音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

オーディオオカルトと音楽的なクオリア

仮想アースは音が変わるのか、的な話から一考したものです。

クオリアについての注記はこちら

www.terrax.site

オーディオオカルトなどと言われます。

これは高い壺、健康にいい温泉、体にいい食べ物、怪談話などと同じで、「信じたいと思って実際に体感できる」人間の錯覚や信じる信念などが関わる分野です。

なぜオーディオの情報が「誤った情報にあふれ、それを信じる人がいるのか」という点を憂うこともありましょうが、実際"聞こえない音"を相手にしているわけで、また「自分というフィルターを通して全員違う音を聞いている」を認めないとそういう議論になろうかと思います。

皆が『魔女に与える鉄槌』を信じた時代があるように、広く広まった知識はある種の思考の自由を奪います。

オーディオオカルトも個人が個人の範囲で楽しめば問題は置きません。自分が修学旅行で焼いた茶碗を2億円と思うこと自体は自由です。

 

「この音が良い、悪い」も独自論的な物言いです。それは星占いが当たるかどうかを言い争うようなものです。

聞いて感じること、聞いてそう思い込むことを楽しめば良いだけです。

こうした音の変化は「デジタルでは記録できない」とおっしゃる方もいます。

ある意味では確かにサンプリング技術が追いつかないこともありましょうが、それではあなたの言っていることを証明する存在がない、ということでもあり、それは子供の主張と変わりません。

そして今回の着眼点はそこではありません。

デジタルで録音すると、毎回音がランダムに変わる、という点を見ていただきたいのです。空気が揺らぐ以上、電気を使っている以上、音は毎回変わる、という過程を持っていただく、というのはどう?というご提案なのです。

だからこそオーディオオカルトであり、個人の楽しみの追求以上のことは現代科学では判別が難しい、という点を理解し、機材の宣伝文句は、映画の「全米が泣いた」程度の受け取り、爽やかに興奮いただいて楽しむのが健康的ではないか、という私の感想にすぎません。異論は認めます。

 

なお、スピーカーの振動を安定させる、とか、特定のノイズを減らす、といった技術革新自体はこれからも実際にどんどん出てくるでしょうから、技術とオカルトを区別できる知識はがっつり欲しいな、と感じたりします。

 

私も最初は使命感で不定調性論を作りましたが、ただ、自分の行為が役に立っていると信じたかっただけでした。そこで「人は独自論を人に勧めたがる」という性質を知りました。

 

人が耳で聞いただけでは、プラセボ効果をはじめとしたさまざまな認知バイアスがかかります。

普通の人で訓練していけば、1/1000秒まで聞き分けられます。つまり、

・聴く頭の定位に対する高さ、位置、角度、集中力、前後の話題での洗脳

・室温、湿度、時間、体調、その他の環境変数

・機材の新品度、材質、電源周りの環境

・スピーカーのランダムな振動の偶然性、電源ノイズのランダムな飛び火、その他配線で生じる量子レベルでのさまざまな現象

などが出音にさまざな変化を生じさせ、出てくる音は毎回異なります。

 

音を検証します、と先方にも申し上げたのですが、録音音源はいただけなかったので、この記事では別の角度からある一つのご提案をします。

ランダムにピックアップしたいくつかの音質検証動画で用いられた音声をnoteburnerのyoutube downloaderで落とした音をここでは題材にします。

youtubeに上がった時点で、音声は歪んでしまいますから検証としての信憑性はないのですが、ポイントはそこではなく、音はあらゆる環境で毎回ランダムに変わる、という点です。部屋の反響、マイクの角度/位置、その他の要因...とにかくyoutubeで高価なオーディオの体験は難しい、という点を感じてもらえれば嬉しいです。

 

まずプラグイン自体が正確であることを確認します。

同じトラックを二つにコピーして、それぞれのトラックにinsight2を掛けてスクリーンキャプチャーします。

線の長さは振幅を表し、光線の角度はステレオ位置です。

45 度線内の光線は同相オーディオを表し、これらの線を超えるものは位相がずれているデータ/現象を表します。位相ずれを感じ取ることはなかなか難しいですし、このメーターではその違いが明らかにでます。

 

 

 

どのタイミングでキャプチャーしても同じようなフォルムになります。当たり前です。その一つを取り出して、フォトショップで透明にして色分けして重ねても

同じデータなのですから同じにならないとここからの計測ができません。

これでinsight2が正確に反応することがわかります。

 

最初は、自作した仮想アース関連機器を繋いで視聴した、という音源の冒頭を揃えて同時に再生したpolar レベルキャプチャーをご覧ください。左がアース機器接続なし、右が接続ありです。位相ずれがどの程度発生するかで再生の質を見ます。

それぞれ再生しながらプラグインを並べてスクリーンキャプチャーしたものです。

おんなじような部分もあれば、左の方が音圧のある時と、右の方が位相ずれがある時などがあり、はっきりとした特徴があるわけではありません。このデータだけで判別してはいけませんが、これを一言で「その機器を加えたらどう音が変わったかを一言で述べる」のは難しいように感じます。

 

大切なのは、個人が自作した機器をかますだけでも音像は変わる、という点です。

この変化を見るに、ひょっとするとそのいくつかは機器は関係なく、様々なスピーカーや電流のランダムな変化がこうした出音の変化を引き起こしているのかもしれません。

つまり機器を接続してもしなくても、機器内で微細な電位変化が起きて、微細なランダムな出力異常が出てしまう、と考えるのです。この音は別の実験でも検証できました。後述します。

 

 

次に五つの異なる電源システムを用いて同じ曲を再生した時の同様なpolarレベルのキャプチャーです。

ここでは左上が最もカオスです。

 

