音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

連鎖感が新たなケーデンス感覚を創造する~ユーミン歌詞・コード考49

ユーミンの不定調性コード進行研究

ユーミン歌詞・コード考52 / アルバム「DAWN PURPLE」1

歌詞については掲載しておりませんので

www.uta-net.com

こちら等にて確認ください。

   

インカの花嫁

 

これは
VIIb |% |I |% |
に該当するのですが、聴感上は、IV |% |V |% |だと思います。


曲中では、うまい具合にDメジャーキーとAメジャーキーが行ったり来たりしています。前曲でもそうでしたが、このアルバムのマイブームでしょうか。

 

千一夜物語

Åメロ(アルバム収録タイム 0:30-)
(ユーミンレポートより)
C7/B♭ | F/C/A |Fm/C/A♭ |C/G |
keyはCメジャーがベースと考えて頂きたい。
ここは表記に迷ったが、三層構造のコードとした。半音下降のラインがメロディにも影響を及ぼしながら、連続されるc音の音楽的クオリアが「さわやかな焦燥感」またはドキッとするフラクタル図形を見た時のような穏やかな不安感とでも云おうか、そのような模様感、進行感を与える独特の印象を持つコード進行になっている。

 

E♭/C-D/C-D♭/C-Cといった進行感覚にも似ていていろいろ類似進行に留意しながら、原曲を聴いて、その雰囲気がつくる進行感に着目してほしい。

 

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タイムリミット


(ユーミンレポートより)
サビ(アルバム収録タイム 1:16-)
Dm7(9) |Dm7(9) |Am7(9) |Am7(9) |
Dm7(9) |Dm7(9) |Am7(9) |B♭7(#11) |~Dm7
同曲もあまり調の視点は重要ではない。

 

イントロからの流れがDm7(9)が中心なので、ここも二重調の雰囲気を持っている。

 

ケーデンスがないためモーダルなラインと言っても良いくらいである。そしてサビの終わりはII♭7コードによって(聴き取り解釈の違いもあり得る)Dm7にまた流れていく。このB♭7は解決のためのコードというよりも「いったん雰囲気を“いびつ”にしてまた元に戻す」というようなケーデンス感、模様感を覚える。サブドミナントマイナー終止である、と解釈するのであろうが、いくつかの終止感の中からこれを選ぶ、という選択肢では一番最後に位置されるような終止法であり、終止させるためのケーデンスを選ぶ、という考え方よりもやはりその手前のコードAm7から一瞬浮遊されるコードに浮き上がり、そのあとのDm7(9)が来た時に「どのような着地感を感じるか想像する」ほうが制作する側としては自由で楽しいのではないだろうか。

 

つまりランダムにいくつかのコードを試し、一番「なさそうな」または一番「危ない感じ」の和音を置いてみて、最初は流れない、と感じるかもしれないが、その連鎖感に意味を与えていくことで、脈絡が生まれ、その性格に応じたアレンジを施した結果、と考えたほうがクリエイティブであろう。昨今で言えば、EDM的な音色選び、あるぺじえーたーを重ねた時に偶然生まれる効果、チョップした素材をランダムに並べた時に生まれる偶然的に生まれるカッコよさへの理解や感覚、容認できる精神性などが該当するだろう。

 

これはサブドミナントマイナー終止ではなく、この曲のために産み出された「これしかない」ケーデンスであり、それを聴き手が解釈できるかが、今後の音楽理論の考え方の一つの基盤になるのではないだろうか。


これは歌詞の観点から見ても納得がいくことと思う。サビでは「あなたはきっと 後悔するわ いつか泣くほど 後悔するわ ゲームはいかが」と締められる。これは優しい脅迫である。そしてその最後のゲームへの誘惑の言葉が、B♭7(#11)となっている。これによりゲームへと誘っている側の人間が、「罠」「戦略」「策略」「武器」のようなものをたんまりと用意している、そんな風なケーデンスの印象になっていく。吹きすさぶ逆風の中に男は立たされるのである。このVI♭7の#11のサウンドはそうした音楽的クオリアを強烈に持つからこそ、ここではもっと重要な、そして必要なケーデンスに成り得ている、そんな風に私は理解した。

一つのこの進行に対しての視点と考えて頂ければ、と思う。
 

DAWN PURPLE