音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

もっといい作品/演奏を作るにはどうすればいいですか

"普段クラシックギターで即興演奏をやっているのですが、もっと良い演奏をしたいと思っているのですが、どうしたらいいでしょう?"

 

私が答えられることではないのですが、これは普遍的な問いだな、と感じました。

皆さんも時々「もっとこうなりたい」「次どうすればもっと良くなるか?」というモチベーションで会話をすると思います。

 

100メートルを最初は18秒かかっていて、陸上のトレーニングを行い9秒台になったとしましょう。

9秒まではスキル、トレーニング、経験を積めばある程度確かにとんとん拍子でゴールに近づいたとしても、9秒台になってからは当然人類の現状の限界値ですから伸ばすのが大変です。

下記の図で言えば、18秒かかる段階がA、9秒台になった段階がBと言えます。

 

f:id:terraxart:20210820173852p:plain

芸術の場合は現状の位置どりが難しく、自分がAの位置にいるのかBの位置にいるのかわかりません。

時に自分がAにいるように感じたり、時にBにいるように感じます。

100メートル走で言えば、全力で走っても18秒かかるときもあれば、8秒で走ってしまうこともある、そんな状態です。個人の体感の上では。

また、この体感は見ている側の意識にも影響されますので、人によっては18秒に感じ、人によっては8秒に感じます。翌日考えると全く違ったり。数年経つと8秒に感じられたり。そういった類の科学的とは言えない、何らかの情緒的存在によって構成されている価値を生み出す存在を人類は芸術と呼んできた訳ですが。

とてもやっかいです。

 

ここに資本主義が絡んでくるともっとやっかいです。

f:id:terraxart:20210820174644p:plain

前よりもたくさんの集客、前よりもたくさんの売り上げ...これを目指していくやり方には限界があります。もともと持っている表現活動とは違う資本主義的な才能も必要ですし、物理的な限界を納期的限界によって越えなくてはいけないことで人によっては途中でパンクしてしまうこともあります。満腹を無理矢理忘れさせて食べるわけですから。


「どんどん大きくする」「前回よりもすごいことをする」というのに悪魔的な貪欲さとある種の稀有な非理性的感覚に鈍感(?)になれる才能がないと難しいと感じます。

広い世界にはそれができる人がいるのでそれに続かないといけない人は大変です。一般人がスティーブ・ジョブズと哲学を用いるようなものです。

でもそうしたある種の犠牲と野望によって社会や文化が進化してきた面もあります。

 

 

f:id:terraxart:20210820175034p:plain

そこでもし、危険なパンク街道に乗る前に、資本主義の絡まない目標設定の仕方を覚えて、そこから展開していただくようにしています。

現状がどれほどか自分でも相手でもわからないのですから、

・次は星形を狙って目標を定めやってみる、

・次回は六角形を目標に定めて頑張ってみる、

・次は長方形を目標に頑張ってみる

というイメージです。

表現活動を行う人にとっては、常に現在が最高なはずです。

そういう精神的な状態が左右する、曖昧で抽象的な目標を設定の場合は、前回よりも「より良いもの」を作るために巧みなストーリー設定が必要です。

そうでないと、前回は頑張りきれなかったのか?という告白になります。前回がベストだと感じている人にとっては改悪になってしまう場合もあります。

 

"普段クラシックギターで即興演奏をやっているのですが、もっと良い演奏をしたいと思っているのですが、どうしたらいいでしょう?"

もしも過去の演奏に対して「もっといいものを作りたい」は過去の否定、自己否定を含む場合があります。当時関わってくれた人へのダメ出しにもつながります。

 

だから「今よりももっと」と考えないで、次の目標に集中し、

・次はこうやってみたい

・前回こうやったら次はこうやってみたい

・前回はこれができたから次はこうやってみたい

というやり方で、丁寧に新しい目標設定をし、その結果はどういうゴールが見えるかを想定して結果として良いものができたと思えるストーリー設定が十分になされている必要があるという意味です。

ポイントは前作と比較して、容易に比較しなくて済むような新しい良いもの、を作る訳ですから、結構難しいです。二作目のジンクスというのは、この比較しづらさを上手に作り上げ、かつ前になかった良いものを作ることの難しさが加わるからだと思います。

「バック トゥ ザ フューチャー三部作」や「ジェイソン・ボーンシリーズ」がなぜ、うまくいったのか、自分が成功事例だと思う作品の分析を二作目を作る時にやると良いと思います。勢いでやらず丁寧にストーリー設定をする必要があります。


「もっと」は脳の欲求であり、何かを達成する、ということとは話を分けて捉えないといつも不満しか感じなくなります(脳の満足は一瞬)。

また、そのプロジェクトで自分よりも優れた人があなたより"売り上げ"を伸ばしたなら、そしてあなたがそれを許すなら、どんどん相手に譲ってサポートに回ってください。そしてあなたは自分の立場で新しい星型の未来に向かって進んでください。

これができるかどうか、そのタイミングも勇気です。得意な人が得意なことをやるべきです。


成長には限界があるし、自分ができることも、人生の中でできることも限られています。

だから勇気をもって前作比較をしなくつて済むような、絶妙なストーリー作りに集中して時間をかけてみたら?という話です。

もし明日目が見えなくなったら、目が見えなくなった世界観でベストなものを作ろうと思えるかどうか、という覚悟です。


 どうやって昨日を手放すか。


自分には何か足りない、と思いがちです。また、世界中の商品がそう思わせてくる要素を持っています。

今持っているものが自分のすべてだ、と思えるかどうか。

 

自分を追い詰めないように、作り始める前の「この次のストーリー設定」に時間をかけることで、ちょっと冷静になり、次に何をすべきかがわかることもあります。

ネット商品のセールは最終日に買うことをおすすめします。それまではカートに入れてパソコンを閉じましょう。不思議なことに数日経つと必要か必要じゃないか、感じますから。大抵は必要のないものです。


自分も含め、何か凄く重要でないものに日々追われながらストーリー設定を誤っているような気がするので、この問題を取り上げてみました。