音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

ユーミンコード進行のパステルカラー~ユーミン歌詞・コード考1★★★★

ユーミンの不定調性コード進行研究

ユーミン歌詞・コード考1 アルバム「ひこうき雲」1

 

 

 

まず1973.11発売の「ひこうき雲」より。前半

1.ひこうき雲
下記をご参照ください。

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2.曇り空

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Aメロ(アルバム収録楽曲タイム0:08~)
Gm7 |Gm7 |Cm7/F |Cm7/F |
Cm7 |Gm7 |Cm7 |Dm7 |

=degree=
(key=Gm)
Im7 |Im7 |IVm7/VII♭ |IVm7/VII♭ |
IVm7 |Im7 |IVm7 |Vm7 |


この曲はgmoll(G minor)のキーとユーミンのくぐもった声で表現される「曇り空」的印象が象徴的である。

V7すなわちD7が用いられないことで強烈な短調の空気を持たない、清楚な美しさを感じる。どうしてもV7を用いたい誘惑に駆られる時もあるが、こうした「曖昧な気分を表現したいとき」「どんよりとした事象を表現するとき」「さりげなさ、弱々しさ」といった雰囲気を出したいときに、V7を用いない短調の雰囲気で作曲してみるのはどうだろうか。まさにユーミンのパステルカラーである。


またこの曲では、Cm7/F→Cm7という微細な変化を用いている。これは「微妙な色彩の変化」であり、本来「コード進行が停滞している」と云える部分であるが、停滞であれ、微妙な変化であれ、「その変化に何らかの感情や意味が創出される」という発想では、その活用の可能性が広がるはずである。

この曲での「どんよりとした雰囲気」を表現するのにこうした変化感の乏しい進行は逆に効果的でなのではないだろうか?

 

3.恋のスーパーパラシューター

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Aメロ(アルバム収録楽曲タイム0:14~)
C |C |Gm7 |F |
Am7 |Gm7 |F |G7sus4 |
=degree=
(key=C)
I |I |Vm7 |IV |
VIm7 |Vm7 |IV |V7sus4 |

サビ(アルバム収録楽曲タイム0:39~)
B♭ |F |E♭ |F |
A♭ |E♭ |D7 |Dm7/G~
=degree=
(key=F)IV |I |VII♭ |I |
(key=E♭)IV |I |VII7 |(key=C)IIm7/V~


一聴すると、ロックンロールのような曲調だが、内部では激しい転調が発生している。C7というブルースコードを基調にしたCミクソリディアンの下記モーダルハーモニーで楽曲のAメロが構成されていると解釈もできる。

 

Cミクソリディアンモードのダイアトニックハーモニー
C7-Dm7-Em7(♭5)-FM7-Gm7-Am7-B♭M7
ミクソリディアン(mixo-lydyan)とは教会旋法から派生してジャズ理論にまで用いられた音階概念(モード)で、通常のドレミファソラシドをこのモード名で述べるとアイオニアン(Ionian=またはイオニアン)となる。

ミクソリディアンはこのうち「ソ」の音から始めたモードであり、ソラシドレミファソという音階に付いたモード名である。
ジャズ、フュージョン、ポピュラーミュージックでは、時折、このように中心が「ド」でない音楽がある。この曲の例では、Aメロは聴感上Cが中心になる。しかしコードを見ると、Gm7が特徴的に響いている。「ひこうき雲」でも使われたVm7だ。これはg,b♭,d,fという音構成である。本来Cのキーであれば、このコードはGm7ではなくG7となるはずである。メロディのほうはb音が出てくるわけでも、b♭が出てくるわけではなく、Gm7の部分では、c音が響いているのでGsus4を鳴らせば弾けてしまうが、サビで出てくるB♭などに印象を呼応させるために、またVm7のほうがしっくりくる作風だった為に使用されたのかもしれない。

 

このVm7を持つ和声の組み合わせをcを中心に作ろうと思うと、通常のCメジャーキーのダイアトニックコード、

CM7-Dm7-Em7-FM7-G7-Am7-Bm7(♭5)

の中のb音を全てb♭にすることになり、

C7-Dm7-Em7(♭5)-FM7-Gm7-Am7-B♭M7

となる。これはFメジャーキーのダイアトニックコードになる。転調??と思うが、先も述べたとおり、曲はCが中心に感じる。つまりFメジャーキーのなかのcを中心にした音階がベースになった曲調、と解釈することができる。

