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M-Bankユーミン楽曲(コード進行・歌詞)研究レポート公開シリーズ18~ユーミンの名作詞

日本人の心の情景を変えたシンガーソングライター(改訂版)

―研究レポート;ユーミン楽曲の和声分析と音楽的クオリアが紡ぐ作曲の手法―

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7歌詞の音楽的風景 その8

ユーミン楽曲はこちらから

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アルバム『そしてもう一度夢見るだろう』より

<ハートの落書き>

「校庭のむこうから きみの打つ球音が 補習の窓に きこえていた夏 答えを探して でも見つけられなくて とり残された 教室の隅の 机の傷あと ハートの落書き 最前線には 届かなかったけど」

「スパイクとスライドで 消えかかった白線を きみは未来へ 走って行った」

「なぜか思い出す夕焼けの匂い 遠い道のりにくじけそうなとき」

 

<Flying Messenger> 

「私は 空飛ぶ夢の配達人 書かずに 終った手紙も屆けます 恋した 街角 吹いてく風になって 失くした 気持を伝えに」

「思い出の国はモノクロ一ム 恋の夢だけ色を染めて」

「私は さすらう花びらのような 千切れた 言葉をつないで渡します 今では どこにも無い番地を探して あなたの心の誰かに」

<黃色いロ一ルスロイス>  

「黃色いロ一ルスロイスで ふられたばかりのシ一ンを次へと飛ばそう Go for the next! 終りは次の始まり

昔から言われてるじゃありませんか」

「Go for the next! コッケイとカッコイイとは ひと文字の違いだけじゃありませんか」

 

<Bueno Adios>

「眩しい夏の午後 人知れずさまよう あなたのいない日々 風にはためかせて

水色の空へと 飛び立つ鳩の影 目を上げれば 涙かわく また逢いましょう いつかきっと」

「外した指輪 遠い消印 しまい忘れた 心 別れの言葉 ナイフのような 冷めた瞳」

「激しい陽射しより 肌を焦がす想い あなたの殘り火で 灰になってゆくの」

 

<夜空でつながっている>

「ありがとう こんなに 寂しい想いがあるなんて 誰からも 何からも 知らされていなかった」

「ありがとう いつでも 心の奧にいてくれて だから明日 私また步き出す」

「広い この広い宇宙で なぜめぐり逢えたの なのに それなのになぜ去っていったの 私を残して」

 

<人魚姬の夢> 

「いつか あなたはやって來る 深い涙の底へ 私を目醒めさせるために

やがて 薔薇色の朝になり あなたはささやくのよ 哀しい夢だったと」

「時は過ぎる 眠ったまま 気づかぬうちに そばにいても 他人の夢には入り込めない」

 

アルバム『ROAD SHOW』より 

<ひとつの恋が終るとき>

「前も見えない雨が それぞれの道 照らしてた 駅へ送ってゆくよ 最終電車 去ってしまう前に

ハンドルの向こうに続く きみのいない人生へと急ぐよ このまま」

「強くなる もっと強くなれば 忘れずにいられる つらくても きっとあとになれば やるせなく思える」

「前も見えない雨が 別々の明日 包んでた 鍵ならかえさないで 二人のドアは もう開かないから」

「信号が変わるたび めくる なつかしい風景 まるで ポスター みたいに 破ってしまいたいけれど」

 

<I Love You>  

「 love you I love you 迷いなく 偽りなく あなただけ

I need you I want you いつまでも いつまでも そばにいて」

「一瞬で消えてゆく魔法でも 思い出せない夢でも 何回でも見ればいい あなたなら大丈夫 大丈夫 私には世界いち 宇宙いち」

 

<夏は過ぎてゆき>

「まだとても忘れきれなくて ハートかすれた 堤防の秘密の印 なぞれば ああ時を越えて つい電話してしまいそうよ」

「なぜ恋は残酷なルールで ゲームみたいに 駒を進め終らせる ひとりで夢を見てるまに つい気づかずに残されてる」

 

<夢を忘れたDreamer> 

「うんざりしそうな 毎日の中に でもときどき キラリよぎる流星を見る」

「遠い夜明けのSunrise つらい別れのSunset くりかえし大人になってくの」

「うんざりするような 人生の中で でも無性に 会いたくなる思い出がある」

「今も好きでいてくれたら すぐにかけだし あなたの胸に とび込みたいけど

もう少しだけ もう少しだけ 先へ行かせて 昔と同じ自分のままじゃ 帰れない」

   

<GIRL a go go>  

「何も感じずに生きてくよりも 傷つくほうがましよ かならず立ち直れる速さは 経験に比例する」

「知らない世界知ってる世界 いつも未来は組み合わせしだい」

 

<バトンリレー> 

「そんな あどけない顔して 眠ってるあなたも 悩みは たぶんあるのね

やがて 大人になったとき きっとわかるでしょう どこにも ゴールなどないこと それでも それでも 走っている」

 

<ダンスのように抱き寄せたい>

「小雨のスクリーンには いくつもの笑顔 重なってぼやける 二度と帰らぬ日々よ 見送ることしか できない列車よ」

「ダンスのように 抱き寄せたい どんなに疲れ みじめに見えてもいい あなたとなら それでいい ずっと踊るの このまま」

「ダンスのように もう踊れない 誰もがいつか 気づいてしまうけれども あなたとなら それでいい あなたに会えてよかった」

B♭  |Am7  D |Gm7 |Fm7 B♭7 |E♭ D7 |Gm7 C7 |E♭ E♭/F |B♭ |〜

=degree=

(key=B♭)I  |VIIm7  III |VIm7 |Vm7 I7 |IV III7 |VIm7 II7 |IV IV/V |I |〜

松竹配給映画『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』主題歌。ユーミンのラブソングの一つの長い旅路を振り返るような一曲と捉えた。

バブル時代の恋愛と生き方の指針の一つであったユーミンのラブソングは、時代を経て、共に生き続けたパートナーと重ねて来た年月の先のストーリーを歌っている。

その活動がもし20年で活動を止まっていたら、ユーミンのラブソングはバブル時代を象徴したファンタジーラブソングとしてだけ音楽の歴史に刻まれていたかもしれない。同曲のサビ部分でのコードは、属七和音の伝統的な展開感を用いている。

和音の流れが持っている情感を感じ取って使い分ける。

分数コードが持つ「颯爽」「都会的」「ファッショナブル」「淡い若さ」といった雰囲気とは対照的に、「疲れ」「みじめ」という言葉を使いながら、素朴な展開を使い、メロディと和声が持っているけなげな雰囲気が歌詞によって翻訳されている。

歌詞表現のテクニックだけに頼らず、和声進行の奇抜さだけに頼らず、かつユーミンブランドが築き上げてきた雰囲気の伝統を最大限活用し、心の中に自動的に入ってくる「日本語の音楽」になっているのではないだろうか。

 

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