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音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

ひこうき雲(和音がもつ言語性と作曲への活用);ユーミンレポート1

2017.9.10→2020.3.21更新

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ひこうき雲 / 松任谷由実(荒井由美)

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作者の意図が、聴き手一人一人にいつも完全に当てはまるとは限りません。
なぜなら、人間一人一人、感じ方も感性も異なるからです。
となると「自分がどう聴くか、どう解釈するか」が大切です。

そしてその印象は、明日変わってるかもしれません。

 

下記は私の観点です。

Aメロ
Eb--EbM7--Gm7--
Ab--AbM7--Fm7--
Bb--Bb7--Gm7--
AbM7--Bb7


ここでのキー(調)はEbメジャーです。
それぞれのはじまりは、

Eb=トニック
Ab=サブドミナント
Bb=ドミナント

の主要三和音です。Fm7で区切られてい等なところ、ためてためてゆっくり進んでいくイメージです。そのせいか歌詞のメッセージをじっくり聴かせる効果を感じます。
またこのゆっくりさが「懐かしさ」のような感覚を演出している、とも感じました。

「たたーたーー」

という下がるリズムのつぶやきのような旋律も影響しているでしょう。

 

|Gm7 B♭m7 |A♭M7 |のB♭m7について

普通に作ると、
|Gm7 B♭7 |A♭M7 |
こうなります。ジャズでは、A♭M7に結びつけるコードとして下記のように用います。
|E♭M7 B♭m7 E♭7|A♭M7|
B♭m7での跳躍するような変化感がドラマチックですね。この曲のB♭m7は、その考え方そのものを結果的に発展させた利用法となっています。
|Gm7 B♭m7 |A♭M7 |
(そら)|を-かけてゆく| |


「空をかけてゆく」の跳躍感が、実際にB♭m7「跳躍する意思」を訴えるような音楽的クオリアとして添えられ、歌詞の語感と一緒になり、ただの一時転調コードであったVm7がたしかに「跳躍」という“意味”を持っているフォークソング的なコードに進化したように感じます。

<例えば>

Cm7      →  E♭m7

通例m7の短三度移行は二音同音、二音反行というバランスの取れたヴォイシングになるため、ジャズハーモニーではダイナミックなヴォイスリーディング(voice reading=声部進行)とされます。


歌詞のメッセージを表現するコードを探す、という手法から出てくるコードというものもあるのではないか、ということをこの曲は教えてくれます。

もちろんユーミン氏は、単純に短三度上げたら気持ち良かった、というだけかもしれなません。それでもあなたが「良い」と思える感覚があるならそちらの方があなたにとっての真実で、そこからあなたはもっと新しい解釈や技法を生み出せるかもしれません。大事なことはあなたにとってのメッセージだと思います。


====
またこの曲の最後、フェードアウト部分で、
|A♭M7 |B♭m7  |
=degree=
|IVM7 |Vm7  |
このB♭m7は、このサブドミナント→ドミナントマイナーというトニックに戻らない和声進行の浮遊感が「ひこうき雲に乗ってどこまでも」という印象を与えるとともに、「空をかけていくシーン」「残った雲がたなびいているシーン」がずっと連続している映像的、アニメーションの印象を残しているのを感じます(単にアニメで使われたから、そう思う、というだけかもしれません。しかしこの辺りが、人のイメージを構成する曖昧なものだと思います。)。

この二つの和音の中にいくつもの、歌詞になっていないメッセージを感じます。

エンディング、フェードアウトに意味がある曲って他にもあるけど、ああ、こういうことだったんだ、みたいな理解に進めば、自分が曲を作る時、「今回はエンディングを象徴的にしたい」みたいな発想ができるし、そうなって初めて楽曲分析というのは現代的になるのではないか、と思います。

ひこうき雲

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