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音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

アルバムの最後を飾る曲に向かって;ユーミンレポート57

2018.3.19⇨2020.5.3更新

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歌詞については掲載しておりませんので

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こちら等にて確認ください。 

 

Summer Junction

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サビ(アルバム収録タイム 1:25-)
B♭ B♭/D |E♭ C |F D |Gm C |
E♭/F |E♭M7(9) ~
この曲は、ビートルズの「A Day In The Life」やイーグルスの「Hotel California」等の四度移動のコードコンセプトを感じます。

明らかに「発明品」といえるようなコード展開。

調はB♭から流れて、メロディがモチーフを組み、和声に合わせて半音の経過音を持ちながら展開していきます。

この、
用例;
C |G |D |A |E |B |~
という流れによってメロディを紡ぐトレーニングをすることで、パターンにも応用できますのでトライしてみてください。


またこの手法が、同曲の次に収録されている『TWINS』でも用いられています。


TWINS

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Bメロ
Gm7 F |C G |Bb F |C G |
Gm7はほぼ=Bbですので、このセクションは、
Bb F |C G |
的な雰囲気の連鎖が二回連なっていると考えても良いです。


これはビートルズの「Help!」あたりから出てきた例の「ビートル進行」です。

サージェントペパーズの「A day in the life」などが挙げられます。

抽象的な意味の積み上がりをイメージするときなどに使えるコード進行です。

 

不定調性論では、オクターブレンジ2の音程を単位として和音を連鎖させる方法です。


Lundi

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こうしたエレクトロのなんともいえないオートマチックなサウンドが、「日常」のごちゃごちゃした感じに失恋した自分が「いつもの自分に追いつかなきゃ」って思わせられる印象と重なって凄いな、と感じました。

Em |B/D# |G/D |A/C# |
Am/C |G/B |F#/A# |Bsus4 |

これも使えるんじゃないでしょうか。
"落ちていく感じ"を落とすまいとするビートが心と日常の葛藤を再現しているよう。

 

"いかなくちゃ いかなくちゃ そろそろいかなくちゃ 私を待ってる私がいる"

のとこですが、
Em |Am7 |D7 |G |
CM7 |Bm/D |Em7 |% |
となっていますが、このBm/Dはコード部分よりもベースラインが活きていると思います。
つまり、CM7→Bm/D→Em7は、
CM7→D→Em7
の感覚で作られていると思います。こういうのはコードだけで音楽を作ろうとしているとうまく展開できません。結局コード学んで、作曲学んで、声部学んで、って教科書覚えなくても自分なりに捉えられないと曲を刷新し続ける、というのは難しいわけです。

早く気が付きましょう笑。その先に「楽」は待っていません。


もちろんこれはBm/D=D6ともできて、まったく違う雰囲気を持ってきます。以下の三つの雰囲気を聴き比べてください。
<パターン1>
Em |Am7 |D7 |G |
CM7 |D |Em7 |% |
<パターン2>
Em |Am7 |D7 |G |
CM7 |B7 |Em7 |% |
<パターン3>
Em |Am7 |D7 |G |
CM7 |D6 |Em7 |% |
唯一パターン2だけが「暗い解決感」を持っていると思います。


で、パターン1は失恋した翌日にしては、ちょっと力強過ぎで前向き過ぎ、パターン3はこれは後半トップノートをb音に設定すると、CM7(b)-D6(b)-Em7(b)で統一感が出て、「引きずられながらも前向きになる」というこの曲の趣旨にぴったりになります。
もうひとつパターン見てみましょう。
<パターン4>
Em |Am7 |D7 |G |
CM7 |Bm7 |Em7 |% |
これもいい感じですが「前向きさ」がないように感じませんか?
やはりベース音がC-D-Eと上がっていく高揚感を活用しない手はないと思います。 

 

テーブルランプ

 

 

 

So long long ago

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Aメロ(アルバム収録タイム 0:27-)
Cm7 E♭/F |G7sus4 Gm7 |E♭M7 Dm7 |Cm7 E♭/F |
Gm7 Dm7 |B♭7 E♭M7 |A♭M7 |
E♭M7 Dm7 Cm7 |
=degree=
(key=Gm)
IVm7 VI♭/VII♭ |I7sus4 Im7 |VI♭M7 Vm7 |IVm7 VI♭/VII♭ |
Im7 Vm7 |III♭7 VI♭M7 |II♭M7 |
VI♭M7 Vm7 IVm7 |
Gマイナー、II♭M7がリリースされる和音としてセクションの最後に登場します。

 

Cメジャーキーで考えれば、
通例、
CM7 Dm7 Em7 FM7 G7 Am7 Bm7(♭5)


というダイアトニックコードに対して、
CM7-D♭M7
Dm7-E♭M7
Em7-FM7
FM7-F#M7
G7-A♭M7
Am7-B♭M7
Bm7(♭5)-CM7


という変化で自分がグッとくる進行を使う、というのはどうでしょう。

また時にこれらのM7はm7、または7thコードになる場合もあります。

またこの逆の進行もできます。

 

 

PARTNERSHIP

open.spotify.comAメロは、
Bb F/A |Gm |EbM7 |F7sus4 |
Bb Bb/Ab |Gm |Cm7 Eb/F |
GM7 |Cm7 |D7 |
BbからGへという平行長調への転調が起きます。広がります。そのあと一瞬翳りのコードが入ってまた戻ります。日本人には季節感のようなものを感じさせます。

最後の曲にふさわしい。

この頃から、「これが最後のアルバムかも」って思っていたようなクオリアも伝わってきます。そういう曲が配置されているからです。

少しずつ作られる楽曲が、人生のストーリーのゴールに向かって進んでいくような作りになってきて、なかなか感慨深い思いにさせられる作品群が続きます。

考え過ぎかもしれませんが、すごい覚悟を感じるんです。こういう感覚を感じられたアルバム文化、ってやっぱりポピュラー音楽の全盛期だったと思います。

そしてまたこれからの音楽文化のヒントにもなろうかと思います。

 

サビ、
EbM7 |EbM7(b5) EbM7 |Dm7(11) Dm7 |Dm7(9) Dm7 |
Cm7(11) Cm7 |BM7 |BbM7~
という回遊コードがコードの陰りを演出しています。


そしてDm7は今度はVm7やIIIm7の印象があります。そこで本来はVm7やIIIm7はフリジアンなので、9thはないはずなのですが、ここではそれを使って「不可思議感」を出しています。これはわざと出さないと出ません。
「違和感に気が付いたけど、ここでは合うなぁ」
という印象を作曲時に持てるかどうかです。

 

そこで使われたBM7は続くトニック BbM7のIIbM7です。
これがドミナントの変わりになって、着物の女性がふわりと腰掛けるがごとくのケーデンスを作り出しています。

 

歌詞の印象を上品に包み込む、重厚なサビだと思いませんか?

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