音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

8.ユーミン楽曲からの発展技法と不定調性論2 (ユーミンレポート公開シリーズ)21

2019.7.23⇨2020.5.25更新

日本人の心の情景を変えたシンガーソングライター(改訂版)―研究レポート;ユーミン楽曲の和声分析と音楽的クオリアが紡ぐ作曲の手法―

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それぞれの楽曲レポートは旧ページで更新をしています。アルバム目次ページからリンクしてみてください。 ユーミン楽曲はこちらからopen.spotify.comopen.spotify.com

 

同主調間のダイアトニックコードを自在に行き来するのはお手の物です。

これはビートルズやモータウンのメジャーコード(三和音的)の展開から端を発する手法ですが、それらのサウンドは粗野でシンプルイズベストなニュアンスを含み過ぎてしまう面があるため、それそのままではユーミンミュージックに活用はできません。

ユーミン楽曲はそこに淡い質感を加え、また当時のニューミュージックの文化を背景にユーミンカラーともいうべきジャズサウンドの連鎖が構築されています。

その主な原因は、三和音ではなく、四和音の活用です。同時代の洋楽にはすでにそうした音楽が存在していました。例えばカーペンターズやキャロル・キングなどですね。

 

伝統的なCメジャーキーのダイアトニックコードを列挙します。

CM7 Dm7 Em7 FM7 G7 Am7 Bm7(♭5)

そしてCマイナーキーのダイアトニックコードも列挙します。

Cm7 Dm7(♭5) E♭M7 Fm7 Gm7 A♭M7 B♭7

 

これらを一曲の中で自由に連鎖するわけです。

例;

:CM7  |Cm7  |Gm7  |FM7  |Em7 |Dm7(♭5) |CM7 |B♭7 :|

 

まず、あなたがこれらのコード群を用いて、連鎖を作ってみて、そこに自在にメロディを展開できるようになれば、この段階はクリアしています。

 

もちろんただ列挙するのではなくて「音楽的脈絡」をちゃんと感じてつなげなければならないので、本気で身につけるなら、講師と一緒にトライいただくと良いです。

 

IM7という理解から、やがて「あ、このM7は朝の光だ」となっていけば、次のコードに、サブドミナントがどうとか、機能がどうとかという先入観にとらわれることなく、「次は爽やかな空気感」とか「次は女性の感じの和音」といった音楽の展開が見えてきます。

そうなるとどういうコードが自分にとって爽やかなのか、女性的なのか、を判別できないとコードは置けません。それを考えず、セオリー的にコードを置いてしまうと、いつかは「マンネリ」がやってきます。

   

さらに、ユーミン楽曲はセカンダリードミナントもただドミナントを導くだけの存在として用いず、意味を持たせた和音として用いることが得意です。

 

Cメジャーのダイアトニックコードに対する慣習的に用いられるセカンダリードミナントコードは、

A7→Dm7

B7→ Em7

C7→ FM7

D7→ G7(ドッペルドミナント=ダブルドミナント)

E7→ Am7(Cメジャーの平行調AマイナーキーのV7)

などが主流です。

セカンダリードミナントの話。

 

Cマイナーキーであれば、

B♭7→E♭M7

C7→Fm7

D7→Gm7

E♭7→A♭M7

F7→B♭7

 

例;

:CM7  |C7  |F7  |Fm7  |E7 |Am7 |D7 |B♭7 :|

 

さらに、ポピュラーミュージックで良く用いられる進行感の「進行感」だけを連鎖して、音楽的脈絡を作ってしまいます。これが一番難度高いかも!!

 

たとえば、CM7-FM7という四度のメジャー7thや、CM7-BM7という半音下降や、CM7-E♭M7などの短三度の移動のような流れが作る「進行感」を用いるなら、

 

:CM7  |FM7  |B♭M7  |AM7  |DM7 |FM7 |B♭M7 |D♭M7 :|

という流れだけで、ジャズフュージョンのような展開が出来上がります。

これに対して機能が、調が、と考えていたらインスピレーションを失ってしまいます。

不定調性論は作曲している間は、作曲に集中できるように、着想を唯一の動機として音楽を作ることができる考え方です(理屈を考えない)。

だから、こうした和音が繋がった時の理由を、論理的に考える脳を排除し、繋がった時の自分の印象が、良いのか悪いのか、だけで作曲を進めることができます。

 

もう一つだけ例を。

Am7を皮切りに、機能論的な絡みを考えずに、へんてこコードなポップミュージックを五分で作れ、となったら皆さんはどうしますか?

一つ簡単な方法があります。

one note samba(ユーミンが敬愛する作曲家 A.Cジョビン作)の手法です。

たとえば、メロディ音をdにする。そして、

 

例;

:Am7(11)  |A♭7(♭5) |E♭M7 |D7 |GM7 |B♭M7 |Bm7 |FM7(9,13) :|

 

という和声進行。

メロディ一音にして、調的な連鎖でなくその音が協和する和音を並べて連鎖館の中に自分なりの脈絡を感じるようにすれば出来上がりです。

 

しかしこの進行もよく見ますと、

Am7→A♭7(♭5)やE♭M7→D7

はオーソドックスな半音下降進行ですし、

GM7→B♭M7

はレポートでも度々出てくる短三度移行の進行感です。

Bm7→FM7

におけるBm7はAメジャーキーのIIm7と「思えば」、音楽的脈絡を全体から感じ取れる人もいるでしょう。

また「あ、そういえば、ユーミン楽曲ではこんな時、まさかの増四度進行とかしていたな」と思い、参考にしたりしても良いです。最初は。

 

  

(続く)

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