音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

シンプル イズ ベストではない?〜音楽制作で考える脳科学21

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前回

参考書は「自分では気づかない、ココロの盲点 完全版 本当の自分を知る練習問題80」です。同書引用はこれで最終回です。

 

一般に脳は、簡単なものが好きです。難易度が低いだけで「正しい」と勘違いしがちです。(中略)発音しやすい企業名は、株式公開の際に投資されます。

この傾向は、思い出しやすいものを正しく感じたり(利用可能性ヒューリスティック)、何度も聞いていると正しいと感じたり(単純接触効果)することに並び、脳の判断に見られる典型的な真実性の錯覚です。

流暢生の処理-Processing Fluency-

 これらの論拠を流用する際は同書の紹介論文を当たってください(私ちゃんと読めてません)。

プレゼンテーションで堂々と流暢に話す人と、今回が初めてでたどたどしく話す人では印象はどう違うでしょう。明らかに流暢に話す人の方が印象が良いでしょう。

もちろんそれによって横柄な感じになるとまた話は別です。

なかには初心者を応援したい!という方もおられるでしょうが、大方の判断、ということでご理解ください。

 

しかし「流暢だから正しい」とは限りません。

詐欺師がこれをやったら信じてしまう、ことを意味します。

不定調性論では心象を最も重要視する、と同時に「心象を鍛え上げろ」みたいなことも言っています。

恋愛などでは上手に騙された、ことが結果人生を幸せにしたりもします笑。

正しさの中でのみ生きられないからこそ、人はいかようにも解釈を作り上げられるのだと思います(情報フレーミング)

 

脳が考えている以上、全て正しく核心をつく、ということはできません。

だからこそ聡明なインフルエンサーですら炎上するのでしょう。彼らが愚かなのではなく、彼らの判断に価値をつけ過ぎている周囲の人が問題です笑。

私が良いことを言ってもあまり重要とは感じないでしょう笑。

特に私のようなものが発する情報は、コイツより上だ、と思う人が、自由に「着想」として利用していくことでしょう。つまり、

参考にしたのではなく、そこから新たな着想を得た

みたいな感覚になり、自分でより深いところを探り、より権威のある記事をシェアすると思います。

これがネイチャーの論文記事であれば、参考にして皆にシェアするでしょう。それが権威の力であり、脳の仕業です。

"コイツの考えをもうちょっと発展させて、自分なりに発信しよう"って思うので、引用したという意識すらないわけです。だから影響を受けたとしても後で覚えていないということが起きます。

そういう意味でも、ちゃんと研究してちゃんと権威の下で発表するということが学問には必要な訳です。

学問的情報、ブログ的情報、メディア的情報、サイエンスフィクションなどがごった返しているのが世の中の常ですから、自分がどこに属してどんな情報を発するかという自由がある代わりに、自分がどのような扱いをされるかも、責任を持たなければなりません。

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同時に心象をしっかりポジティブに受け止められれば、たどたどしく話すプレゼンの中にも面白い情報を獲得できるかもしれません。

「流暢 イズ ベスト」なのではなく「流暢 イズ ベストだと脳が思う」だけではないでしょうか。

 

また逆に

終わっていない仕事の内容は、完了した仕事の内容よりも2倍も思い出しやすいことがわかりました。(中略)

目標に向かって課題をこなしてる最中は緊張感があるため、心のどこかで課題を気にかけているのに対し、目標が達成されると緊張感から解放されて、記憶が褪せてしまうのです。

--切りのよいところで仕事を切り上げるよりも、次の仕事に手をつけてから帰宅したほうが、翌朝にスムーズに仕事を始められます。

(中略)

--新しい仕事の手順を人に説明するときには、事前に多くを説明しても記憶に留まりにくく、仕事を多少こなしたあとで説明したほうが相手によく伝わります。

仕事を中途半端な状態で放置するのは勇気がいりますが、実際には、無意識の脳回路が代理で作業してくれるので、仕事の効率が高まるのです。 

ツァイガルニク効果-Zeigarnik Effect-

という話もあります。

つまり

たどたどしくしか話せない人は、ポイントを絞り、流暢に話そうとせず、聞き手に何か作業をしてもらったり、参加型にして何かを行なっていただいたあとで短い時間で話すようにしておけば、流暢に話すプレゼンより印象に残るかもしれません。

何でもかんでもプレゼンの極意などに従う必要はなく、クリエイティブに自分ができることを努力して見つけていく、と言うのが楽しいのかも。

 

特に参加型の作業が中途で終わるようにしたり、プレゼンの最後に答えを言うようなタイプにしておくと、たとえプレゼンがたどたどしくてもみなさん最後まで集中するのではないでしょうか?

