その1はこちら。
アラン・ホールズワース神の伝説のREHビデオ~スケールチャートを自分で作ってみました。ちゃんと元祖のブックレットを参照しています。
ちなみにこれらのモードを実際どんなコードでどういう風に使うか、ていう一番肝心なことをビデオでは触れていません(爆)。
そこで先ほどのページのような結論になります。このチャートは覚えるだけ覚えて、あとはだいぶ感覚なんだ、として割り切ってください。
だって最初のscale1とチェレプニン9音スケールを覚えたら、あとは指ずらすだけなので、いちいちこれらのスケールを"頭のなかで切り替えて"弾く必要がこの時点ではもはや必要ない、からです。リック、とかの紹介ももともと嫌いっぽかったし。
ですので当時謎だったスケールチャートの読み方、理解の仕方だけ書いておこうと思います。これを"使って"彼はソロを取ってる、とか思わないように(笑)。
例えていうなら瞬時に頭の中で切り替えられるくらい鍛錬が行き届いてます。なんなら一秒ごとにチャーチを切り替えて、4つ先まで想定して弾いてる、ぐらいの感覚になるまで同じレベルで考えなくて良いと思います。
普通そこまでいかないんで「ホールズワースもどき」になってしまうのだと思います。
何か方法論があるのだ、と思ってしまうとそこで終わりです。
ひたすら鍛錬鍛錬鍛錬鍛錬。体に染み付いて、応用して、発展させて、その先で感覚を駆使して弾きます。という理解で。
VHSだよ!!注意
Scale1 Cmajor D minor G7=Dドリアン、Cメジャースケール
CM7(6,9)
Dm7(9,11,13)
G7(9,11,13)
↑のコード群は教則ブックにチャートといっしょに書かれていて最初は何だかわかりませんでした。
前ページでも書いた通り、これらを即興的に展開できるスキルを長年かけて身につける必要があります。
Scale1はCメジャースケールのポジションチャートです。ギター弾きで各種セッションギターをバリバリこなしたい、という人はこれを12キー覚えてください。
バンドギタリストの人はそこまで必要ではありません。バンドの曲がカッコ良く弾ければよいです。
とりあえずこのハ長調のチャートを頭に入れてしまえばあとは左右に移動するだけなので簡単です。
これは例えば一弦3音でのモードのポジションフォームの覚え方です。
(0-12、12-24フレットは同じ位置です。見やすくするため上記はエオリアン、ロクリアンをハイポジションで表記してます)
ギターではこのポジションの「型」がモードのフォルムそのものになります。
この「型」をモードと関連付けて共感覚的に覚えてください。
当然ルートの位置も把握しないとモードの活用は遅くなるでしょう。四の五の言わずに数か月かけて覚えてしまいましょう。覚えることは力業で。
体得したあとは、「モードポジションを考えずとも弾ける」ようになるまでひたすら瞬間的に行動しなければならないような現場をこなしていくことで、「感覚的にモードポジションから外れたり戻ったりできる」ようになります。これがホールズワースのアウトの原理原則です。指にポジションが体得されているのでインとアウトが自在にできるわけです。
このチャートで
Cアイオニアン
Dドリアン
Eフリジアン
Fリディアン
Gミクソリディアン
Aエオリアン
Bロクリアン・・・モードが弾けます。まあ、、当たり前です。
CM7(6,9)、Dm7(9,11,13)、G7(9,11,13)
はこのモード上で必要なテンションを表記しています。
その他もちろん、Em7(11)、FM7(9,#11,13)、Am7(9,11)、Bm7(b5,11,b13)も該当します。これ以外ビデオでもたいした説明がありません。ただこのポジションを広く活用して、スキッピング、ストレッチを駆使して変態的なソロを作る譜例などは紹介されていましたね。それも一つだけ。
Scale2 Dminor(maj7)=Dメロディックマイナースケール
Dm6(M7)
A7(9,11,#5)
G7(9,#11)
C#7(b9,#9,b5,#5)
同様にこれはDのメロディックマイナーのポジションです。なんでDがルートかというと、上の四つの活用コードはCメジャーの時のIIm6,VI7,V7,IIb7でセカンダリー系のコードになります。Cメジャーのキーでよく出てくるコードに対応させたチャートなんです。それをcの位置を下記のように1つずらすだけでこのチャートが出来ます。
これだけでいきなり活用できるコードが広がるし、覚え方も簡単だし、便利です。