ここでは左下や右上に変化が。

 

 

これはどうでしょう。こうした同じ画像でも、前後に何らかの差があると、データは同じでも違うように聞こえたりします。

 

ここでは全体的に個性的です。

 

当然おんなじような場所も。

実際に聞いたら右上が一番まとまりがあるような気もするのです笑。

逆に人が注視して聞けるポイントは限られていますから、どういう言い方をしようとなんとなく当てはまってしまうのもこういうランダムなデータになる理由だと思います(二回目聞いた時はまた別なところを注視する)。

またラウドネスの流れを27秒ほど記録したこちらのデータのタイプでも五つを比較しましょう。

これも重ねてみましょう。

位相図では結構な差がありましたが、この図では非常に微妙です。

差のあるところもあれ、無いところもあれ。

もちろんその他の様々な音響データを組み合わせて考えるべきですし、カメラで録画した音ではあります。しかしながらこれらの差にて、この機材はこのような音になる特徴がある、とyoutube上で機材の如何を判断して購入の是非を考えるのはなかなかもって至難の業であるような気もします。

ミックスなどだとこういう差は大きな差、とされますが。

同様にオーディオマニアがこの差を「劇的に変わった」と述べるから、一般の人は怪訝な顔をしてしまうのでしょう。音の変化ではなく、位相のランダムなずれを「音のよさ」と誤認識している可能性はないでしょうか。

 

 

次が面白いです。先に後述します、と書いた実験です。

高級オーディオルームでの視聴をカメラに撮影した音なのですが、二回それぞれ再生してくれています。その4本全部並べてスクリーンショットを撮っていますから同じタイミングの部分です。

しかし微妙に数センチ程度毎回カメラの位置が変わるので、記録された波形に同じ楽曲であるにもかかわらず変化が見られます。微妙な反響が位相ずれを起こしている可能性もあります。

左上がノイズ除去装置なしの一回目、左下が装置なし二回目、

右上が装置接続一回目、右下が装置接続二回目です。

もちろん全部を並べて(1/1000単位で揃ってます)、insight2も四画面出し、一挙に再生し、同じタイミングでスクリーンキャプチャーしています。

下記の画面の変化を1/1000以下のずれ、と解釈されるのは自由です。それを聞き路つ耳、感じ取って解釈する感性を持っている人がオーディオの専門家と言われればそうかもしれません。

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同じ曲を同じ設定で再生しているにもかかわらず、波形が変わります。

また、ノイズ除去機器がどのように作用しているのか、これでは分かりません。

カメラの微妙な位置のずれでこんなに変わるのでしょうか?カメラがそのように記録していないとするなら、これもやはり音響再生装置側のランダムな変化の記録と考えるしかありません。もちろんカメラやマイクの性能をチェックする必要もあります。一番あり得るのが、ライブ音源を横に並べる時、頭がずれている可能性です。慎重に合わせて1/1000秒単位であっていると思うのですが、疑問に感じる方は、それぞれでお試しにあんると良いと思います。

 

同じもので、高音部の出力の違いも撮ってみました。

左二つと右二つが同じ設定です。

これだけ違う姿を見ると、この機材の特徴はこうである、と一言でまとめるのはますます難しいです。

 

1kあたりでも当然若干の違いがあります。薄灰色が実効値、薄い灰色がピーク値です。逆に「これはほぼ一緒」としてしまうのも、機器使用者には不服でしょう。変化がないなら高いお金を投資した意味がありません。

逆にこの周波数データだけ見てしまうと「この機器は効果がない」なんていうデマを流すことすらできます。

 

機器接続なし1&2回目

機器接続あり1&2回目

やはりラウドネスにも変化があります。双方はそれぞれ同じセッティングです。カメラがぶれて録音状態が多少変わったにしては如何なるものか。機材が暖かくなったことで起きる電気的変化の可能性がありますね。

 

機材なし(青)と機材あり(赤)の比較

これをみますと、データにずれがなければ、冒頭部分は無視し、その後コンプレッサーがかかった如く最大音が押し込まれ、曲が盛り上がってくるに従って、今度はマキシマイザーがごとく最大値を引き上げています。その後は、スクリーンキャプチャーのずれか、insight2自体のズレか、縦軸がずれているために判別はしかねます。

しかしながら、このような挙動を以て、果たしてこの接続機器はどの程度の意義有らんと判別しましょうや!

室温、機材の温度、湿度の変化でしょうか?

 

これらの検証のポイントは、

ランダムに変化する、予測できない変化があまりに膨大な量として次から次へと訪れるので、本来は正確に解釈などできない。

という点であり、

自分が注視した音の瞬間どのような印象になるか、でその心象を決定解釈してしまいそう。全てのタイミングを人が記録し解析できるとは限らないからです。

です。

まさに知らず知らずに音楽的なクオリアをフル活用しているのだと思います。

 

今回見てきた「音はランダムに変わる」ということに同意いただけるのであれば、まずそのランダムさを認め、人がコントロールできない世界、たった一言では解釈できない世界がそこにあることを認める必要があります。あなたが聞いたその音は、明日誰かの元で再現はされないのです。

 

オーディオに投資される方に、この

・音はランダムに変わり、どれも一長一短あるから、推しを決めてその会社の範囲で楽しんで欲しい

というところで妥協することをお勧めします。

 

個人的には、いい音は機材が作るのではなく、自分の心がそれを作るのだ、となることがゴールではないか、と思ってしまいます。こだわらないバランス、他を受けれいる余裕、未熟であること、不足があること自体を楽しむ余裕、それを理解した上で、探究する専門性、そしてその専門性が身近な誰かの役に立つこと、でオーディオオカルトは理解の範囲に配置できる趣味になると感じました。