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ようやくディズニープラスで拝見できました。
元々の映画はちゃんと見ていないんです。解散に向けた映画なんて..つらいなぁ、と思ったので。HELPが好きです。リンゴが最高です。
今回はもっと「真実を掘り起こした」映像ということもあり楽しむことができました。ビートルズと過ごす一週間みたいな気分になります。
マニアからしたら色々とインフォメーションが見つかるのでしょうが、ここでは自分が改めて感じたいくつかのことを書いてみます。
映画自体は、ビートルズの音楽がなんとなく好き、というだけの人には逆に(いきなりすぎて)薦めません。
音楽スタジオ好きの人、平成以降に生まれてDTMやレコーディングをしている人、バンドマン、作編曲やってるひと、当時の洋楽の制作の一端を知りたい人、音楽理論知らない人、楽譜読まない人、そしてビートルズに人生を狂わされた人が見るべき映画だと感じました。
<楽譜を使わないセッション風景>
当たり前ですが、彼らは口頭で曲を仕上げます、歌詞にもコードなど振ってありません。目を見合って、覚えている感覚で弾いてゆきます。
だから当然構成やニュアンスなどで喧嘩になります。
楽譜使わないんですからあたり前です笑。
終始ラリっている感じがそれに拍車をかけて物事が前に進みません。
ポールの精神力の凄さ、というか、あれはもう才能笑。こんなに我慢強く、音楽に取り組んで、名曲作っちゃう人っているんだ...。
目の前に譜面台がないのでメンバーを見合いながら直で音を吐き出して曲を作っていきます。アレンジは纏まりませんから当然毎回違うし、後日はまた変わります。
日本人から見たら奇異に映るでしょうが、日本人の作品が洋楽作品みたいにならないヒントや伝統がこの方法論に詰まっていると思います。これを才能の差、とは言いたくないでしょうが。
ずっと昔、とあるコンピレーションで私が「Yellow Submarine」のアレンジを担当して、T.M.スティーブンスに歌ってもらった時も同様だったことを思い出しました。何も決めずにスタジオに来て楽譜も音も聞かず、ブースに入り、どんどん指示していきながら曲ができてしまいます。
最終的に私が作ったオケデータが役に立ったので良かったですが。
基本的に音楽をとらえる視点や感覚、完成に向けたやり方、が違うのだな、と感じました。驚いて問いただしたら、マイルスもこうだったぜ、と言っていました(恐縮)。
<音楽はその瞬間だけのもの>
これも当たり前なんですけど改めて感じました。
もちろん現代はサブスクで聴き直せるけど、その瞬間そこの空気の中で生まれたものは本人達しかわかりません。だから一見つまらない曲だな、って思った曲でも彼らが語って、彼らの聞き方でその曲を聞いたら今回全く違って聞こえました。
自分はビートルズの何もわかっていなかったんだな、と改めて感じました。
<リンゴのドラムトーン>
気がつけばあのリンゴのドラムの音、癖、全部好きだったわ。
普段、アレンジしながら、このスネアの音、いつも頭の片隅にあったことに今更気が付きました。
タイトさ、パンチ、ルーズさ、何よりもあの太い音。
このGet Back観るまで、自分がこんなにリンゴの音大好きだとは思ってもみませんでした。
泣いた。
<答えがわかるとしっくりくること>
ミックスを聴きながら、その完成形に対してメンバーがいいます。
「あんな苦しんだ曲とは思えない」
そういうことってよくあります。
出来上がってみると...わかってみると...そこに気がついちゃえば簡単な話。
この映画自体が"自社ビル屋上セッション"という、今では誰もが知るゴールが、映画後半まで誰も見えないまま、不安の中で戦う姿が描かれています。
わかってみればこんなにしっくりくるゴールはないのに。
人生そんなことばかりですよね。
<"ポリシーンパン"でジョンがコード付けを迷う>
というシーンがpart2にあります。
コードを弾きながら決めていく雰囲気がわかる貴重なジョン・レノンの作曲シーンです。
ジョージも促したりしています。なるほど、コード譜なんて書かないから、自然と弾きやすい、理解しやすい、クオリアが沸きやすいコードに指が流れ、「ビートルコード」に落ち着いていったんだろうな、という当ブログのスタンスの確信を得られると思います。
終始ジョンの目はイッちゃっていますし笑、複雑なことができそうにない状態。
ジョンのコーラスラインを決めるところも、歌いやすさで決めている感じ。コードトーンとか関係ない笑
