音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

「コード理論大全」読書感想文

2019.6.5⇨2020.2.17更新

参考

www.terrax.site

今日のお題は、受講生の方が持ってきてくださった「コード理論大全」です。

あくまで読書感想文としての雑文になりますのでご了承ください。

コード理論大全 

こちらに訂正箇所ケアがございます。

コード理論大全|AFTERCARE|リットーミュージック

合わせて下記もご参考ください。

・P111の表の

bVIIo7→VIIo7

bVII-7(b5)→VII-7(b5)

・P112のテンション

9→#9

 ・P113のテンション

11→#11

ではないかな?と思われます。その他細かいところまではまだ見れておりません。

また、私の解釈が間違っていたら申し訳ありません。

(随時訂正がなされていますので、正規の正誤表ページを必ず優先してください。)

コード関連の専門家が少ない、というものありますし、解釈も様々に近年可能になってきた関係で理論書関連の誤植はどんどん増えていきそうです。

=====

同著を読まれれば、

・音程の名称と意味役割

・和音の構造と機能、種類

・基礎的なアナライズの方法

・基本的なテンションの付け方、モード解釈時や転調時のテンションの付し方

・コードスケールとモード交換の基礎

・コンテンポラリーな和音連結法(当ブログ風でいうと不定調性的進行)の初歩

などが学べます。

内容的には中級者向きです。

音楽関連の専門的な勉強をされている方で、もう一冊別のジャズのコードの勉強本を、ということでお持ちになるのが良いと思います。

また音楽理論の話題を取り上げる、という時も参考になると思います。

 

この本の内容が読解(理解ではない)できない場合は、基礎知識の何処かが抜けてますので、理解の基準にもなるかもしれません。

 

 

こうした書物には、読み進めながらあなた自身の一時的解釈をメモっていくと良いです。

なんとなくの理解で進めてしまうと何となく読み終わってしまうからです。

理論書の読み方は下記に書きました。

www.terrax.site

 

 

下記はランダムに取り上げたトピックです。私がメモするならこんなとこ、の例です。解説ではありません。

 

P23 III 調性内三和声

同著では、自然倍音の話を用いずに、和音の話に入りますので現代的な教材です。

自然倍音の話をして、"メジャートライアドの根拠は、自然倍音列から生まれる"といったんしてしまうと、短三和音の根拠をはっきり明言できぬまま、IImやVImといった基本的なダイアトニックコードを作らなくてはなりません。 

 

 P46の「調性音楽の感じられ方」というような表現は、拙論とも似通った表現であり、大変共感できます。このような曖昧な日本語表現は昔なら許されませんでした。

 

P48に見られるような、f→e、b→cという(トライトーンの解決)のは科学的な根拠ではなく、慣習による刷り込みによって定式化された概念、と理解するとスムーズに読めます。ここに根拠を当てこもうとすると理論沼にハマります。この辺りは当サイトが詳しく語っています。

私見です。

例えば、

G7→Eaug(f,bはc,eにそれぞれ進行している)

などに進ませたとき、トライトーンは一応f→e、b→cに進行しています。

あなたにとってこの進行は解決感ありますか?

トライトーン自体が解決しても他の要素がそれを阻んでいる状況は起こり得ます。

これを低音がEだから、とすると、低音優先の話をしなければならず、結局「自然倍音」の話に行き着きます。

この低音安定の根拠は、自然倍音ではなく、むしろ人の音体験と生育環境の中で育まれていったものかもしれません。

gigazine.net

 

 

では次を聞いてください。

G7-E(#5)-Am7

G7からCM7に行くかと見せかけて平行短調への憂いを持った終止でAm7に向かいます。

今度は解決はしていませんが、"成り立って"います。

G7 E7(b13) Am7と考えれば、ジャズのドミナントモーションです。

さきほどの「G7→Eaug」はこの音源を切り取ったんです。

(正確にはG7 Eaug Am7)

二度目以降きいたときは、このE7への流れにも脈絡が感じられるでしょう。

これが「音楽的な進行感」であり、当サイトで「音楽的なクオリア」と言っている感覚の話です。

 

トライトーン自体が「解決したい、と自主的に思っている」のではありません。

不定調性論は分析理論ではないので、あなた自身の意識がその進行をそのように一時的に解釈してるだけという説明の仕方をしてその感覚を創作に活かします。

これで理論的解釈に真実を求めなくて済みます(理論的解釈に真実はない=解釈者の知覚できる環境においてのみの真実=あなた以外その場の全員耳が聞こえないとすれば、あなたの真実はどの程度真実ですか?)

