2018.2.19→2020.2.18更新
ユーミンの不定調性コード進行研究
ユーミン歌詞・コード考7 / アルバム「COBALT HOUR」1
アルバム目次はこちら。
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歌詞については掲載しておりませんので
https://www.uta-net.com/artist/2750/
こちら等にて確認ください。
COBALT HOUR
Aメロ(アルバム収録楽曲タイム0:30~)
C# |C#m7 |F# |B |
Bm7 |E7 |A |A7 |
D |Dm7 |G7 |C |
Cm7 |F7 |B♭ |B♭7 |
Bメロ
E♭M7 |Dm7 |D♭7 |Cm7 |
A♭M7 |Gm7 |Fm7 |Fm7/B♭ |
E♭M7 |Dm7 |D♭7 |Cm7 |
A♭M7 |Gm7 |Fm7 Fm7/B♭ |E♭M7 |
Aメロは同型進行の連続手法。
このような進行を作っていく場合は、一番最初のコードをI(センターコード)と意識して展開していきます。例えて言うなら「和音の意味のしりとり」です。
ジャズのII-Vを紡ぐことで「どこかで聞いたことあるような」和声の既視感を巧みに使って連続させていきます。
C#→C#m7やB→Bm7や、A→A7、B♭→B♭7というのはジャズ的な変化ですね。
これをここまでがっつりポップスに持ってくる、ところが斬新!
繰り返しますが、ポイントは、
「どこかで聞いたことあるな?」って言う進行をアラベスクのようにつなげていきます。
この曲の歌詞、
「夜の都会を さあ飛び越えて 1960年へ バックミラーに吸い込まれてく ちりばめられた 光の中へ」
という歌詞の「夜の都会」「飛び越えて」「吸い込まれてく」「ちりばめられた」という印象はまさにこの進行における「展開感」を言い表しているように私は感じます。
C# |
C#m7 |F# |B | (BへのII-V-I)
Bm7 |E7 |A(AへのII-V-I)
|A7 | D |
Dm7 |G7 |C | (CへのII-V-I)
Cm7 |F7 |B♭(BbへのII-V-I)
|B♭7 |(Ebへのドミナント)
またBメロはE♭M7を出発点として、半音下降しながらA♭M7への経過点を経てE♭メジャーキーに帰結させています。これも出来てしまえば分かるのですが、実際作ってみようとずると、自分がどこに行こうとしているのかわからなくなる場合が最初あります。
この手の曲は「コード進行を知り尽くしていないとダメ」です笑
当てずっぽうでは作れません。
ユーミン氏は、そういう学習はしていない、と頑なに仰るのですが、相応のコピー、練習はした上での卓越したセンス、と思いたいです。
卒業写真
open.spotify.com
Aメロ(アルバム収録楽曲タイム0:13~)
F G/F |CM7 |Am7 D7 |G7 |
Dm7 G7 |Am7 |Dm7 G7 |CM7 ~
=degree=
(key=C)
IV V/IV |IM7 |VIm7 II7 |V7 |
IIm7 V7 |VIm7 |IIm7 V7 |IM7 ~
これは下記のように四つのケーデンスが用いられています。
F G/F |CM7 |→分数コードを用いたケーデンス
Am7 D7 |G7 |→II7を用いたケーデンス
Dm7 G7 |Am7 |→VIm7に解決する偽終止
Dm7 G7 |CM7 ~→通常のII-V-I(正格連終止)
これは、
F G |C |Am D |G7 |
F G |Am7 |F G |C ~
と代理コードを元に戻すこともできます。
でもこれではシンプル過ぎて、ユーミンチームのパステルカラーにはほど遠いと感じます。
こうした微妙な色彩感の差異は、実際に感じていないと作れません。
やがて自分なりにつかめる日が来ます。
花紀行
"春の投げる口づけ"
に「祝福」を感じます。より魔術的な感じしますね。
ユーミンは魔術好き。
"この場所で嵐見送れば 時の流れに 埋ずもれてしまう"
こういう表現て、まさに言語を超えた表現だと思いませんか?
春の麗しさに心奪われて、自分の人生で憂うべきことを忘れ去ろうとしている、なんて。
よくあることです。
"唇が一度の口づけで道に落ち、はかなく一瞬で命を終えるように道に積もる"
優しく散っていく花びらが「あなたはまだまだこの先生きていられてステキよ」なんて云って去っていくようです。
この曲、細かくコードが変わるユーミン得意な展開を持つ曲で随筆のような表情を持っています。
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