音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

下方倍音列について_その3

2017.10.15→2020.9.24更新

記事その1はこちら。

www.terrax.site

 

<上下の倍音列音をどう扱うか>

不定調性論では、倍音列の重複を避け基音を特定する、という利点を用いるために、第8倍音までを用いることができる、というルールを決めています(これを反応領域の考え方、と言います)。

他参考;基音の反応領域2反応領域で発生音をコントロールする

 

例えば上方倍音第8倍音までをピックアップすると、C-E-G-Bbです。

そしてCの下方倍音列を第8倍音までピックアップするとC-Ab-F-Dという音の種類であることがわかります。

   

 

 

ここで下方倍音に現れたC-Ab-F-Dの音でc以外の音をみてください。

つまり、Ab、F、Dですね。

次にさらにこれらのそれぞれの音の上方8倍音までに現れる音をみてみましょう。

Ab-C-Eb-Gb(cが5倍音に現れている)
F-A-C-Eb(cが3,6倍音に現れている)
D-F#-A-C(cが7倍音に現れている)

全てにCがありますね。当然です。

cの振動数から割ってきたのですから。

 

つまり下方倍音列は、「基音を発生する音の集合」ともいえるわけです。

 

それぞれが上方倍音の何番目にCを持つか、という音の集合です。


次の図を見てください。

f:id:terraxart:20171015134541p:plain

 これは、基音cに対して、上下の八倍音までの配列(黄色と緑色のセルの音名)と、さらにどれらの音を基音とした場合現れる倍音列音を列挙したものです。

色を塗ったセルが左に表記された「○方○倍音」で、色の塗っていないセルの音は色付き音を基音とした時のそれぞれの上下の倍音で埋めています。

  

 

だいぶ内容を端折りますが(教材では詳細を明記)ここから展開していろいろ倍音の相互連環が発見できます。

cの上方八倍音まではc,e,g,a#です。
で、
dの下方八倍音まではd,g,a#,eです。

発生音名が被っています。

面白いですよね。倍音関係が互いに補完しているというフォルムが。

これを「完全結合領域」と教材では紹介しています。

 

こうやって、12音の相互関係を作ると、シェーンベルクやバルトークが作った12音の配置図のようなものができます。不定調性論にも十二音連関表、というのがありますが、先生方とは違う理由なのに類似している点が興味深いです。

     


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一つの基音から八倍音までの出現音を関連づけて用いていくと、様々な和音が自在に作れます。

三度堆積和音はもちろん、四度和音も、二度和音も、神秘和音も、クラスターも解釈することが可能です。和音が存在した当時はこうした特殊和音をつくる必要がなかったので下方倍音列は必要ありませんでしたが、現代のジャズ和声を関連つけようと思うと下方倍音列の数理はとっても便利です。

また注意いただきたのは、誰がどのように関連づけるかで解釈が変わってしまうのが平均律12音の近似値問題でもありますので、微分音を扱わない人は、音同士の関連性を見つけても「この音とこの音は関連付けられる!!」と安易に思わないようにしてください。

近似値の問題はこちらで詳しく扱っています。

 

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そういった解釈問題を、教材では、「CG問題」として書いていますが、
CにとってのGの立場、GにとってのCの立場を平等にしました。
Cにとっての3倍音g、Gにとっての1/3倍音cという相互関係です。

低音を優先に考えれば、Cが中心音、ですが、高音を中心として考えれば、Gが中心になります。どちらが中心か、ということをこれまでは自然科学に求めていましたが、不定調性論ではあなた自身がそれを決める人、となります。

音楽表現に置いて、c,gという和音がC△の断片なのか、Gsus4の断片なのかをあなたが決められる、というスタンスを確立する方法論なのです。

これはとても大切です。

下方領域をピックアップすることで、中心の解釈が二つになり、それを自分で解釈できる、というスタンスが出来上がったのです。


たとえば、Fmadd9
これは構成音は、F,Ab,C,Gです。
つまり基音をCとした時の下方倍音F,Ab,CとCの上方倍音Gを合体させている、という発想が可能になるわけです。

他の作り方でも同じ和音を作ることもできます。痛快です。

 

 

これによって「和音がなぜ存在するのか」ということもその人なりのモデルで考えることができます(詳しくは教材まで)。

 

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話は変わってブルーノートはどうでしょう。
伴奏がC△のときに、旋律の流れでEbを用いることのできる感覚がブルースです。

このブルージーのサウンドはなぜカッコ良いのか?を説明する材料としてもこれらの上下8倍音までの関係が活用できます。

基音Cなら、
上方領域に、C,E,G,Bb

下方領域に、F,Ab,Dです。

 

そしてこれらのF,Ab,Dの上方音を全て並べてみます。
F-A-C-Eb
Ab-C-Eb-Gb
D-F#-A-C
すると、ブルーノートのEb,F#,Bbが現れるのはもちろん、C#とDb以外全て出てしまいます。

f:id:terraxart:20180611084910p:plain

(参考;数理親和音モデル

 

あとはこれらの出現音をどこまで用いるかを作曲者、演奏者が判断します(反応領域の決定)。

C△ |C△ |C△ |C△ |

において、Cを中心にしたスケールで各領域の基音だけなら、
C-D-E-F-G-Ab-Bbです。

cの上方倍音はc,e,g,b♭、下方倍音はc,f,a♭,dだからです。

これを五度音まで反応させると、
C-D-Eb-E-F-G-A-Ab-Bbと使える音が増え、三度音まで用いると、
C-D-Eb-E-F-F#-G-A-Ab-Bbとなります。これをどこまで許容するか、をあなた自身が決めればいいんです。

 

また同様にCとFだけに絞れば、
C-Eb-E-F-G-A-Bb

となります。

これはもちろん一般のブルーノートの考え方とは異なりますが、スッキリ同じ土俵でブルーノートスケールとメジャースケールの存在を考えることができるようになります。


しかしこうした一つの考え方から、機能和声の意義も、民族音楽的な音も、自分の決めた体系で生み出せることが、不定調性論の特徴です。

最初はバラバラだったジャンル、思想、音楽を一旦全ての考え方をフラットに戻して、もう一度作りなおすと、こうした音の連関性が見えてくるのが下方倍音列の使用のメリットです。

 

 私はこれらを全てまるっと概観して方法論としてまとめるまで30年かかってしまいました。ブログでもだいぶ他の記事で公開していますので不定調性関連の記事をご覧いただき、下方倍音列の使い方をマスターしていただきたいです。

ネガティブハーモニーをマスターするより、下方倍音列の数理をマスターした方が早いと思います。もともと機能和声論は、下方倍音の数理を暗黙のうちに活用してきたからです。

 

また「下方倍音」というだけで未だに迫害を受ける用語でもあるので、活用する際はご注意ください。学術的な場で不用意に発言して良い単語ではございません。

そうしたことがないように当ブログも内容の普及に日々全力で取り組んでおります。

 

どうぞよろしくお願いいたします。