ただジョンがハモリの感覚に優れていた、で終わる話です笑。
ポールとジョンが生きて一緒に音楽を作るシーンを90年代とか00年代にも観たかった、そんな思いになります。
<ポールの愚痴>
"君ら三人は座って”(ポールが)また言ってる”って感じ"
"誰も味方してくれない もううんざりだよ"
ショーまで12日で曲が全然足りていない状況でポールがグチります。
ポールは責任感があって、一歩前にゆき、状況を把握しようとします。当時は27歳。
ジョージは弾きながら何をやるか、まとめるタイプのようで、ポールは、それでは何度やってもいつまで経ってもまとまらない、と感じています。バンドあるある。。
音楽性的決断はポールが早いのでジョージがまとまるまでは待ちきれません。
この進め方についてはポールが妥協しないと進まないな、と感じます。
どこのバンドでも起こりえます。
音楽的なクオリアが刺激されるポイントがそれぞれ違うからです。
<ジョージの一言>
「ピアノはすごい こういうのはギターじゃできない」
専門学校の1年生がいう言葉です。
ジョージがOld Brown Shoeをピアノで弾き語るシーンで言います。
ほんと、それな発言です。微笑ましいと同時に、そのぐらいの世界観であのビートルズを牽引してきた彼らのプレッシャー、想像できません。
バンド内でもジョージは一番コードに詳しい人だと思います。
それでもE△+C△のコード名は?何?と呟くシーンもあります。
当時はそこまでコードが分からなくてもロックは作れました。
その中であそこまでの革新的活動をできたビートルズなんなんだ。
<Get Back誕生>
タイトル曲「Get Back」はジョンが遅刻して待っている間、ポールがその焦りから、ベースでギターのようにコード?を刻みながら無心に作っています。これまた超貴重な作曲シーンです。
当サイトで「進行感作曲法」と言っていますが、彼は1コードを探りながらメロディの概略から作っていました。"メロさえできれば...."、と云うポールの音楽性が感じられます。コードではなく、メロディがいかにキャッチーな輪郭を持っているかが大事、と云う感覚が見て取れます。
概略が固まってそれを歌っていると、ジョージが「それは音楽的に最高だ」と言います。それに反応するようにポールにエンジンがかかります。
褒めるって大事です。
そこからポールに神が降りたようにGet Back!と歌い出します。タイトルコール曲になります。これもバンドあるある。
メンバー間はどこまでも対立ライバルですから、相手を褒めることが少ないです。だからこそ互いに確信を持てた時一気に作業は高まります。。ほんとあるあるだらけの映画でした。
ジョージが褒めたからポールが、とっさに安易になり、勢いでタイトルコール!!と云うあのサビと複雑なAメロのバランスが生まれたのかな、とも感じました。褒めてもらうとアイディアに勢いがつくんです。あの瞬間ジョージが褒めてなかったら「get back!」なんてタイトルコールサビは出なかったかも。
…あ、そんなことないか笑
だってポール・マッカートニーだもんな。
20世紀を代表するメロディメーカー。
そのあとまた、さっき作ったAメロを繰り返せるあたりが当時の人たちたる所以です。短期記憶能力の高さ。
色々やってると、さっき作ったメロディとか忘れてしまうものです。彼らの集中力や、日々積み重ねられてきた、タイトなスケジュールの中で生まれた能力を感じさせるワンシーンです。
別のインタビューでポールは、覚えているメロディーはいいメロディー、と考えているらしいことも小耳に挟みました。
<出した音がビートルズになる>
とにかくちょっとしたセッションや音合わせが「ちゃんとビートルズになっている」わけです。
しかしハッと気がつきました。
ちがう、それは僕らの中のビートルズ象が偶像になってしまったんだ、と。
あのサウンドは下手でも、不味くもなく、ただ、ビートルコードなんだ、と。
だから知らない人はビートルズを嫌いになれるわけです。
僕らにはビートルズが音楽世界の全てだった時期があるから、それを否定することすらできない"宗教"になっているんだ、と気がつきました。
信者だから、こんなに推せるんだ。
だからそこにポールとジョンが立っている、ってだけで奇跡的な絵と感じます。
まさに教祖を見る目か笑
ドキュメンタリー長くて中だるみとか一切感じません笑
一般に置き換えるなら...美空ひばりとマイケル・ジャクソンが二人でスタジオで向き合って曲作っているシーンがあったら感動するでしょ?