 

また作曲なども、いきなり音楽理論書をひたすら学ぶのではなく、最初簡単な文章にメロディを乗せてもらったり、白鍵のメロディに、自由に白鍵を三つ押さえて和音をあてがってみたり、といった実際の作業を織り込んで行ったほうが楽しいし、説明も頭に入りやすい、ということになります。

 

書籍より講演が、講演よりyoutubeが脳にとって便利だと言うこともわかります。

書籍だけでは視覚聴覚がありませんし、参画できません。講演は一度きりで途中でやめることができません。youtube/ライブは五感を刺激し、参加できて、途中で終えられ、いつでも再開することができます。

分かりやすさ、というのが権威という肩書きからは一番下位なものが一番理解されやすいというのも面白いですね。

 

また「プライミング効果-Priming Effect-」も覚えておきましょう。

以下は下記サイトからの引用です。

A「シャンデリア、って10回言ってみて!」

B「シャンデリアシャンデリアシャンデリア……」

A「じゃ、毒リンゴを食べたお姫様の名前は?」

B「シンデレラ」

A「ぶ~、白雪姫!」

drm.ricoh.jp

この効果のすごいところは、次の実験からも明らかです。引用は上記サイトです。

被験者にクッキーを食べてもらうとき、

グループA:部屋には洗剤のかすかな香り

グループB:部屋は無臭

【結果】食べたあとで机の上の食べかすを掃除する人が、グループAはBの3倍だった。

片付けた当人たちに聞くと「なんとなく」なのだそうです。

ぞっとしますね。人は自分の意思で生きていません。

外界との関連性で生きています。

 

 

プライミング効果とは、先行する刺激(プライマー)の処理が後の刺激(ターゲット)の処理を促進または抑制する効果のことを指す。

プライミング効果 - 脳科学辞典

 

 

人を威圧する人は、威圧することによってその後ちょっとした気遣いを見せると信頼をされた経験から、初対面で威圧するようになってしまったのかもしれません。

電話の声がすごく素敵な人がいます。その人はひょっとすると最初に「電話の声が素敵ですね」と言われたが故に、そう信じて今の自分を作りあげたのかもしれません。

もちろん電話の声が素敵だからといって、全てにおいて聡明とは限りません。

人を威圧する人が常にそういった高圧的な存在であるとも限りません。

 

何がその人の今を作っているかわかりません。悪い人も良い人も、自分でそれがわからないまま自分を構成している、としたら。

 

プレゼンでも真っ赤な服を着ていくと、相手の戦闘意欲を失わせてつい従ってしまう効果があるのかもしれません。カズレーザーさんの言うことをつい信じてしまうのもあの赤のジャケットの効果もあるのかも。他のコメンテーターとは違う、という効果も出せています。

 

シンプル イズ ベストと言うのは論理としてベストなのではなく、脳がシンプルを好むからベストに見えるだけ。

シャンデリアとシンデレラの答え同様、

そうなるべくしてそうなる  is  脳にはベスト

なのでしょう。

 

脳もそもそも不完全な組織でありながら、生きやすさや分かりやすさを求めるが故に、錯覚という現象が起きているのだとしたら。

 

答えがいつも人間が理解できるシンプルさに相当している、とは限らない、となります。

 

だから理屈がわかりやすいかどうかではなく、本当にそうかどうか??と言うことを一旦冷静になって考える必要があると思います。

 

つい胸キュン!!!となったらそれは錯覚です笑。

深呼吸して冷静に考えましょう(無理だけど)。

 

深呼吸すると数秒で怒りは収まるそうです。脳は怒りの処理にタイムラグがあるのだそう。だからわめき散らす前に数秒待つとだいぶ怒りは静まるそうです(無理だけど)。

 

無我の境地って矛盾の境地。

 

脳の曖昧さについて考えさせられる本でした。

 

量子力学の答えがシンプルなものであると証明された時、本当にシンプルイズベストであることが証明されるのでしょう。

 

宇宙の答えが出るまでは「脳が単純を好む」という話を覚えておいた方が良いのかなと。

 

池谷先生の名言を最後に改めて。

最大の他人は自分なのです。

自分で書いてきたことが自分に応用できない理由もこれでわかります笑。

自分のことがよくわかりません

 

 

次回から脳の機能について、音楽制作や創造性と絡めて考えていきます。

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