音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

弱進行のパステルカラー~ユーミン歌詞・コード考41★★★

ユーミンの不定調性コード進行研究

ユーミン歌詞・コード考 / アルバム「ALARM a la mode」2

 

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歌詞については掲載しておりませんので

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こちら等にて確認ください。

3,土曜日は大キライ

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エルトン・ジョンの「Saturday night alright」は1973年でしたか。
あの歌は、土曜日は最高!と歌ったものでしたね。

==

(ユーミンレポートより)
Aメロ~(アルバム収録タイム 0:19-)
B♭M7 |B♭M7 |B♭m7/E♭ |B♭m7/E♭ |
A♭M7 |Gm7 |Cm7 |Cm7/F |
Bメロ
Cm7 |Fm7 |Cm7 |Fm7 |
Dm7(♭5) |Dm7(♭5) |D♭/E♭ |D♭/E♭ |
サビ
Fm7 |B♭ |D♭/E♭ |A♭ |
Fm7 |B♭ |D♭/E♭ |D♭/E♭ |


A三小節目のB♭m7/E♭はB♭mのキーとも取れるし、続くA♭M7へのIIm7/Vとも取れる。またCm7-Fm7のラインは、A♭メジャーキーのIII-VIとも取れるし、CmのI-IVとも取れる。

 

これは調を考えるというより、響きを連鎖させることで音楽的脈絡が作れるかどうかで考えると良いだろう。


Dm7(♭5)-D♭/E♭の弱進行のパステルカラーはまさにユーミンサウンドそのもの。

 

この進行はA♭メジャーキーのVImからII△であるB♭を経由していく。ビートルズ的響きを持っているが、マイナーコードや分数コードがそれを阻んでいる。これを、
F |B♭ |D♭ |A♭ |
とするとビートルズである。

この色合いのしっかりした感じは、あまりユーミンサウンドではない、ということに気が付く。そうすると、ユーミンサウンドとは、やはり選択するコードの色合いがそうした色調を持っているのだろう。

D♭/E♭→Fm7という移動も、VI♭/VII♭→Imという解釈もできる、ユーミン得意の移動であるが、そういう手癖感を一切感じない流れは創意工夫の意図を感じる。

このように調ではなく、和音から和音へと移動する流れに感じる脈絡をいかに深く感じられるかで、「ふつうそっちにはいかない」方向にコードを持っていき、メロディを構成することができる。そのテクニックが網羅されたこの時期のユーミン作曲技法の集大成のような曲である。

 

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事例68;ホライズンを追いかけて〜L'aventure au desert

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Aメロ(アルバム収録タイム 0:20-)

Gm7 |C7 |FM7 |Dm7 |

Gm7 |A7 |Dm7 |Dm7 Em7 Dm7 |

Gm7 |C7 |FM7 |Dm7 |

Gm7 |Am7 |Bm7 |C C#dim7 |

Dm7 |Dm7/C |G/B |B♭/C |C |

=degree=

(key=Dm)

IVm7 |VII♭7 |III♭M7 |Im7 |

IVm7 |V7 |Im7 |Im7 IIm7 Im7/III♭ |

IVm7 |VII♭7 |III♭M7 |Im7 |

IVm7 |Vm7 |VIm7 |VII♭ VIIdim7 |

Im7 |Im7/VII♭ |IV/VI |VI♭/VII♭ |VII♭ |

見た目は非常にGm色が強いが、Dマイナー/Fメジャーのキーで展開される。注目すべきは、四段目、

Gm7-Am7-Bm7-C

である。Gm7はIVm7、Am7はVm7であるが、Bm7はDメジャーキーのVIm7である。そして得意のVII♭であるCに流れる。

この辺りは、VIm7-VII♭7のサウンドに脈絡を感じることのできるユーミンらしいコード展開である。

Bm7に流れる時点で本来は脈絡が無くなってしまいそうだが、しっかりVIIm7のようなリディアンの響きを感じ取り、かつサビに向かった流れを作っている。

これは「変わっている」のではない。VIIm7のサウンド感を「知っている」のである。つまりkey=Cのとき、

CM7 |Bm7  E7 |Am7 |

というビートルズの『yesterday』のBm7のようなドリアン感、リディアン感(または同主短調の交換感覚)の印象に音楽的意味を感じられるかどうか、という意識のさらなる発展である。もしユーミンの中にこの三つ全音で続くm7コードの慣習が普段からあれば、使い所を探っていたはずである。

