2018.1.25⇨2020.1.20更新
ビートルズの不定調性コード進行研究
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ほぼ全曲ビートルズのコード進行不定調性考察「With The Beatles」2
ドント・バザー・ミー - Don't Bother Me
V7が出てこない曲です。
Bm |Am |G7 |Em |
Bm |Am |G |G |
Em |A7 |Em |Em |
最初の部分でのポイントはG7です。
ここは本来ですと、IのGになるのですが、ギターラインがちらっとb7thを弾いていて、Gの調性感をゆがめています。それがまたカッコいいです。
ちょうどIIIm-IIm-Iと降りて来ているのに、まったくメジャーキーの感じがないところが面白いです。
またさりげなくA7が入ってEm→A7がドリアンのI-IVの進行的になっているのがまた調の希薄さに拍車をかけています。
また展開部も、
D |D |Em |Em |
D |D |Em |Em |
Bm |Bm |Am |Am |
C |C |Em |Em |
とドミナント出てくる気配無し。
これは意図したのでしょうか?
まさにモード楽曲のようです。エオリアンモードの曲ですね。
弱いコード感の連鎖によりできている不思議な曲です。
先のA7が強烈に「飛んだ感」を出しており、これがV7のように聴こえてくるから不思議です。
IV7なのにV7感を出しているA7の感じが、不定調性的な制作方法の面白さですね。
ちょっと例を出してみましょう。
例;
|:CM7 | % |Em7 |% |
Dm7 |% |Em7 |% |
FM7 |% |Em7 |% |
Dm7 |% |Eb7 |% :|
このEb7はドミナントでもなんでもないコードですが、それまでの感じがいかにもCメジャーの中で停滞しているため、急に出てくるEb7がドミナントコードのように響きます(Dm7の裏コード感も混じっていると思います)。
不定調性論が使うのも、厳密な机上の分析だけではなく、耳が感じる、個人の経験からくる感覚を重視します。結果個人の価値観がより濃く出てきますので、それにより「人と人は違う」ことを理解し、理解し合えるように調整し、一緒にやるからこそ、さらに良いものを作る意気込みにつなげていただきたいです。
相手が間違ってるのではなく、相手は相手です。互いが危害になるのは、互いの違いを理解しようとしない時です。それでも人の不和はなくなることはないと思いますが、互いの違いを受け入れる勇気を人が持てれば、いくつかの衝突は回避できると信じています。
|:CM7 | % |E7 |% |
Dm7(b5) |% |Em7 |% |
FM7 |% |E7 |% |
Dm7(b5) |% |Eb7 |% :|
としてしまったらEb7の効果は薄まってしまいます。
コード進行って難しい!
ホールド・ミー・タイト - Hold Me Tight
この曲は「Hold Me Tight」進行として、
I-IV-II-V
を提起します。
Aメロの部分ですね。
Cメジャーキーなら、
C |F |D |G |
です。
メジャーコードの四度進行を全音でつなげただけ。本来DmになるところをDにした進行です。
これを機能和声的にアナライズしようとすると、Dはドッペルドミナントである、という解釈になります。ではそれが「Hold me tight」という曲で使われる理由になっていますでしょうか?
おそらくなっていないのです。少なくとも私はそう感じました。
不定調性論ではこの
F⇨D⇨G
と流れる時の「コード進行感」を理解できるようにトレーニングします。
Dに進むと、「ニヤっと明るくなったような感じ」「スコーンと抜けた感じ」などを私は感じます。C⇨Fときて次にDmを置くと「でもちょっと」とか「いじらしい感じ」という印象を受けます。
この曲を、先に歌詞があって、メロディとコードから作る時、
「抱いてくれ!オンリーワンだって言ってくれよ!」
とこちらが訴えるような歌の場合、どっちが訴求感あるか、といえばDです。
また先にメロディができて、このメロディに歌詞を乗せる時、Dコードであれば、どんな歌詞が乗るか、Dmならどんな歌詞が乗るか、をちゃんと分けて考えられ、違いを認識できることで、「今自分が作ろうとしている曲の方向性」が見えてくると思います。
つまりDがドッペルドミナントである、ということは机上の理解であって、まあそれが分析学なのですが、それを作曲や演奏の時にイメージングして弾くことはありません。それよりも歌う歌詞に沿った感情が湧いて、思いっきり歌でも訴えられるパフォーマンスができるコードを選べるかどうかのスキルがあるほうが利便性が高い、と感じ、拙論はそのコードの意義を各位が理解できているかどうかに重点を置くわけです。
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この曲の後半では、
I→IIIbの交換進行も出てきます。
C△→Eb△もまたメジャーコードによる不定調性和声連鎖とすることができます。
彼氏になりたい - I Wanna Be Your Man
この作品は、今度は、
I-II-V-VI
が用いられています。サビの部分ですね。これも先の曲と同等の考え方でアプローチすると良いです。
またこの曲、それぞれのコードの最後に伸ばす音があって、これがVIIb/Iとなっています。
「開けた感」のある「鮮やかでまぶしいコード」だと思います。分数コードを活用しましょう。
例;
⑴ C△ |C△/Bb |Am7 |Am/G# |
⑵ C△ |C△/Bb |Dm7 |Dm7/B |
⑶ C△ |Bb△/C |F△ |F△/G |
⑷ C△ |Bb△/C |F△ |Eb△/F |
などなど、いかがでしょうか??