Scale3 A minor(maj7,b6) =Aハーモニックマイナースケール
Am9(M7)
E7(b9,b13)
そしてハーモニックマイナースケールのスケールチャート表です。これはホールズワース氏が書いているように例えばキーAmにおける、AmM7系のトニックコード、または、V7(b9,b13)系のドミナントにおけるオルタードな解決感を作り出すいわゆるハーモニックマイナーパーフェクトフィフスビロウスケールまたの名をフリジアンM3、フリジアン#2、フリジアンドミナントスケールなどと呼ばれるものです。
普通のナチュラルマイナーは最初のチャートscale1を使えばいいだけなので。
これはscale1の7度を右に動かせばこの形が出ます。
とにかくメジャースケールだけでも完全に叩き込んであれば、その後、
「ここがルートでここが9thだな」
とかサクッと入ってきます。コーダルなソロがとれるようになるのも早いです。
Scale4 Aminor(M7,#11)=Eハーモニックメジャースケール
Am9(M7)
EM9(9,#11,13)
B7(b9,13)
ハーモニックメジャースケールはジャズのスケールというより、クラシックの和音解釈がスケール化されたものです。リディアン・クロマチック・コンセプトでも「リディアンディミニッシュ」として出てくるスケールです。
これはハーモニックマイナースケールのように増二度の跳躍を含むスケールです。慣れないとごっちゃになるので、、先に有用性が高いハーモニックマイナースケールを十分に覚えさせてからこちらに取り組むといいでしょう。
これはscale1の6度を半音下げた形で覚えます。
Scale5 G#(Ab)diminished
そしてディミニッシュスケールです。この形は二種類しかありません。
半音全音のセットで考えるコンビネーション・オブ・ディミニッシュ(コンディミ)と、全音半音で考えるファンクショナルディミニッシュです。呼び名はいろいろあります。前者をハーフホールディミニッシュ、後者をホールハーフディミニッシュと呼んだりします。
(half-whole...)
コンディミはI,III,V,VIIbを持つのでV7(b9,#9,#11,13)的なコードスケールとして使われます。またファンクショナルの方は、二つのダイアトニックコードを接続する際に、パッシングディミニッシュとなり、、アウトしながら繋げていくことができます。
Scale6 Bb Jazz Major(#5)
BbM7(#5)
D/Bb
F7(b9)
そしてここからがホールズワースらしいコードスケールのチャートになります。
このジャズメジャースケールと題されたスケールは、メジャースケールとハーモニックメジャースケールが混ざっています。これを覚えてしまえば楽です。#5はパッシングトーンとしても活用できるので、、通例M7コードでもM7(#5)コードでもどちらでも使えます。またV7(b9)でも使えるスケールとなっています。ただしこのスケール自体は9thも持っているので、メジャー系の曲で用いると違和感は最小限になります。
Scale7 C Jazz Dominant(addM7)
考え方は同じです。これはミクソリディアンにM7がくっついたスケールポジションです。
通利のメジャースケールの状態では、m7はM6-M7の間をつなぐ音として機能します。パッシングノートとして使います。ミクソリディアンで考えると、m3rdがパッシングノートとして入ってきます。
addM7となっていますのでたとえば、
IM7-I7-IVM7
等の時に一気にこれで弾き倒すことができます。
なおこの際にでもM7とm7の位置関係を良く把握していないとコントロールできません。
Scale8 B Jazz Minor(addm7)
同様にこれはドリアンにM7を付けたスケールとも言えますし、メロディックマイナーにm7を付けた音階とも言えます。上のチャートでいうと、
Bドリアン+M7
または
Bメロディックマイナー+m7です。
マイナースケールとして使いやすいのはドリアンですから、ドリアンにパッシングノートとしてM7を付けたポジションと覚えればいいでしょう。
大したことないではないか、と思われるかもしれませんが、ドリアンにM7を加えるだけで、絶妙にアウトし、スリリングなスケール展開となります。この微細な差が演奏に
「いかにもなドリアン」感
「いかにもなメロディックマイナー」感
を失わせ、サウンドがポジショニングによって独自性を増します。