Fメジャーキーにとってのcは「ソ=V」である。しかしこれは、ユーミンがミクソリディアンモードを意識していた、という指摘ではない。結果的にそう分析可能だ、というだけである。考えるポイントは、このVm7の使用感を用いた、という選択にある。別にミクソリディアンの色調を使いたかったわけではあるまい。たまたまVm7を用いるのが自身の中のトレンドであったため、たまたまこの曲でも用いた、と考えよう。

すると、モードのことなど考えず、コードを並べてメロディを追加したことになる。

 

 

例;
CM7 |Bm7 E7 |Am7 |  
という進行は、Cメジャーキー/Aマイナーキーに聴こえるかもしれないが、Gメジャーキーの中でVII7が用いられIIIm7に帰着した進行ということもできるし、Cリディアンのダイアトニックコードを用いた進行ということもできる。


これらも別にモードを意識したのではなく、CM7-Bm7がもつ進行感に既視感がある為、その連鎖感を挿入しただけ、と捉えてみてほしい。

 

この各コードの「連鎖感」は、外国語の学習でいえば慣用句の学習である。いくつもこれらの慣用句を知っていれば、日常会話のバリエーションが広がるだろう。ユーミン楽曲の中にも多数の慣用句があり、本レポートからもユーミン独自の慣用句を見つけることができるだろう。またその発展形についてのヒントや、「ユーミンが使っていない慣用句の可能性」や「更に発展した考え方の可能性」のヒントも随所に書いたつもりである。そうした使用法と可能性を読解頂ければ幸いである。

 

同曲の解説に戻ると、サビではB♭に展開し、これがFのキーのIVになっている。これは意図的な転調というよりも、G7sus4からルート(根音)が短三度上行した展開感を用いて、その進行感を活用して展開を作られている、と考えてみてほしい。

また、m7の短三度上行による展開テクニックは先に紹介したが、ここではメジャーコード系の短三度上行のテクニックが用いられている。

これらは「ひこうき雲」の技法から自身が発展させたものなのだろうか。それとも全く関係なく出てきた当時の思考の癖のようなものなのだろうか。

 

用例1
C |F G |B♭ |G |
=degree=
I |IV V |VII♭ |V |


というように、短三度の移行を挟むことによって、その進行感は転調感のようなものも伴うが、曲のメロディや歌詞によって「高揚感」や「もっと云うとね」と云う前置きから続くような「進行感」を用いることで、「転調する」のではなく、楽曲のメッセージに沿った展開を生み出すことができるのが、器楽曲とは違う、歌うためのメロディを持つポピュラーミュージックの可能性となっているのではないだろうか。
この手法はサビへと向かう瞬間や、Bメロでガラリと雰囲気を一新したい時などには有効である。

 

 

用例2 E.Clapton「Tears in Heaven」  
サビからCメロ
F#m7 |C# |Em7 |F#7 |Bm7 |Bm7/E |A |A |
C Bm7 |Am7 D |G |~
このA→Cにダイナミックな短三度転調が起きている。楽曲を聴くと「時間の経過がお前を打ちのめすだろう」というような歌詞になっており、この変化が「時間が流れ去っていくと~」というような雰囲気を確かに後押ししており、その変化に音楽的にも自然と共感できる構造が印象的である。歌詞が和声の進行感を説明し、聴き手に新しい印象感を与えていく。これがジャズや近現代音楽とは違う「新しい響きを一般大衆が獲得する」という事象をなし得たのではないだろうか。

 

またこうした発見から、ジャズやクラシック、近代音楽のサウンドに耳を傾けて頂ければ、そのクオリアを感じる耳は、きっと多くの音楽表現を自在に解釈していくことだろう。こうした学習は、クラシック音楽から学ぶよりも、普段聴き慣れている歌謡曲から入った方が入りやすい人も大勢いるであろうし、学校音楽教育の変則的な手法としても活用できることだろう。
ちなみにメジャーコードの短三度の移動について、拙ブログでリヒャルト・シュトラウスの作品を取り上げた記事がある。下記も参考にして頂けると幸いである。

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「 春の賑わい 」レーナウの詩による2つの歌曲 Op.26より

 

