日本人の心の情景を変えたシンガーソングライター(改訂版)―研究レポート;ユーミン楽曲の和声分析と音楽的クオリアが紡ぐ作曲の手法―
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9.参考文献抜粋資料12
文献14財津和夫の心のものさし-財津和夫対談集-(CBS・ソニー出版,1983)
ユーミン;私自身、ホントに音楽やってるって感覚、デビューのころからないんです。(笑)キザにいっちゃうと、アート表現だと思ってるんです。(中略)あのね、三十センチ四方というスペースを与えられて、たくさんの人がいちおう見てくれるのなら、凝らなきゃソンだなって私は思うの。「別にいいじゃない」っていう人もいると思うけど、だからこそ、幸いにして世に出したものは、自信なしに出したものはないんです。責任全部自分にあるから。だからステージでバカできるんですしね。他人の曲だったら、ちょっとできなかったかもしれない。
(中略)財津(和夫);(前略)逆にユーミンの、コブシじゃなくて、バイブレーションのないとこいいナって、ずっと思ってた。たとえば、ブレッド&バターも。あのビブラートのない歌い方って、意識してやってるんでしょ?
ユーミン;私の場合は、とにかく最初、きれいなビブラートがかからなかったから、ならいっそのことナシにしちゃおうって、無理矢理ナシにしたんです。そのナシにする前に、作品みたいなものはすでに固まっていたんです。ここでまた吹かしちゃうと、才能を固めてデビューしたわけ。(笑)だから、今とデビュー曲と変わってないんです。
(中略)財津;ユーミンなんかの曲を聞いていると、なんかそういう感じがするわけ。たとえば、他の人の歌でイヤだなって思う人に共通しているのは、大人のすごい技巧派でせまってくる人。演歌の、喜びも悲しみもいく年月、みたいなの。(笑)でも、ユーミンのは、喜びや悲しみとかは、あまり介在してこない、すごく人間を離れたところに美しさがあると思うんです。
ユーミン;そうですね。人と人との かかわりあいで、悔しかったりすることよりも、自然の風景、たとえば、あるライティングを見て感動したり、ということのほうが大きいですね。(中略)最近、とくに思うんだけど、すべて印象だと思うのね。たとえば、財津さんとこういうふうに会って、しゃべってて、ある印象というのがこっちに残るとするでしょ?それは、もし、ここの場で会わなかったとしたら、まったく違う印象っていうのが残るかもしれないですよね。でも、この時点の、この印象が、頭の中にインプットされるでしょ?そしたら、これが、たとえば、車が止まって、ギアをニュートラルにした感じと同じだったとしたら、それを歌にすればいいと思うの。もう少し簡単にいうと、映画を観て、ある印象が残るとするでしょ?そしたあ、それをそのまま盗むんじゃなく、それと同じ脳の中枢を刺激する印象や、情景を自分の中で作り出して、書けばいいんです。そのためには、サウンドはこういう響きをしていなければ困るし、ことばは、こういうことばをみつけなければ困るという感じ。なんか理屈っぽいけど、わかります?(中略)だから、印象の強いものが好きなのね。人でも、絵でも、映画でも。まあ、こんなふうにことばにしていっちゃうところが、私のスケールの小さいところだと思うんですけど、(笑)みんな心してやってる人は同じだと思うんですよ。
(中略)私はダリル・ホールが好きなんです。(中略)あとスティービーも、もちろん好きです。音楽、となると、家ではけっこうクラシックなんかかけますね。そのほうが気分いいから。なんかクラシックって温度とか湿度とか光とか人のささやきが音楽になってるような、聞いてて、タイトルのストーリーが見えるような気がしてくるんです。スティービーにもそんなところがあるような感じがするの。今、楽器にしばられちゃってる人が多いでしょ?(中略)今、ギターで作曲したり、ピアノで曲想作るときって、どうしても手の運びや、音質とかにしばられているような気がするの。それはそれでまたおもしろいものができるのかもしれないけど、そういう制約ごとがなくて、勝手にサビのメロディとか意識しないで、書きなぐるように曲を書くのだったらいいのにって思ったりするんです。シンフォニー書いたりしてみたいナって。
(中略)あ、そうだ、映像ごっこってやったことありません?インストものの音楽を聞いて、これはこういうふうなシチュエイションでこういう気持ちでって、発表しあう遊びなんです。(笑)(中略)そういうのでマインドトリップできるとね、人生が十倍楽しめるんです。(笑)旅行になんかなまじ行かなくても、世界中をトリップしちゃうの。そんなときって、音楽やっててよかったナって思うんです。
財津;ちょっと、ボクがついて行けない。
ユーミン;私、イメージ遊びっていうの、しょっちゅうしていたい、想像癖のある子供みたいなもんです。
財津;たとえば、扮装欲っていうか、変身欲っていうのもあるんですか?
