2018.3.21⇨2020.5.9更新
前回
歌詞については掲載しておりませんので
https://www.uta-net.com/artist/2750/
こちら等にて確認ください。
ハートの落書き
ノーサイドの世界観。
Aメロ
G# |Cm7 |Fm7 |Adim7 |
Bbm7 |C7 | Fm7 |Eb7 |
G# |Cm7 |Fm7 |Adim7 |
Bbm7 |C7 | Fm7 |G#7 |
となってまして、I-IIIm-VIm-I#dim |
となっているのですが、このI#dimはディミニッシュコードですから、四つのバリエーションがあります。
Cのキーで書き直すと、
C |Em |Am C#dim7 |Dm~
になるのですが、ちょっとディミニッシュコードについて知らないと、およよ!ってなりますよね。
ディミニッシュコードは、
R(短三度)m3(短三度)-5(短三度)M6(bb7)
と、どの構成音間も短三度なので、転回しても同じになります。
ゆえに、
C#dim7=Edim7=Gdim7=A#dim7
です。構成音が同じなんです。CM7やCm7ではこうはなりません。
で、この同価性を利用するわけです。
A7(b9)→Dmはマイナーコードへのドミナントモーションですよね。
A7(b9)=a,c#,e,g,b♭
C#dim7=c#,e,g,a#=b♭
と良く構造が似ていますよね。つまり、
A7(b9)=a+C#dim7なんですね。
つまりこのディミニッシュコードは、DmへのドミナントコードであるA7の役割も果たしているとなるわけです。書き直してみましょう。
C |Em |Am C#dim7 |Dm~
→
C |Em |Am A7(b9) |Dm~
でもおんなじような感じで展開できます。
Flying Messenger
コード進行はマイナーですがこれもエオリアン進行で、短調でも「暗い」のではなく、ふんわり切ない、という暗さを保っています。メロディと歌詞の雰囲気が、切なく響きますね。
黃色いロ一ルスロイス
open.spotify.com
ロックンロールなエイトビートです。
まさか、とおもいましたが、やはり不定調性進行がカッコ良く決まっています。
歌始まり~
G |G |C |C |
Eb|F |G |G |
GメジャーキーのI |GメジャーキーのI |GメジャーキーのIV |GメジャーキーのIV |
GマイナーキーのVIb |GマイナーキーのVIIb |GメジャーキーのI |GメジャーキーのI |
となりますね。
こうした進行をメジャーコードによる不定調性進行と言ってしまうんですね。
「Cの押さえ方のままさ、こうやってAbに持ってきて弾いたら、何となくカッコよかったってだけだよ。」
という感覚で音楽を作りたい時がありませんか?ロックの熱を感じる速度感で。
Bueno Adios
Fm7 |% |Cm7 |% |
Fm7 |% |Cm7 |% |
Fm7 |% |Cm7 |% |
D7 |% |G7sus4 |G7 |
Aメロの部分です。
このD7。
ドッペルドミナントとか、ダブルドミナントと呼ばれるおなじみのII7。
例;
Fm7 |% |Cm7 |% |
Fm7 |% |Cm7 |% |
Fm7 |% |Cm7 |% |
Dm7(b5) |% |G7sus4 |G7 |
このようにしちゃったときとの雰囲気を比べて下さい。
D7のほうが、じらされている感じがしませんか?感じ方はそれぞれであるでしょうが、「迫る男、拒む女」または「悩む男、とがめる女」みたいなかんじがタンゴのリズムに乗ると醸し出されると思いませんか?
この感じをそれぞれが感じるが故に、その和音は使われるんです。
分かって使っている人の響きを良く聴いて、それが自分の中の「音楽のスイッチ」を押してくれるまで、何度も何度も聴いて、また自分のオリジナル曲で使いながら究めていきましょう!
Judas Kiss
サビ(アルバム収録タイム 1:09-)
A♭M7 |A♭/B♭ |E♭M7 Dm7 |CM7 |
A♭M7 |A♭/B♭ |CM7 |
A♭M7 |A♭/B♭ |E♭M7 Dm7 |CM7 |
A♭M7 |A♭/B♭ |Cm7 |
同曲はCmでキーがスタートしているので、このサビはVI♭M7からスタート。
このコード感はおなじみなので、サビらしさの「飛翔感」が出ます。
そしてそのままベース音が全音ずつ上がってCmに結びつくのか、というと分数コード感のほうを優先し、E♭メジャーに向かい、一瞬明転(平行長調)して今度は横にスライドして同主長調の主和音であるCM7に帰着します。
間にはさまれたDm7は正確に聴取できているか自信がなし!!
そして最後に主調Cmに戻ります。ここでも調の変化、というよりも、
変化1;A♭M7 →A♭/B♭
変化2;A♭/B♭→E♭M7
変化3;E♭M7~CM7
変化4;A♭/B♭→CM7
という四つの連鎖感をつなげながら、メロディを紡いでしまっているように感じます。
変化1は上層部が変化せずベースだけが上がっていく進行、変化2は通例のハーフドミナントコードによるトニックへの解決進行感。そして
変化3はE♭M7→Cm7
変化4はA♭/B♭→Cm7
とCm7へと進むと見せかけたミスディレクションによって一時転調感を出す。
夜空でつながっている
それぞれのコーラスの最後の一行の前に、お得意のフェイクコードがさらりと使われて色合いをパステルにしています。探してみてください。このブログではおなじみのレベル2の同主調ダイアトニックコード(IIIbM7)による挿入コードです。
人魚姬の夢
http://gakufu.gakki.me/m/?p=DT10950&k=p2
コードはこちらを参考にしてみてください。キーをAmにしてあります。
歌二行目のAm→Gm6ですが(原曲ではGm→Fm6)、これは、Am→Em7(b5)/Gとも言えます。これも先の曲と同じように、マイナーコードの連鎖ですね。メジャーコードの連鎖がシンプルなロック曲の作り易さに比べ、マイナーコードの連鎖は、非常に詩情を捉えるのが難しいのではないでしょうか。ここでの連鎖感は「小首をかしげるような不思議な悲しさ」という情感を感じました。浮遊したマイナーコードの連鎖が、声の暗さにもマッチしていて、自然と彩りを添えていると思うのですが、どうでしょう。
展開部の分数コードも、ここでそれが来ますか?というぐらい難しい詩情が積み重なっているように思います。
ユーミンにとってのアルバムの最後の曲はきっと特別な思いがあるんだと思います。
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