音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

20,中央フリーウェイ(II-Vの連鎖感をポップスに翻訳する)~ユーミン歌詞・コード考11

ユーミンの不定調性コード進行研究

ユーミン歌詞・コード考10 / アルバム「14番目の月」1

 

各種レポートはM-Bankにお問い合わせいただければPDF似て無償で配布しております。宜しくお願い致します(日本音楽理論研究会にて発表も行いました)。

歌詞については掲載しておりませんので

www.uta-net.com

こちら等にて確認ください。

 

20,中央フリーウェイ / 松任谷由実

 

 

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Aメロですが、
FM7--Fdim7--D7--Gm7--Edim--C7--Fm7--Bbm7--Bbm7/Eb--AbM7--Gm7(b5)--C7sus4

というのが骨子のラインです。
この進行をジャズの和声連鎖に"翻訳"してみます。


FM7--Am7(b5)-D7--Gm7--Gm7(b5)-C7--Fm7--Bbm7--Bbm7/Eb--AbM7--Gm7(b5)--C7sus4

II-Vを用いたビバップになります。

 

II-Vを挟むことによって、次へのキーが意識の上で"準備される"ので、歌いながら転調の準備がしやすく、派手な"転調"ができます。


さらに例えばですが、スティービー・ワンダーなどはこうした準備をしないでいきなり転調をしてしまう、という歌唱力を持っています。

 

こういう和音の連鎖の発想を不定調性的な発想、と拙論では言うようにしております。

作曲をするうえで、よほど"私はどんなふうに和音が進んでも絶対に二番で主和音に戻る自信がある!!"という人でないと、なかなかできないでしょう。

たいていは"果たしてこのまま行って、ちゃんとした曲になるんだろうか"と、不安になるからです笑。

この曲は結果的に、高速道路をすっとばしてめまぐるしく景色が変わる疾走感のような曲想となっています。

 

ちょっとやってみましょう。
作成例;
CM7 |Bm7 E7 |AM7 |Gbm7 Db7 |GbM7 |AM7 |CM7 |B7 :||

メロディが乗せられる人は乗せてみてください。
確かに「転調」なのですが、これは指が流れるままギターのコードをつなげただけです。

 

転調という概念は広義に使われていますが、このようにビ・バップ的なII-Vを連続させると、自動ドアで仕切られた部屋を順次移動するように、迷うこと無く導かれていきます。

このような概念を不定調性論では、「ブロックチェンジ」とか「旋調性」などといいます。どんどん調のブロックが入れ替わり、元に戻ります。


もちろん戻らない場合もあります。

 

一番簡単なのは、和声単位=決まったタイプの和音だけを連鎖してその進行感が持つストーリー性を探る方法、を定めることです。

ビートルズなどがメジャーコードや7thコードをつなげて独自の雰囲気を作っていった、というようなやり方です。

 

たとえば、XM7という和声だけを用いて作曲してみます。
作成例;
CM7 |AbM7 |GM7 |EbM7 DbM7 |CM7 |

最初はこうした簡単な数小節の和声の流れにメロディをおきます。

こうやって特殊なコード進行に慣れていきます。

 

結局CM7--AbM7の流れは、AbM7がCマイナーキーのVIbである、とわかればサブドミナントマイナーコードVIbに移行している感覚を用いている、ということになります。

でもCメジャーキーやCマイナーキーは意識しません。その代わりVIbM7が普段持っている感覚、VIbM7に移動したときに感じる音楽的クオリアを特定できている経験値が必要です。

 

同曲、最後にサビの部分、
DbM7---AbM7--Ebm7/Ab
DbM7---Fm7/Bb--Bbm7/Eb-Gm7/C
IV/Vのオンパレードです。これはV/IVが和声単位になっている、ともいえます。これもそれぞれの響きを理解し、それをつなげたときどんなふうな雰囲気になるか、を把握していないとつなげられません。

ジャズでは、II-Vをつなげるのはごくごく当たり前ですが、その効果があまりに似通ってしまうため「どれも同じ曲」に聴こえてしまうアンチジャズファンも多いでしょう。

しかしユーミンは、このII-Vが連鎖したときにもたらされる「疾走感」「場面変化感」「清々しさ」のような雰囲気を感じ取り、そういう「疾走するような楽曲」を作ったのではないか?と感じます。ジャズの手法をポップスに翻訳したわけです。

 

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====

(ユーミンレポートより)

Aメロ(アルバム収録楽曲タイム0:09~)
FM7 |F#dim7 D7 |Gm7 |Edim C7 |
Fm7 |B♭m7 |B♭m7/E♭ |A♭M7 Gm7(♭5) |C7sus4 |~
この骨子のラインを、ジャズ理論に則って翻訳するならば、
FM7 |Am7(♭5) D7 |Gm7 |Gm7(♭5) C7 |
Fm7 |B♭m7 |B♭m7/E♭ |A♭M7 Gm7(♭5) |C7sus4 |~
というようにII-Vを用いたビ・バップ進行になる。これをより簡素化すると、
FM7 |D7 |Gm7 | C7 |
Fm7 |B♭m7 |B♭m7/E♭ |A♭M7 |C7sus4 |~
こうなると、キーが見えてくる。
=degree=
IM7 |VI7 |IIm7 | V7 |
Im7 |IVm7 |IVm7/V |III♭M7 |V7sus4 |~


つまり、FメジャーキーからFマイナーキーに移行しながら、展開してまたV7であるC7に向けてつじつまを合わせるように作るのであるが、これは作曲に慣れていて「どんなふうに進んでも元のキーに戻す自信がある」というまでにならないとなかなか飛び散るような転調感の中で、音楽的に組み立てていくのは非常に難しい、と言える。

 

また転調を自然に起こすためのII-Vをリズミカルに挟むことによって、次へのキーが意識の中で用意されるので、準備がしやすい。

これも進行感の利用であって、決して理論的なアプローチという観点ではない。和声が進行することでどんな雰囲気もそこに発生する、と知ることで、転調の連続もまた和音の連鎖であり、そこには風景、色彩、意味がしっかり含まれる。それを捉えながら、こうしたII-Vによ連続進行でまずメロディ作りに慣れる必要がある。


またこのめまぐるしい転調感とフリーウェイを颯爽と飛ばすお洒落な姿がイメージできる、と云うのも、この転調が意味のあるものになっていることを示している。


同曲に基づく用例;
CM7 |Bm7 E7 |AM7 |G♭m7 D♭7 |G♭M7 |Fm7 B♭7 |E♭M7 |Dm7 G7 :||


このようにビ・バップ的なII-Vを連続させると、自動ドアで仕切られた部屋を順次移動するように、迷うこと無く導かれていく。不定調性論ではこのような進行感を「旋調性」と呼び、機能進行を拡張し、より色彩感豊かな進行感を演出する。II-Vをつなげすぎると、効果があまりに似通ってしまうため「どれも同じ曲」に聴こえてしまう。しかし同曲では満を持してII-Vの連鎖をコンセプトにして「疾走感」「場面変化感」「清々しさ」の雰囲気を作り、以後は同じテクニックを用いていない。あくまでポップスという音楽ジャンルに取り入れ、テクニックやそれが持つ表現方法の一つとして同曲に的確に用いたに過ぎず、この曲で用いられた技法を誰かが別の曲で用いようと思ったら、結果的に同じような曲になってしまうだろう。II-Vというのはそういう独自の抽象性を持っているからだ。

 

 14番目の月

 

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