ぜひ同曲を参考に「三つ続くm7」を活用されたい。また他の曲でもこうした部分を探してみるとよいだろう。またスティービー・ワンダーなども三つ連続するm7コードなどを用いている。「くぐもったファンキー」と呼んでいたが、ここでは完全にユーミンサウンドの中に溶け込んでいるから、決してまねではないと私も感じる。

   

事例69;20minutes

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Aメロ(アルバム収録タイム 0:18-)

D  |C/D |F/D |C/D |

D  |C/D |F/D |C/D |

Bメロ

D  |E/D  |C#m7 |C7 D/C |

Bm7 |B♭ C/B♭ |〜

Cメロ(1:35-)

Gm  Am |C  |Gm  Am |C  |×3

この曲も実験的な曲である。分数コードによる展開生成コンセプトとでも言えばよいだろうか。Aメロはd音を固定しての展開、Bメロはベースラインが下降しての展開を作っている。歌詞は恋人と待ち合わせをして20分待たされているという歌だ。ビートルズにも同じような曲でジョージ・ハリソンが約束に待ちぼうけを食わされているblue jay wayという奇妙な曲がある。こうしたシチュエーションは混乱と、いらだちと、疲れ果てる感じをやはり表現するのだろうか。

曲調はまるで違うが、停滞するベースライン、下降してしまうベースライン、またF/Dというようなぶつかるサウンドが、

疲労感、待たされてる感、げんなり感、ぴりぴり感のようなものを確かに感じる。

Aメロの進行はそのまま使うことができるだろう。

またBメロのD/CとC/B♭のコンセプチャルな併用も参考にして頂きたい。D/C→Bm7はCのベース音が半音下がると、Bm7になってしまう。つまりD/C≒Bm7/Cなのだ。和音全体が下降してその精神状況を現しているようである。

こういう例えは偶然かもしないが、そういう感応的対応によって曲を作る=不定調性的感覚、というスタイルを取り入れるだけで作曲のスタンスにまたバリエーションが加わるはずである。「自分の心がそう動いたら、そうなのである」というただそれだけの感覚である。

この感覚が、先例や理論や常識に惑わされない「自己」があれば、逆に理論の勉強は楽しくなるはずである。

また最後のCメロがまったく不思議な終始感を持っている。むしろ解決しておらず、ただ横にスライドしてリリースしているような不完全燃焼のような進行である。しかしこれを繰り返すことで、そのパターンに音楽的脈絡が生まれるから不思議である。これも新しい挑戦といえるだろう。一度聴いて、音楽的脈絡を感じないような進行でも、何度も繰り返すことでリズムができ、意味が生まれる、というのはまさに音楽のクオリアの探求といえる。

 

4,3-Dのクリスマスカード

 

この曲もビジュアルが、見渡せる綺麗な曲です。
===

(ユーミンレポートより)
サビ(アルバム収録タイム 1:00-)
B♭M7 |Am7 |Gm7 |FM7 |
B♭M7 |Am7 |Gm7 |FM7 |
D♭M7 |Cm7 |B♭m7 |B♭m7/E♭ ||FM7 |
=degree=
(key=F)
IVm7 |IIIm7 |IIm7 |IM7 |
IVm7 |IIIm7 |IIm7 |IM7 |
(key=A♭)IVm7 |IIIm7 |IIm7 |IIm7/V |(key=F)IM7 |

 

この曲は最初の二段がFメジャーキーのIVから進行し、三段目では短三度上がって、A♭メジャーキーのIVから同一の下降をしていく。

A♭メジャーキーとはFマイナーキーであり、最後のFM7で明転するように次のコーラスに向かっていく。この二段目から三段目の変化が凄い。同主調の変化と言えばそれまでなのだが、決して明るい→暗いという曲の変化になっているわけではないからだ。これは同主調への変化が長調と短調の変化である、としか考えられないと、まずこのような転調をしようという発想にならない。


またFM7→D♭M7という例によってVI♭の変化を起こしてから同じ流れで下がってくる、という発想が結果としてこうした進行を生みださせた、のかもしれない。こんな転調の方法があったのだ、と思い知らされる好例である。

 

 ALARM a la mode(アラーム・アラ・モード)/松任谷由実