半音が連続する、というホールズワースの独自のスケール論が、もし本当にサウンドを生んでいるなら、まさにバークリーメソッド的な「半音が連続しないこと」というスケール論理を超越してくるわけで、ますます不定調性的な「独自性をしっかり育成する事」に注力する事で生まれる本来求めるべきだった個性の発見に近づきます。
以下のスケールも全て作りましたので列挙しておきます。
Scale9 A Jazz Minor (add♭6)
Scale10 Symmetrical
C,Cm
E,Em
G,Gm
Ab,Abm
シンメトリカルスケール。『近代和声学』『ブルーノートと調性』では、チェレプニンの9音音階などと呼んでいましたね。近東地方の音楽が五つの五音音階に整理できることからペンタトニックスケール音を転回してすべて組み合わせてこのスケールを作ったそうです。
チェレプニンスケール構造の詳細は下記より(アマゾンに飛びます)。
ブルーノートと調性 インプロヴィゼーションと作曲のための基礎理論(CD付)
Scale11 Cb Jazz Minor(add#11)
Scale12 C Jazz Dominant(addm3 & M7)
Scale13 C Jazz Major(add m3 & m6)
Scale14 C Dominant(#9)
Scale15 The Whole Tone Scale
とにかく特徴的なのは、「半音を連続しない」というジャズ理論のセオリーを違えてチャートを作っている事です。
この考え方はスピードプレイを行うホールズワース神だからこその発想と言っていいでしょう。ただしホールズワースはII-V-Iなど用いないのでこうした発想が通例のスタンダードジャズの演奏において齟齬が出ない、というだけです。
この考え方を一般スケール論にすると、
たとえば、Dm7-G7(b9)という進行があった時、
Dm7=Dドリアン=Dm7(9,11,13)
G7(b9)=GフリジアンM3=G7(b9,11,b13)
ですが、この二つのコードを一つのスケールで弾こうと思うと、この二つのモードを合体させて弾けるような一つのモードを作ってしまえばいいわけです。
Dドリアン=d,e,f,g,a,b,c
GフリジアンM3=g,a♭,b,c,d,e♭,f
です。
これを全部キーの元であるcを中心に並べてみましょう。
c,d,e♭,e,f,g,a,a♭,b,
となります。
これでたとえば、Dm7、G7で可能な限り共通して弾きたくない音を決めます。
私なら、aです。
※Dm7のとき、e♭はd音の半音上だから弾けないのではないか?
→もしこのDm7がII-Vを組んでIに解決するなら、これはドミナントモーションのときであるから、このII-Vの空間は完全にドミナント化するので、多少の浮遊感やアウト感はあってもいい。a♭は五度音aの半音下なのでOKとする。これは同様にG7の時のcにも該当する・・・適切な個人の判断にゆだねる。
これを考えて再度スケールを構成すると
c,d,e♭,e,f,g,a♭,b,
こうなります。
これをチャートにしてみましょう。
こんなモードになります。
これを新たに覚えてしまって、Dm7-G7でひたすら速いパッセージを弾けば、
IIm7(9,11,13)-V7(b9,11,b13,13)
的なナチュラルテンションの進行は網羅できます。いちいちIIm7-V7で煩わしいコーダルチェンジをしなくて済む。というわけです。
ここであなたは迷うかもしれません。
えー。。新しいスケールおぼえて、変なソロ採れるようになるのはありがたいけど、なんか一般性からかけ離れそうだなぁ…。
そうなんです。ホールズワース神は、そこ(一般性)に見切りをつけ、自分の音楽に邁進したんです。ビートルズほど売れなかったかも、ですがビートルズと並ぶ神になったと私は思います。
独自性に走る、というのはとても勇気が要ります。個性個性って軽々しく言うな。
その個性のためだけに極めなければならない要素が沢山あって、汎用性からどんどん遠ざかります。やらなくちゃいけないことが凄すぎて個性に走れない、というのが本当のところです。若者に個性がないわけではありません。探求が足らないだけです。
そして探求したら非一般人になる、という矛盾を孕んでいます。
「個性的な社会人」は稀有です。個性的か社会的か選ぶのがやっとでしょう。どちらになってもとにかく研究は程々に、頑張って練習鍛錬しましょう!
<参考>
■REH VIDEO Allan Holdsworth Booklet