音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

こういうのが、"天才のサインだ"~ユーミン歌詞・コード考15★★★

ユーミンの不定調性コード進行研究

ユーミン歌詞・コード考13 / アルバム「紅雀」2

 

各種レポートはM-Bankにお問い合わせいただければPDFにて無償で配布しております。宜しくお願い致します(日本音楽理論研究会にて発表も行いました)。

歌詞については掲載しておりませんので

www.uta-net.com

こちら等にて確認ください。

 

4,地中海の感傷

 

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 (ユーミンレポートより)

Aメロ(アルバム収録楽曲タイム0:33~)
Gm7 Gm7/F |C/E E♭M7 |Gm7 A♭M7 |Am7(♭5,11) E7(♭9) |
Gm7 Gm7/F |C/E E♭M7 |Cm7 Dm7 |Gm7 |
=degree=
(key=Am)
im7 Im7/VII♭ |IV/VI VI♭M7 |IVm7 II♭M7 |IIm7(♭5,11) V7(♭9) |
Im7 Im7/VII♭ |IV/VI VI♭M7 |IVm7 Vm7 |Im7 |

特徴的なのはこの冒頭の全音下降を含むラインクリシェである。また三小節目にはII♭M7も表情豊かに用いられている。メロディがA♭M7では13thに該当する音が使われている。


こうした技法は、二拍でコードを変化させるリズムが作られているとき、必要に応じてコード進行にリズムが作られるよう用いる慣習的な用法であるが、これを全編に活用することにおいて本来コードを変えなくても良い場所にもコードをおくことになり、それが響きの変化、色彩感のグラデーションを作る、という意味においては作曲上のアイデアとして有用であろう。


またここで和声の回遊的使用という方法を述べておこう。

 

本来このII♭M7はメロディに必要がないが、これがおかれることで、流れにリズムができるし、地中海の澄んで淋しげな青を確かにイメージさせる和声である。この小節はGm7で支配されているが、それが一旦離脱するようにA♭M7に移行する。

 

そしてまたダイアトニックコードに戻るような動きのするコードを「回遊コード」という。使用されるメロディに依存する場合があるが、作曲で変化をつける一つの方法である。


用例;
CM7 D♭M7 |CM7 BM7 |CM7~

 

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5,紅雀
(ユーミンレポートより)

Bメロ(アルバム収録楽曲タイム0:53~)
A♭/B♭ |A♭/B♭ |Am7 |Am7 |
E♭/F |E♭/F |Am7 D7 |G7 |
=degree=
(key=C)
VI♭/VII♭ |VI♭/VII♭ |VIm7 |VIm7 |
III♭/IV |III♭/IV |VIm7 II7 |V7 |

 

基本はCメジャーキーで展開していくが、同主短調に該当する、III♭音、VI♭音、VII♭音を用いた和音が涼やかに響く。

 

こうした進行で「その分数コードがどんな印象を持って響くのか」を作曲者が真につかむまでは抽象的な楽曲しか構成し得ないであろう。


6,罪と罰


当時、結婚したてのユーミンが書いたとは思えない歌です。

 

デビューアルバムの死生観にしても、結婚後すぐの不倫の歌にしても、なかなかリンクしないと思うのです。

 

逆を言えば、満たされていることを無視する、というか、反対方向に視点が向く、というか、とにかくアンテナ構造が特殊にできているように感じました。


つまりそのアンテナを持って、この歌詞世界あり、と思えば、何となく納得です。

 

こういうのが、"天才のサインだ"、なんて我ら凡人の教室の先生でもなんとなく察知できるんです。

若い人でもたくさんいます。

でも多くが無視されています。

 

雨の日には、晴れの日を思い、
うれしい日には、悲しいことに視点が向き、
悲しい日には、うれしいことが頭に浮かぶ。
生を感じると、死がポンと顔を出し、
不幸をみれば、その先の小さな未来が見える。

 

そういう視点で、ユーミンの歌ができているのだとしたら、いろいろ読み方も面白くなるなぁと感じます。これを「反動的指向」とかって呼んで、これから先のユーミンの歌詞とコードを読み解いてみたいと思います。

 

紅雀 

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