるかに対して鋭敏な音楽的イメージを持つことで既存の進行形態や慣習的進行に囚われない状態を察知できる脳感覚をセットしておくことができるのではないだろうか。

そのために拙論では、様々な和声の連鎖に各個人が音楽理論的常識に囚われず、個人の情感によりそれを求め、産み出し「その曲だけの、自分だけのセオリー」として塗り固め、一曲一曲が独立した音楽理論で確立する、という結果に立てるようにトレーニングしていく。

 

用例2

Cm7  |Cm7  |Fm7  |Fm7  |→

Cm7  |Cm7   E♭m7 |Fm7  |Fm7  A♭m7 |

次に、同曲でのGm7-B♭m7において、短三度のm7への変化の変化感も「跳躍」感を出しているという認識に立ってみる。

Cm7      →  E♭m7


通例m7の短三度移行は二音同音、二音反行というバランスの取れたヴォイシングになるため、ジャズハーモニーではダイナミックなヴォイスリーディング(voice reading=声部進行)とされる。

これらの「進行感」の連鎖については、日本リズム協会(Japan Institute of Rhythm)第32回大会(2014年11月24日)『不定調性論の和声理解に基づく、音楽空間のリズム的変化とそのストーリー』にても述べている(詳細は筆者まで)。従来の和声の進行感に囚われず「その曲が今持っている方向性と、必要とされる音」を感じ取れるようにしていく訓練が、そうした「理論に囚われない進行感を作り出す」という解説を施してきた。

そこでは、

 

ある和音Xはあらゆる和音X'に変化することができる。

 

これは云ってみれば、コード進行という方法論にはまってしまった現代ポピュラーミュージックの一形態を、クラシック音楽のように「コードでは考えない」アプローチに立ち戻って取り混ぜようという試みかもしれない。

そのためには当然コード進行に対する知識が必要であり、逆にそれらをマスターしたら、大作曲家達を目指して、コード進行の概念から解放されよ、という次なるステップの提示なのである。

 

事例2;曇り空

事例3;恋のスーパーパラシューター

事例4;きっと言える

事例5;ベルベット・イースター

下記をリライトいたしました。spotifyのリンクを張り、それまで中略とされていた部分も書き直しました。

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==コーヒーブレイク〜M-Bankロビーの話題== 

これが一番衝撃的でした。作詞作曲に触れる話は、ちょっと"それ載っけていいの??"って思いました。

ルージュの伝言 (角川文庫 (5754))