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音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

裏コードは「常に裏コード」ではない~ユーミン歌詞・コード考23★★★

ユーミンの不定調性コード進行研究

ユーミン歌詞・コード考 / アルバム「悲しいほどお天気」1

 

各種レポートはM-Bankにお問い合わせいただければPDF似て無償で配布しております。宜しくお願い致します(日本音楽理論研究会にて発表も行いました)。

 

歌詞については掲載しておりませんので

www.uta-net.com

こちら等にて確認ください。

1,丘の上の光
(ユーミンレポートより)

 

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「Aメロ~(アルバム収録楽曲タイム0:16-)
CM7 |F7 |Em7 |Em7/D |
C#m7(♭5) |CM7 Am7 D7 |GM7 |GM7 G7 |
CM7 |F7 |Em7 |Em7/D |
C#m7(♭5) |CM7 Am7 D7 |GM7 |F/G G F/G G7|
Bメロ
Cm7 |F7 |B♭M7 |Gm7 |
A♭M7 |Em7(♭5) B♭7(またはE♭M7/B♭) |Am7 |D7 |F/G |
=degree=
(key=G)
IVM7 |VII♭7 |VIm7 |VIm7/V |
IV#m7(♭5) |IVM7 IIm7 V7 |IM7 I7 |
IVM7 |VII♭7 |VIm7 |VIm7/V |
IV#m7(♭5) |IVM7 IIm7 V7 |VII♭/I I VII♭/I I7 |
Bメロ
(key=B♭)IIm7 |V7 |IM7 |VIm7 |
VII♭M7 |IV#m7(♭5) I7(またはIVM7/I) |VIIm7 |III7 |IV/V(CM7に帰着する属和音として) |


この曲はGメジャーキーから同主短調Gm=平行長調B♭に移行する。Cm7への移行のダイナミックさ、IV#m7(♭5)の色彩感は一聴して確認のこと。

 

この場合、BメロへのCm7の移行は、その発想経路が知りたいところである。「いつしか」という歌詞によって持っていく方向が探られているが、展開するようなCm7 F7はII-Vというよりも、II-Vという観点から明らかに独立してメロディを支えている。ジャズのスタンダードなどではおなじみだが、こうした転調を伴った形態でのII-Vにメロディを乗せる、というアプローチは初心者では難しい。

この辺りの質感が、少し哲学的な響き、ともいえるような堅さと説得力を楽曲に与えているように感じた。これがまた「丘の上の光」感を感じさせるから不思議である。

 

これはこの題名が先に在ったのか、曲ができてその雰囲気を適切に捉えた結果この表題になったのか、実はこうした発想の経路の解明は音楽脳の解明、作曲作業の真髄を知ることそのものなのではないだろうか。

 

またB♭M7を中心した展開の後、Gm7-A♭M7と得意の展開がみられ、ここでも転調する、という形態になっている。これも転調という考え方では捉えず、和声と和声の連鎖(進行と進行の連鎖のこと)が引き起こす変化感の連鎖が作る脈絡と、考えてみてほしい。


なお、このB♭7の部分のメロディがちょうどB♭に対してP4thの音を経過するため、avoidノート的な危うい響きを醸し出している。陽炎のような変化である。この部分は次に向かうAm7への移行ポイントであり、不定調性論でいうインターチェンジポイントといって、どのようなコードが置かれても帰着感を持つコード感をある程度の強度で持たせることができる部分である。

 

これは前後の激しい転調感によって、自然と起こるあいまいなコード進行のデッドスポットとなっており、これを忌避せず、危うい感じをそのまま生かしている。

 

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2,悲しいほどお天気
(ユーミンレポートより)

Aメロ(アルバム収録楽曲タイム0:27~)
DM7 C#7 |F#m F#m/F F#m/E F#m/E♭|DM7 Bm7/E |AM7 |
Em7 A7 |DM7 |Bm7/E |AM7 |
=degree=
(key=A)
IVM7 III7 |VIm VIm/VVI♭ VIm/V VIm/V♭|IVM7 IIm7/V |IM7 |
Vm7 I7 |IVM7 |IIm7/V |IM7 |


IVM7からはじまり、ラインクリシェをはさみ、Vm7-I7も登場する、というここまでのユーミン楽曲の集大成のような進行。

 

3,78
Aメロ(アルバム収録タイム0:14-)
Am7 |Bm7 |Am7 |Bm7 |
CM7 |F7 |Em7 |Em7 |
=degree=
(key=Em)
Ivm7 |Vm7 |Ivm7 |Vm7 |
VI♭M7 |II♭7|Im7 |Im7 |


この曲ではトニックに戻る際にII♭7であるF7が用いられている。裏コードとされるものであるが、このような使い方のポイントを「裏のドミナント」だと単純に理解してはならない。

なぜならこのサウンドはCM7から四度上行しているので、裏コード感が大変薄い。印象としては、CからみたIV7のようにも響くし、GマイナーキーのVII♭7のようにも感じる。ここではFM7でもメロディには影響がない。結果として裏コードになっただけで、制作者の意図は、たまたま指が流れた先にあったコードかもしれない。CM7をIM7としたとき、CM7→F7がカッコ良かったので、それにあわせてメロディを組んでいったら、うまいことEm7に向かった、という場合も起こりえるだろう(ユーミンがそうだったとは言わないが、通常作曲の状態ではこうした「奇跡の一手」が起きるものなのだ)。


不定調性論はむしろこうしたことが起きやすくなるように訓練していくのだが、和声がメロディの重力に逆らわず流れていき、それが調を幾重にもまたごうとも、歌えること、メッセージ性が保たれ作曲者の深層意識に沿っていること、和声の連鎖感を大切に作っていくこと、でコード進行のマンネリ化を阻む意図がある。そしてユーミンがその手法を早くから体得して活用し、その先を常に追い求めていることはこれまでの事例をみても分かるだろう。

 

そのために和音一つ一つ、メロディ一つ一つに、「自分の匂い付け」を簡単にできるようにして、「誰の物でもないCM7」を音楽的脈絡とともに活用できる、と云う心の状態を作り出すために私は不定調性論という、全ての先入観をリセットするための体系を作ったつもりである。

 悲しいほどお天気

 

 

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