5.きっと言える

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Aメロ(アルバム収録楽曲タイム0:08~)
B♭7 |E♭M7 |A♭m7 |G♭M7 |
D♭7 |G♭M7 |Bm7 |AM7 |
サビ
Bm7 |AM7 |Bm7 |AM7 |
Bm7 |AM7 |Bm7 |E7 |
A'メロ
E7 |AM7 |Dm7 |CM7 |
G7 |CM7 |Fm7 |E♭M7 |
サビ'
Fm7 |E♭M7 |Fm7 |E♭M7 |
Fm7 |E♭M7 |Fm7 |B♭7 |
=degree=
(Key=E♭)V7 |IM7 |IVm7 |III♭M7 |
(Key=G♭)V7 |IM7 |IVm7 |III♭M7 |
サビ
(Key=A)IIm7 |IM7 |IIm7 |IM7 |
IIm7 |IM7 |IIm7 |V7 |
A'メロ
(Key=A)V7 |IM7 |IVm7 |III♭M7 |
(Key=C)V7 |IM7 |IVm7 |III♭M7 |
サビ'
(Key=E♭)IIm7 |IM7 |IIm7 |IM7 |
IIm7 |IM7 |IIm7 |V7 |


同型進行のシークエンスを連鎖を拡大させ、発生する転調にメロディとストーリー感を乗せた作品。これはスティービー・ワンダーなどの有名曲「Summer Soft」という曲で転調を繰り返しながら、サビがどんどん上がっていくという作曲技法を用いられている。しかしこれは76年であり、ユーミンの方が先となる。

 

さらに前でいえば67年に「someday at christmas」という作品もあるが、この「きっと言える」ほど複雑ではない(詳しくはスティービー・レポートにて)。

この曲では、コード進行が自動的に調を移行させるために、サビで転調が起き、かつそれを元に戻さず、そのまま活用している作品である。結果的に歌詞が「あなたが好き きっといえる どんな場所で 出会ったとしても」というメッセージが高音でのフレーズになり「切々と歌う」感が増し、歌詞のメッセージとリンクしているのも聴き手を引きつけて止まない。

1コーラス目と2コーラス目でキーが違うなど、普通は考えつかないかもしれないが、こうした曲のテクニックや表現を参考にトライするに値するのではないだろうか。

ジョン・コルトレーンの「Giant Steps」(1960年リリース)はめまぐるしく長三度の調で転調(調旋回)していく作品だが、この作品は短三度で上がることの出来る全ての調に展開している、という意味では、機能によらない和声技法の先にフリージャズという世界に達してしまったコルトレーンとは違い、ビートルズ同様その難解なジャズ的進技法を「和声の連鎖によって様々な感情表現可能である」と知っていたユーミンが、商業的な成功を収める可能性の高いポップミュージックで表現し、多くの若いアーティストに影響を与えた、という点において、ある種のフリージャズ的表現の一般的表現の終着点を見いだしているのではないだろうか。

この手法も、機能和声的な方法論ではなく「和声の連鎖は必ず何らかの感情表現を持ち得る」という可能性のもと連鎖していく実験を重ね、トレーニングすることによって、独自の楽曲が生み出される余地はまだあると考える。

 

用例;
CM7 |D7 |を一つのパターンとすると、
CM7 |D7 |E♭M7 |F7 |
G♭M7 |A♭7 |AM7 |B7 |
というシークエンスを作り、それが作り出す雰囲気を感じ取り、それに沿った歌詞を作っていくと言うこともできるだろう。

 

事例5;ベルベット・イースター

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Aメロ(アルバム収録楽曲タイム0:09~)
Cm |G7 |Gm |F |
A♭ |E♭ |D7 |G7 |
=degree=
(key=Cm)
Im |V7 |Vm |IV |
VI♭ |III♭ |II7 |V7 |


ここでは短調のV7に向かったあとで、Vm7に戻り、そのまま長調のIVに流れるという光と影が行き来する雲間の大地のような動きをする。これも楽曲のどんよりとした空を言い表しているようで興味深い。

これもV7は必ずIやIVに進む、と云う考えを発展させて用いるものであると同時に、ジャズ理論的には「メジャーコードはマイナーコードに変化して色合いを付ける(逆も可)」という抽象的進行に歌詞の意味合いがしっかりのっていることで、斬新な進行感と色彩感が聴き手に不思議な色合いを感じさせるだろう。これを元に用例を作ると、
C |Cm |F |Fm |
G |Gm |A♭ |A♭m |
というような流れの中でメロディを入れられるか、トレーニングしてみると良いだろう。

 ひこうき雲

 

 

   

   

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