全て自分の判断で行っていることです。

考え方に同意してくれる人は、ただ考え方/認識状況が似ている、だけです。

それぞれが正しいわけでも間違っているわけでもありません。そのやり方を信じてるならそれで自分の音楽を作ればいいだけです。

 

 

P52 トニックファンクション

ここでは「トニック機能を持つコードの定義は」という記述があります。後半に、サブドミナント、ドミナント他の機能についても記述がありますが、「定義」を付けているのはトニックだけです。

トニック機能を持つコードの定義はメジャーキーの特性音である、"第四音を構成音として含まないコード"です。(中略)I,Imaj7,III-,III-7,VI-,VI-7となります。

他、I6も含む旨が書かれています。

 

またこのfについて、

ただV(CメジャースケールにおけるGトライアド)は後述のドミナントファンクションを持つコードとして分類されるため、この限りではありません。

 

fがドミナントファンクションを持つためには、b音も必要です。この辺は、条件提示の表記が文章内に埋め込まれていたり、前後している関係で一瞬わかりづらいかもしれません。

 

同著にはドミナントとなる条件、定義は文章内にさらりと書いてあります。

それら以外の和音をサブドミナントとしています。この辺りは、著者が何を絶対と思っているかが匂う感じですね。

VIIも限定していないので読者が自在に判断できるようになっています。

 

またVIIbを同著ではドミナントマイナーとしています。

意味としては同じです。

「ドミナントよりも弱いドミナント」

という機能を

ドミナントマイナーと呼ぶか、サブドミナントと呼ぶか、です。両方がごっちゃになった教授法も受講したことがあります。

V7-IよりもIV-Iの方が解決力が弱いので、そういう和音をドミナントに副次するものとして、サブドミナントとする、という考え方もあります。

だからVm系統だけをドミナントマイナーと呼ぶか、VIIbのような7thコードもドミナントマイナーと呼ぶかで意見が分かれます。しかしこの解釈が瞬間的に行動しなければならないような現場で何らかの問題を引き起こすことはないので、自在に理解できるようにいろんな方法論を身につけてみるといいでしょう。その点、同著の表記や理解の仕方は優れていて現代的だと感じました。

  

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P97 使用可能なテンション

テンションは和声に緊張感を与える、という表記があります。

例えばCm7(11)は"緊張"というよりも、もわっとして柔らかい穏やかな雰囲気を私は感じます。それを緊張感というか、柔和感と呼ぶかは人それぞれの感じ方です。こういうところは教材に自分の考えをメモっておけばいいと思うのです。読み終わる頃には自分の思想も少しまとまってきます。独自論はそうして出来上がります

 

下記は同著でのテンションの条件表記のしかたです。

a.調性内の音高である(キーに対してダイアトニックである)
b.いずれかの和音構成音に対して長9度(9th)音程の関係にある
c.同音程のナチュラルテンションとオルタードテンションは同時に使用できない 

これも慣習です。

 

またドミナントのテンションb9,b13は、G7(b9,b13)なら、g音に対してb9th、d音に対してb9thを作ります。

 

同著の考え方ですと、マイナーキーのV7において、♮9thが使用できることになります。コードスケールで考えないからですね。

この辺でシニアの人はお怒りになるかもしれませんが、下記の記事でも書いたように、

ラジオで聴いた曲がカッコよかったので調べてみた!