あの画は、きっと皆さんの毎日もずっと先にはきっと誰かの伝説や奇跡になるんだ、っておもわせてくれる力強さがあります。
<マッカートニー321>
ついでにディズニー+に素敵なドキュメンタリーがあったので一緒に観てみました。
余計な映像も演出もなく、ただポール・マッカートニーとリック・ルービンがレコーディング卓の前でビートルズのマスタートラックをいじりながら、楽曲について、音楽について、ビートルズ解散後のポールの活動について、心境について静かに対話しています。全編静かな哀愁を帯びています。
ポールがビートルズの経験を自分の過去として思い出しながら語ります。
まるでナポレオンがその場にいて自分の過去の栄光を語ってるようです。
聴きながら泣けてしまうのは、やはり自分はいまだにビートルズに狂信的で、ただただファンなんだ、と思い知ります。
そうか、自分は彼らに洗脳された人生だったんだ、と。
<凝り性ポール>
ポールがやたら音楽表現に凝りまくって「だったらじぶんでやれ」とメンバーから言われたり、凝りすぎて会社から怒られたりしたのだとか。
自分もすごく音楽表現に凝ってしまうタイプなので、そうか自分がポールの音楽が好きなのは、彼も凝り性だからだ、と気がつきました。
変に安心しました。ありがとうポール。
<ある言葉>
第5話で、ルービンが誰かの言ったビートルズ解散後のポールについての文章を読み上げます。
"ポールは屈指の革新的なベーシスト
現状の半分はビートルズ時代からの盗用だ
自分のベースは語らないが
偉大なミュージシャンだ"
ルービンはすかさず、これを言ったのはジョン・レノンだ、と言い放ちます。
ポールは"ジョンが?そうかまったく。ジョニーめ!"と笑います。そしてすぐに、
"美しいね、初めて聞いたよ"と呟きます。
泣けた。
ジョンらしい、褒めているのか貶してるのかよくわからないけど絞り出したような素直な愛を感じます。日本の俳句を見て泣いた男です。ジョン・レノン。
この誰でも云えそうな陳腐な表現。
でもやっぱりジョン・レノンが云ったと聞くと確かに美しく感じます。
ある意味ではポールもジョンに洗脳されているのでしょう。
もちろん私もそれがジョンの言葉だとわかると詩のように聞こえます笑。
<余韻>
ポールは「ビートルズはそれなりに世の中に良い影響を与えたと思う」と述べます。
まったくもってその通りだと思います。でもそれは一方で僕ら全員がビートルズに支配されていたからそう感じるのかもしれません。そのくらい心に入り込んでいます。心の容量が100%あるとしたら45%ぐらいはビートルズ、みたいな。
あらためて我々ビートルズ好きが言う「ビートルズは素晴らしい」は宗教の勧誘と同じだから話半分に聞いておけ、と言わせてもらいます笑。
同時に若い方には、そのくらい確信を持って信頼できる、良いと思えるパートナー、アーティスト、趣味、人生に出逢って欲しいな、と感じます。
そうか、みんなには既に推しがたくさんいましたね。大丈夫だ。
推しがいると人生が半分無条件に楽しくなります。
だって、ただの石ころであったとしても好きな人が持つだけで、それを美しい、と感じて魅了されて一日が終えられるのですから。
メモを取りながら6話一気に観ました。
推し活でした。
その他、ドキュメントの内容から分かったことは下記のビートルズ楽曲記事にまぶしています。収穫がたくさんありました。