音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

こういうのが、天才のサインだ?~ユーミン歌詞・コード考15★★★

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歌詞については掲載しておりませんので

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こちら等にて確認ください。

アルバム5;『紅雀』(1978)その2 

4,地中海の感傷

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 (ユーミンレポートより)

Aメロ(アルバム収録楽曲タイム0:33~)
Gm7 Gm7/F |C/E E♭M7 |Gm7 A♭M7 |Am7(♭5,11) E7(♭9) |
Gm7 Gm7/F |C/E E♭M7 |Cm7 Dm7 |Gm7 |
=degree=
(key=Am)
im7 Im7/VII♭ |IV/VI VI♭M7 |IVm7 II♭M7 |IIm7(♭5,11) V7(♭9) |
Im7 Im7/VII♭ |IV/VI VI♭M7 |IVm7 Vm7 |Im7 |

特徴的なのはこの冒頭の全音下降を含むラインクリシェである。また三小節目にはII♭M7も表情豊かに用いられている。

メロディがA♭M7では13thに該当する音が使われている。


二拍でコードを変化させるリズムが作られていると決めると、本来コードを変えなくても良い場所にもコードをおくことになり、それが逆に響きの変化、色彩感の微細なグラデーションを作る、という意味においては作曲上のアイデアとして有用であろう。

メロディにただコードを乗せていくだけではマンネリ化してしまうが、リズムやパターン、シークエンスを優先してコード付けすると自然と変化を付けられる。

ボサノバ風でもあり、リズムと揺れるコードがすなわち揺れるハートの状況を映し出しているような雰囲気を醸し出している。私の世代では大野雄二氏の作品の気風を感じた。


また、ここで和声の回遊的使用という方法を述べておこう。

本来このII♭M7はメロディに必要がないが、これがおかれることで、流れにリズムができるし、心情を映した地中海の澄んで淋しげな青を確かにイメージさせる和音ともいえる。この小節はGm7で支配されているが、それが一旦離脱するようにA♭M7に移行する。 

そしてまたダイアトニックコードに戻るような動きのするコードを「回遊コード」という。使用されるメロディに依存する場合があるが、作曲で変化をつける一つの方法である。


用例;
CM7 D♭M7 |CM7 BM7 |CM7~

ここではDbM7やBM7はメロディとは関係なかったりする。ちょっと本筋から外れることで、そぞろ歩きのような雰囲気や、揺れ動く心情的な雰囲気を作ることが出来る。これも音楽理論的には「無駄の連鎖」であるが、そぞろ歩きの素晴らしさは、無目的に目に映るものを感じることで得る癒しにあるのではないか。

 

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5,紅雀

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(ユーミンレポートより)

Bメロ(アルバム収録楽曲タイム0:53~)
A♭/B♭ |A♭/B♭ |Am7 |Am7 |
E♭/F |E♭/F |Am7 D7 |G7 |
=degree=
(key=C)
VI♭/VII♭ |VI♭/VII♭ |VIm7 |VIm7 |
III♭/IV |III♭/IV |VIm7 II7 |V7 |

基本はCメジャーキーで展開していくが、同主短調に該当する、III♭音、VI♭音、VII♭音を用いた和音が涼やかに響く。

こうした進行で「その分数コードがどんな印象を持って響くのか」を作曲者が真につかむまでは抽象的な楽曲しか構成し得ないであろう。


6,罪と罰

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当時、結婚したてのユーミンが書いたとは思えない歌です。

デビューアルバムの死生観にしても、結婚後すぐの不倫の歌にしても、なかなかリンクしないと思うのです。

逆を言えば、満たされていることを無視する、というか、反対方向に視点が向く、というか、とにかく脳内のアンテナ構造が特殊にできているように感じました。

考えてみてください。現代のアイドルが結婚した後、退廃的な曲ばかり歌ったら、ちょっと心配します。でもユーミンのこのアルバムは不思議と安定しています。

声の幸福感というか、圧倒的自信というか、迷いを楽しむポジティブさ、というか。

そういうものを感じるからかもしれません。あとラテンという音楽の印象かもね。


つまりそのアンテナを持って、この歌詞世界あり、と思えば、何となく納得です。

 

こういう作品を持ってくる若い子がいたら、"天才のサインだ"、って我ら凡人の教室の先生でもなんとなく察知できます。

中身ではなく、その本人から全くイメージできないものが出てきたときなどです。 

でも多くが無視されがちです。他人は理解できないから、「この程度なら普通かな?」とかって周りの大人が思ってしまうからだと思います。それを観察する仕事が私塾の講師の仕事ではないでしょうか。

外の世界の事より内の世界を優先してアウトプットできる人、を良く観察しましょう。

 

雨の日には、晴れの日を思い、
うれしい日には、悲しいことに視点が向き、
悲しい日には、うれしいことが頭に浮かぶ。
生を感じると、死がポンと顔を出し、
不幸をみれば、その先の小さな未来が見える。

 

そういう視点で、ユーミンの歌もできているのだとしたら、いろいろ読み方も面白くなるなぁと感じます。これを「反動的指向」とかって呼んで、これから先のユーミンの歌詞とコードを読み解いてみたいと思います。

 

紅雀 

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