すでにマイナーでのV7(9)はスリリングアウトするテンションとして、ハイセンスな人にすでに浸透しています(むしろその方が当たり前??)。

もちろんマイナーのII-VではIIm7(b5)-V7(b9)とされる、という表記ももちろんあります。

 

「コード理論大全」でのテンション表の触りですがまとめてみました。

同著にはこの一覧表がないので、各位が作成せよ、ということだと思います。

f:id:terraxart:20190608011825p:plain

同著の特徴としてテンションの区分けが細かい、ということがあります。この辺りはそれぞれの方法論にとっては好みが分かれるところかもしれません。

 

 

P144-256
モード展開時のテンションの考え方など

転調時にコードのテンションの解釈が変わることについて書かれています。

例えば、

CM7 |Dm7 |Em7 |F#m7(b5) |B7 |Em7  ||

という時、三小節めのEm7は続くEm7のキーのIm7です。

 

そして前半はCM7のIIIm7ですからテンションは11のみ使用できます。

しかし転調後のEmのキーから見たら、Em7はIm7ですからテンションとして、9,11が使用できます。

ゆえにこのEm7ではEm7(9)を用いることでCメジャーキーからの流れに一瞬に意表をついて転調するといったことが可能です。

これらがモード解釈の時も活用できる、としていきます。 

 

また後半モーダルハーモニーなども扱われますが、ほんの触りだけですので、ピンときた方は、リディアン・クロマチック・コンセプトやマリア・シュナイダーらの他ジャズ理論を紐解いてみてください。モーダルハーモニー自体をまともに勉強しようとすると、4年ぐらいすぐ過ぎるので、多忙な職業音楽家の方には勧めません。それこそ難解理論は我々アマチュア"理論愛好家"の方のほうが詳しい世界でもあります。

www.terrax.site

 

 
P320 コンスタントストラクチャー

例に出ている、
CM7 |EbM7 |GbM7 |AM7 |
といった進行は「同一和声単位の連続」と拙論でも示すポピュラーな変則進行のアイディアです。

一つの鍵盤を押すとM7が鳴るシンセのプリセットと同じで、和音の響きそのものを単音と考えて弾くようなイメージで 捉えられる感覚の人は用いやすい概念だと思います。

 

P342 コンパウンドコード

コンパウンドコード=合成和音(分数コード)
・コードの転回形(C/Eなど)
・ハイブリッドコード(和音/ベース音)
・ポリコード(和音/和音)

ハイブリッドコードは三度を含まない、と書かれていますが、これはD/Cの時、cの三度であるeを上部に含まない、という意味です。

 

同著でも「曖昧なサウンド」といった表記がありますが、最終的にはあなた自身がはっきりと「この和音は○○○○な雰囲気を持った和音だからこう使う」と断定して用いられるようにしてください。本当に「曖昧なサウンド」にしか聞こえないうちはその和音を自分の音楽表現で使うのは難しいと思います。

 

 

ポリコードの考え方(不定調性)

一部のマニアックサウンド以外の一般のポピュラー音楽ではまず使いません。

 

いきなり「よし、サビはポリコードだ」みたいに発想はしません(してもいいけど)。

 

「いつ自分がそれを使えばいいか」をイメージできるまでは、エンディングコード、最初のコード、サビ前のコード、といった楽曲部分でこうした和音を作ってみるといいでしょう。

例えば、 

Dm7  |G7  | CM7
という進行の時、

Dm7 | G7  |Eb/CM7
としてみるとか、Cリディアン#5を想定して、
Dm7 |G7 | Abaug/CM7
にするとかです。こうしたサウンドを出してみて、「あ、自分にはいらね」と思っているうちは要りません笑。

実際こうした和音を情感的に理屈立てて繋げるという方法論を示すことはなかなか難しいです。

その一つが不定調性論的思考ですのでご興味のある方は、当サイト他記事をご覧いただけますと幸いです。

  

同書の後半に書かれているような和音の感じ方が自分にとって普通だな?って感じたらあなたには機能和声よりも不定調性論的思考が合っているかもしれません。

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というわけでご紹介いただいた受講生の方に感謝しつつ、著書購入も完了しました。

 

どうぞ宜しくお願い致します。