朝職場の準備で作業中に聴いた曲のキーボードソロがカッコよかったので。
Tom Misch - South Of The River (Official Audio) - YouTube
たぶん以前も聴いた。
2:16ぐらいからのシンセソロを急に調べたくなってしまいました、先生病です。
ベースとなるコードは
Dm7 |G7 |Gm7 |A7 |
です。テンションが乗って、
Dm7(9,11) |G7(b13) |Gm7(9,11) |C7(9,#11) A7(b13) |
になったりしています。
ギターのカッティングが動きやすい形をとるとこういうテンションだらけのコードネームになるんですが、最後の|C7(#5) A7(b13) |ここはA#aug Aaugと2-4弦をスライドさせても、C7(9,#11) A7(b13) |の解釈になるので、この辺はコードを大枠でとらえる海外ならではですね。
マイナーキーなのにC7(#5)が鳴る。
ここはA7の領域ですから、USTにしたとしてもA7における13th=f#が鳴ってはいけません。でもC7の#11はf#ですよね。
時代はこれをこう呼んだんです。
Acid...
いやぁ、酸味が効いていますよね。
ぼくらもこういうマイナーキーの♮テンションを聴いた時、「わぁ、アシッドだぁ」と云うことを覚えました。そしてなんでもかんでも"いけないテンション"を使っては、
これはアシッドなのだ
と嘯くわけです。
もともとのアシッドジャズはちょっと病的だったんですが、少しずつドライになり、聴き手も慣れてくると、演じ側が神妙に難しっぽいことをしていても客席が盛り上がってしまうので、こうやってどんどん軽いノリに入り込んでしまって、しまいにはそれらのバンドをコピーする世代が普通のポップで使ってくるので、当初のアシッドが持っていたヤバさ、みたいのはどんどん摩滅して、普通にポップになったんですね(シューゲイズしてても成り立つ音楽の完成)。
こういうナチュラルテンションをOKにしてしまうと、
Dm7 |G7 |Gm7 |Bb7 A7 |
これの変化形とも解釈できます。
BbaugはBb7(b13)でもあります。この場合スケールはリディアンb7になるのでb13とか弾こうものなら、専門学校の先生に理論書を見直してこい、と言われます。
しかし時代にはacidがあるのです。こういいましょう。
「これはテンションではなく酸味なのだ、テンションと聞くから不協和なのだ、ちょっとピクルスの効いたハンバーガーだと思え」と。
あとは好き・嫌いです。
調べたらなんか完コピしてる人いるやぁーーん。
South of The River - Tom Misch (Rob Araujo Solo Transcription) - YouTube
原曲のキーボードはRob Araujo。
我らがスペクトラソニックスのvにも出てたやぁーん。
KEYSCAPE - Rob Araujo: Hike - YouTube
プレイをこまかく見ていくと。
South of The River - Tom Misch (Rob Araujo Solo Transcription) - YouTube
ちょっとこのyoutuberさんとコード解釈が違うんですが・・ほぼ"同じ意味"なのでご了承ください。
0:08ぐらいのDm7前のa♭はA7ならM7になって、一番使っちゃいけない音ですよね。これをカラートーンと言いますと、ここで個々人で概念を見つけて頂きます。これを聴くと
「くぃッと絞り込んで出る残り音」
みたいな感じしませんか。アシッドであり緊張感を付けてくれますね。
0:17のDm7のいきなりのc#もディレイドフレーズです。
これおそらくまえのA7のM3を作ったフレーズの"揉み返し"を残してDm7に持っていった現代的フレーズです。
肝心な小節の頭の音をわざと外してから戻す、という技です。
目立ちます。スリリングになります。
これをそれっぽく聴かせるためには、前後である程度アウトしておかないとうまくなじみません。なかなかできないです・・。そのあとにすぐcに戻してます。
0:12あたりのG7(#5)/Bのフレーズはパーカーリックの展開形です。みんな練習しました。このフレーズ笑、そしてここでもコードチェンジの際にg-f#→fと流れてますね。
これもパーカーのクロマチックアプローチの典型です。耳が喜びますね。
0:24のA7(#5)でf#とg#が鳴ってます。
これってコードの解釈をBb7 A7にしているからだと思います。コード表記とは違っても、Imに戻るのにVIb-Vなんてあたりまえでしょ?このくらい許容できる人のあたりまえのリハモです。これも結局A7に半音で結びついていくだけです。
次の25小節目のDm7の
c#-e-e♭-c#-dもダブルダブルなクロマチックアプローチで、これもパーカーリックなんですよね、ジャズから見ると・・。
一瞬Dm7でM7とb9が鳴っててエグイな、って思えるかもしれませんが、これも
Dm7 |
を
Dm7 A7 Dm7 A7 |
みたいに想定して弾いているジャズメンの感覚。ジャズの方言。です。
日本人のコブシみたいなもの。慣れるまでひたすら真似しないと身につきません。
で次の小節のa♭はb5thのブルーノートです。
0:33ごろの32小節のDm7に戻るところも注目しましょう。
ここだけコードにすると
A7(9) Dm7
となります。これも昭和平成なら先生から怒られるやつでした。
かならずb9になっていないやつは落第、と言われるからです。
でもこの曲の場合、ここまでさんざんA7(13)を使ってきているので、ナチュラルテンションが酸味の役割を果たしているので十分面白い響きになっています。
こういうのは計算しているのか、こういうプレイをするからこの人をこの曲に選んだのか。とにかくプレイヤーの音楽力。
35小節目ではAaug、Gaugの拡張UST(不定調性論用語)が使われていますね。
0:42でのDm7に戻る前に、g-f#-f-bと流れて次のDm7の頭が休符になっています。これはDm6にして6th残しでフレーズの違和感を印象付けるやりかたです。
で41小節目のDm7ではまたオルタードがトライアドの三つの連鎖で
Baug-Aaug-Gaug
と流れていきます。これはA7のUSTでもあり、G7のUSTでもある
「ピヴォットUST」
なので、Dm7を無視して笑、前の小節のA7--次の-G7への流れをaugでつなげているようなイメージでしょうか。または勘。
あと面白いのが0:51からのペンタトニック的なフレーズ、A7でもDm7でもG7でも関係なく攻め込んでいく、Ebマイナーペンタトニック。
これは逆に
「ピヴォットペンタトニック」
と言っていいのではないか、と思います。
こちらで見て頂く通り、I7ではIV#マイナーペンタとVIbマイナーペンタが使えます。
このときG7でのVIbマイナーペンタがEbマイナーペンタです。
で、A7でのIV#マイナーペンタがEbマイナーペンタです。
だからA7---G7と移行する状態においてはこの二つのペンタを使ってよい、ということになります。
さらに、先の参考ページの通り、
IImでIIbマイナーペンタ=I#マイナーペンタを多少の不協和度を用いて使ってよい、という表も作れるので、結果的にDm7でd=IからみたIIbマイナーペンタである、Ebマイナーペンタを使うとスリリングである、みたいな理屈はとうにバークリーが確立しているので、この辺はポリペンタトニックの手法として好きな人は研究して頂ければいいのではないか、と思います。
この曲ボーカルのTom Misch自体の音程感が色々やばいです。これ、わざとやってるんかな、という音の動かし方してます。