2017-9-4→2019-8-17(更新)
前回の記事です。
マザーメロディに対するハーモナイズ
ホールズワースのもう一つの魅力、ハーモニーについて考えてみましょう。
これは不定調性論の用語におきかえると、"マザーメロディ"を用いたハーモナイズの方法論になります。
たとえば、ドーレーミーという"メロディ"に対して、それぞれコードを当てはめます。
普通は、
CM7-Dm7-Em7とか
Am7-Bm7(b5)-E7とか、
になりますよね。
これを、この概念そのものを拡大させて、
D7-Fm6-B7sus4
とか、
B7(b9)-A7sus4-G7(13)
というように、調に規定されないヴォイシングでメロディをハーモナイズしてしまいましょう。
自分の感覚に合ったコードをどのように使うか、というところを研究するわけです。
コードの調や機能で連鎖させるのではなく、トップノートの流れを軸に響きを連鎖させていきます。とても抽象的なコード進行になります。
彼のハーモニーは大きな手を活かした、ストレッチフォームで押さえられていきます。
ギターのフィンガリングでは、横に広げれば広げるほど、サウンドがぶつかります。あのぶつかりがいいなぁ、と思ったら、もう虜になるのではないか、と思います。ただし簡単には弾けませんが。
また普通のフォームではなく、極端なスプレッドヴォイシング(調べてね)がお好みのようです。ふわりと、広がる空間のあるサウンド。あれだけソロが崩れを表現しているのに、ハーモニーはまるで雲をつかむようにふんわりです。
先の、
B7(b9)-A7sus4-G7(13)
は、不定調性進行です。独自に定めた用語で言いますと、
動和音→静和音→動和音
という流れの動進行連鎖です。
こうしたコード進行の時は、ソロは、
BフリジアンM3→Aミクソリディアン→Gミクソリディアン
となるのでしょうが、これで音楽性を失わず、抽象的ストーリーを作りながらソロをとり続けるられるようトレーニングします。最初はスケールを覚えますが、身体に沁みつけて、フレットを見なくてもポジショニングできまるまで練習(第一段階)して、それが出来たら次にスケール自体にも考えの中でとらわれないように弾いてみます。
それでだいたいイメージと演奏が合致するまでひたすら練習するのが第二段階です。
だいたい第一段階で覚えられず、ポジショニングできずやめてしまいます。
もはや超能力ではないか、と思うからでしょう。
それが出来たら、最後はコードすらも考えずに流れの中で「崩れ」を弾きます。
前回のページ参照です。
これが一人でできれば良いのですが、難しければ、ボイトレ同様、トレーナーをつけて一緒にやってください。 練習は一人ではできない段階/精神状況の時もあります。
部分的不定調性進行~どこまでが原曲か
その手始めとして「部分的不定調性進行」の利用をお勧めします。
たとえば「枯葉」であったとしたら、通常は下記のコード進行になるでしょう。
Cm7 |F7 |BbM7 |EbM7 |Am7(b5) |D7 |Gm7 |G7 |
Cm7 |F7 |BbM7 |EbM7 |Am7(b5) |D7 |Gm7 |Gm7 |
Am7(b5) |D7 |Gm7 |G7 |
Cm7 |F7 |BbM7 |EbM7 |Am7(b5) |D7 |Gm7 |Gm7 |
それでたとえば二小節目のF7ですが、メロディはEb音です。そこで、Eb音を持つ特殊な和音をセッティングし、それを全体のF7に反映させます。
Cm7 |EM7 |BbM7 |EbM7 |Am7(b5) |D7 |Gm7 |G7 |
Cm7 |EM7 |BbM7 |EbM7 |Am7(b5) |D7 |Gm7 |Gm7 |
Am7(b5) |D7 |Gm7 |G7 |
Cm7 |EM7 |BbM7 |EbM7 |Am7(b5) |D7 |Gm7 |Gm7 |
というようにします。
EM7は反則じゃないか?とおっしゃるかもしれませんが、それは個人が定めたルールがどの範囲が利用可能とするか?を考え、実行します。
あなたの感性が「良し」とするなら使ってください。または自分の和音に変えてみてください。 これが独自論、という思想です。誰かに薦める必要はありません。