ユーミン;それね、以前に自分で分析したんですよね。それで、五年位前、結婚前のかつてブームみたいになったときまでは、私ってすごく頭でっかちだったな、と思うんです。頭でっかちだったまま、なんとなく喝采受けてたんです。で、それに反発してたんですよね。シンガー・ソングライターのソングライターの部分をひきずってたのね。ところが、変ないい方だけど、スターにものすごくなりたくなって、それにはソングライターの部分だけ引きずっててはなれないことに気づいたの。それに気づいたことが、まあ、ハデなステージやり出すキッカケにもなったんだけど、とにかく単細胞じゃないと、人前でワァーッと存在感を出すことができないなって。それこそ、”きつねつき”って感じでできないなって。(笑)だから、ソングライターとしてやんなきゃいけない部分と、人前でやる部分を完全に分けようと思ったんです。
10.参考資料/関連情報一覧
■松任谷由実オフィシャルサイト http://yuming.co.jp/
■松任谷由実;『ルージュの伝言』(角川文庫,1984年)
■田家秀樹 ;『33回転の愛のかたち〜あなたはユーミン?それともみゆき?』(株式会社CBS・ソニー出版,1984)
■恋愛歌人研究会;『ユーミン 松任谷由実の謎』(青谷舎,1984)
■山下邦彦;『甦れ、ユーミン!「シャングリラ」の悲劇とポップスの死』(株式会社太田出版,2003)
■文藝春秋 柳澤健;2011年三月特大号より 新連載 『時代を創った女①』 松任谷由実
■後藤亘;地球音楽ライブラリー 松任谷由実(TOKYO FM 出版,2003)
■松任谷由実;才輝礼賛-38のyumiyoriな話 (中央公論新社,2011)
■茂木健一郎;芸術脳 (新潮文庫,2007)
■酒井順子;ユーミンの罪 (講談社現代新書,2013)
■財津和夫の心のものさし-財津和夫対談集-(CBS・ソニー出版,1983)
■シリーズ「顔」荒井呉服店 荒井芳枝さんインタビュー(2007)
(http://hachimall.net/kao/arai/01/index.html)
■松任谷由実 “ひこうき雲”から40年—NHK 特集まるごと(2013)
(http://www9.nhk.or.jp/nw9/marugoto/2013/11/1119.html)
■さよならファミコン通信 松任谷由実インタビュー'91年12月13日号
(http://sayonarafamitsu.blog.fc2.com/blog-entry-297.html)
■松任谷由実ー歌だからこそ見えてくる”映像”インタビュー(2011年4月5日掲載)
(http://www.excite.co.jp/music/close_up/interview/1104_yuming/?lead=1)
■松任谷由実-VIBE-NET.COMインタビュー(2011年)
(http://www.vibe-net.com/musicinfo/interview/Yuming.html)
■ZIP 松任谷由実×鈴木杏樹 対談(2014.9.12)(動画サイト)
■NHK SONGS Yumi Matsutoya (2009.4.15)(動画サイト)
■コード進行検索サイト;http://gakufu.gakki.me/
■コード進行検索サイト;http://www.ufret.jp/
■コード進行検索サイト;http://music.j-total.net/index.html
■寺内克久;『不定調性作曲技法』(music school M-Bank監修,2014年度版)
(https://ssl.form-mailer.jp/fms/156e2458110312)
■当レポートのコード進行表記・解釈・相互確認につきまして、尾崎陽子氏に大変な助力を頂きました。この場を借りて御礼を申し上げます。