2017.9.13-2020.1.30更新
The Sixteen Men Of Tain
この記事は別にホールズワース自体に関係はないので悪しからず。
同曲のコードの流れを描いてみます。
<基本構造>
(3/4)Cadd9/F C5/E |(4/4)Bbadd9/D |% |% |×3
(3/4)Cadd9/F Cadd9/E |(4/4)Dadd9/F# |% |% |
Gm7(11) |% |GbM7(#11,13) |% |
DM7(#11,13) |% |Dm7(11) |Bm7(9) |
C69 |Dm7 |
(3/4)Cadd9/F C5/E |(4/4)Bbadd9/D |% |% |×3
(3/4)Cadd9/F Cadd9/E |(4/4)Dadd9/F# |% |% |
(3/4)A Bm/A |C#m/A A |Asus4(9) |D/A |
A Bm/A |C#m/A A7 |Bb5/F |C/F |
G Am/G |Bm/G G |G7(9) |G6 |C69 D69 |Bb69 |
(4/4)DbM7(#11) |% |
1コーラスです。綺麗なコード進行です。
ホールズワースサウンドの特徴はあの大きな手を活用したヴォイシングです。
皆さんはホールズワースのサウンドを、どんなイメージで理解していますか?
単に「なんかふわふわした感じ」だけでしょうか。
少し還元して、僭越ながら全て4/4にして、コードの把握ができるようにしてみました。
Cadd9 |B♭add9 |% |
Cadd9 |B♭add9 |% |
Cadd9 |B♭add9 |% |
Cadd9 |Dadd9 |% |
Gm7 |% |G♭M7(#11) |% |
DM7(#11) |% |Dm7(11) |Bm7 |
C |Dm7 |
Cadd9 |B♭add9 |% |
Cadd9 |B♭add9 |% |
Cadd9 |B♭add9 |% |
Cadd9 |Dadd9 |% |
A Bm7/A |C#m7/A A |Asus4 |D/A |
A Bm7/A |C#m7/A A7 |Bb/F |C/F |
G Am7/G |Bm7/G G |G7(9) |G6 |C69 D69 |Bb69 |
DbM7(#11) |% |
これにより「サウンドのあらすじ」が見えてくると思います。
作者が何を言おうとしているかは別として、あなたが何を感じているか、あなたが感じたものを自分でどう受け取るか、を考えてアートを楽しむのが不定調性論的な音楽鑑賞の方法です。
音楽の知識がなくても感性が豊かなら色々感じることを自分の真ん中に置けると思います。
芸術鑑賞は、過去の伝統美意識を元に照合させて聞くことで価値がわかります。
それはもう確立された方法です。
でもその方法だけでは「本当の自己」は反映されません。
つまり「あなた自身の感想=元来のあなたの感性にどう映ったか」はどこにも鑑賞の文脈に入らないんです。
不定調性論はそこで「本当の自分の感じ方を前面に置く音楽の聴き方があっても良いのではないか」と提案します。
芸術鑑賞のセカンドオピニオンを持つ、のです。
スッキリするのでオススメです。
===
本題です。
積極的に自分のイメージを創造していくと「自分にとっての意味」が分かってきます。
Cadd9 |B♭add9 |% |
Cadd9 |B♭add9 |% |
Cadd9 |B♭add9 |% |
Cadd9 |Dadd9 |% |
この部分は、主要出演者の名前が四人ばーんと登場してくる感じ。物語が起きそうな予感です。9thの感じがキラキラとまたふわっと飛び散るようです。タイトルクリップが見えそう。
Gm7 |% |G♭M7(#11) |% |
DM7(#11) |% |Dm7(11) |Bm7 |
C |Dm7 |
これが映画でいうと、前説。
Cadd9 |B♭add9 |% |
Cadd9 |B♭add9 |% |
Cadd9 |B♭add9 |% |
Cadd9 |Dadd9 |% |
そしてまた次なる共演者のテロップ。次第にあらわになるストーリーの全容。
出演者のキャラなどがかいま見える感じ。
A Bm7/A |C#m7/A A |Asus4 |D/A |
A Bm7/A |C#m7/A A7 |Bb/F |C/F |
G Am7/G |Bm7/G G |G7(9) |G6 |C69 D69 |Bb69 |
DbM7(#11) |% |
そしてこれは映画でいうカット割りによる予告編みたいなものを観せられてる感。
ワクワクだけが募っていく感じ。
OLEOのような曲を高速で演奏された場合、その元曲構造を頭の中で同時進行で流せる人だけがこうした演奏を鑑賞できる楽しみを知ります。
ミュージシャンのための音楽かもしれません。
プロ野球選手の食事、とか、力士の食事とか、とにかく専門職の人のための食事、という感じもホールズワースミュージックにはあります。音楽理解者のための言語がそこにあります。
この人にこそ教鞭に立ってほしかった。
音楽院のホールズワースクラス・・・。いきてー。
===
チック・コリアの「枯葉」が「枯葉」であるのは、原曲の「枯葉」が存在しているからであり、いきなり演奏途中の3:00頃から聴いたら、はたしてそれが「枯葉」であるかどうかがわからない、というようなことに似ています。人は「枯葉だ」と思って聴くことで成り立つ鑑賞世界があります。日本音楽理論研究会で2013年に発表もしています。
Society for Music Theory of Japan
その際、島岡譲先生は「ジャズのアレンジはその全てがまるで違うが、すべてが繋がっている変奏曲のように感じました」とおっしゃられたのが印象に残っています。
「ホールズワースだ」で成り立つ世界もあります。ホールズワースの音楽は、"ジャズという原曲"があって、それらが崩されて、新たな形式になった音楽が持つ自在性を持った形式を「原曲」として、さらにそれをアレンジして、自分の好きなサウンドに出来上がっているので、すごくなんかそれこそクラフトビールみたいな味わいです。
彼自身お酒に縁があって、醸造関係での仕事経験もあり、お酒も大好きでビール器具の特許も持っている彼ならでは。
題名「錫箔の16人」はスコッチ醸造のスペシャルスタッフを指す言葉だそうで、それを音楽生成の伝説の16人に掛けて、このアルバムでも自分だけの世界を構築しています。
ホールズワースの理論的意味はわからなくても、ふわふわとしたギターハーモニーは感じると思います。怒涛のごとく「意味不明」が爆走する感じ。その中で作られる巧妙なアンサンブルは実にシステマチック。
とにかくホールズワースは海外で研究され尽くしています。文字はわからなくてもスコアは世界共通です。ぜひスコアを探して2、3曲弾いてみてください。
それだけでホールズワースの世界観の意味を把握できます。この人の曲は、
"ヴォイシングミュージック"
です。ソロの凄さはもちろんなのですが、その背景となる独自和声の展開が独自すぎるので、独自性とは何か、を学ぶ学生が避けては通れない音楽、という位置付けになりそうです。
不定調性、という点でも極めつくしたアーティストと言えます。
最後にビートルズの名曲「ノルウェーの森」のホールズワースバージョン。
4beatのノリにより、よりジャズのエッセンスが入っています。
ラストのディミニッシュの駆け上りに興奮しかない。彼は求める音楽を作ることはできたのでしょうか?