ホールズワース神はそれを極めた人でした。彼もあえて人に自分のやり方を教えようとしたりはしませんでした。
音楽的にちょっと変な印象を覚えるかもしれませんが、それは「枯葉」と云う曲の原曲の既存の感覚に縛られているからです。
だって「枯葉」じゃん、「枯葉」っぽくなきゃ変だよ。
という常識からどこまで自分を解放できるか、です。
ストレッチみたいなものです。もうまがんないよぉー。の先へ。
「どこまで肥大させたら『枯葉』でなくなるか」
は、教科書や先生、知識人や人間国宝が決めるのではなく、あなたが自分に決めるんです(独自論的思考)。
またAm7(b5)-D7というのは、結局D7ですから、ちょっと知的にDオルタードドミナントスケールから作れるEbmM7を長めに配置してみます。
Cm7 |EM7 |BbM7 |EbM7 |EbmM7 |% |Gm7 |G7 |
Cm7 |EM7 |BbM7 |EbM7 |EbmM7 |% |Gm7 |Gm7 |
EbmM7 |% |Gm7 |G7 |
Cm7 |EM7 |BbM7 |EbM7 |EbmM7 |% |Gm7 |Gm7 |
だいぶ雰囲気が、ぽくなってきます。
どういうヴォイシング?
で、この先、があります。これは別件ですが。
C7M7
とか
Cm7(10)
とか
CM7(sus4)
とか、貴方自身がコードネームにないサウンドをモードから作る楽しみを持てる人なのかどうか、ということにもなります。
さらに、
c-d-f#-b
とか
c-c#-g-b
とか
もはやコードネームで書き表すことのできないサウンドも生み出せるでしょう。
こその思考システムの詳細を書きました。
たとえば、CM7=c,e,g,bの構成音のうち、一つを半音をあげ、一つを半音下げると、
というような変化をします。これはコード進行を考えているのではなく、ヴォイスリーディングを考えた結果です。
ホールズワースはシンプルなコードでもこのように良く響くヴォイシングをします。
ギターはもともと音がざらっとした響きになり、荒い感じがありますが、彼はそれがどうもお気に召さなかったらしいのです(本当はホーンをやりたかったのだとか=一時期ホーンサウンドが出るシンタックスとかに行きましたね)。
三番目のコードにオレンジの丸を付けましたが、広いヴォイシングと同時に、このようにテンションをぶつけます(半音、全音で接する)。これにより難度の高いフォームになっていくわけです。
もう、こうなると押さえられない人の方が多いwww
最初は、なんであんなコードなんだろうなぁ、とかって思っていたのですが、実際に弾いてみると、私はハマりました。なるほど、コードブックに書いてあるから、それ使わないといけないってことはないんだ!!!
と教わり、また同時に自分の変態和声観も目覚めてしまいました。
貴方自身が弾いて楽しい、美しいと感じるコード進行、自分だけのツボを探す、という作業は、既存の音楽理論を学習する事と同等以上に大切かと思います。
海外のサイトには、ホールズワースを採譜して紹介しているサイトも多いので、検索してみてください。
ホールズワースは何を聴けばいい?
彼の感性的な側面がガーーーっと出るのは、けっこうゲストアルバムだったりします。彼がまだチョーキングしていたころの名盤。これはね。
一曲目がもう人間の手じゃないから。AIだから。AHか。
マーク・ヴァーニー・プロジェクト/トゥルース・イン・シュレッディング
この辺も良かった。神だった。神になってしまった。
ギャンバレとのコラボ。レガートとスウィープの共演ですよ。対比が良いじゃないですか。
カッピカピとモッフモフの饗宴です。
ギャンバレの踵返しエコノミーピッキングのキレがちょっと研ぎ澄まされすぎててヤバい。ガラスの粒入りジュースを飲んでる気分になる。
The Mark Varney Project (MVP) - Truth in Shredding [full album, 1990] - YouTube
ホールズワースのコード進行をとってみた!
<参考>
■ALLAN HOLDSWORTH RESHAPING HARMONY
■REH VIDEO Allan Holdsworth Booklet
■Melody Chords For Guitar by Allan Holdsworth