音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

スティービー・ワンダー楽曲(コード進行)研究レポート公開シリーズ18

スティービー・ワンダーの和声構造

~非視覚的クオリアを活用した作曲技法~

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アルバム20;「Journey through the Secret Life of Plants(1979)

事例86;Same Old Story (CDタイム 0:11-)

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Aメロ

GM7  |Em7(9)/G  |CM7  G#dim7 |Am7  |

Am7  Am7(♭6) |Am7(13)  Am7 |F#7  |Bm7  |

Bメロ

FM7  E7  |Am7(♭5)/E♭ Cm6  |Dsus4  D7  |GM7  |

FM7  E7  |Am7(♭5)/E♭ Cm6  |Dsus4  D7  |Em7  B7 |

サビ

Em7  |Bm7(♭5 ) |CM7  |D7sus4  D7  B7|

Em7  |Bm7(♭5 ) |CM7  |B7  B7(♭9)  E7(♭9,♭13) E7(♭9) |

CM7  |D7  |GM7  |

後のOverjoyedやToo Shy,To Sayなどを彷彿とさせる進行感。

Bメロの下降進行はおなじみな和声の流れ。

 

Bm7からFM7への流れが増四度の根音進行になり独特で、ある種VI♭M7への移行感を持っており、ここからE7に下降し、さらに脱力するようなm7(♭5)に降りる。

ここでのCm6とAm7(♭5)は異名であるが同じ構成音を持ちます。

 

またサビでもEm7をセンターとしてVm7(♭5)であるBm7(♭5)に進行。

 

こうしたコードは「この曲の流れを特徴付けるコード」として多少奇抜でも採用するという習性が作曲家にはあるように思います。

こうしたコードが出てくることでその曲の性格をそのコードに合わせて変えてみたり、その響きがインスピレーションを与えて全体の構造を決めていったりしてくれます。

 

事例87;Send One Your Love (CDタイム 0:15-)

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Intro

F#M7  |C#M7 |G#M7 |D#M7 |A#M7  |FM7  |CM7 BM7 |

Aメロ

A6   A♭7  |G6  F#7 |D6  F#7 |AM7  |

A6   A♭7  |G6  F#7 |D6  F#7 |AM7  E♭7 |

サビ

D6  C#7 |C#m7(♭5)  F#7 |Dm7  G7 |AM7  E♭7(♭5) |

D6  C#7 |C#m7(♭5)  F#7 |Dm7  G7 |AM7  |

イントロのコードは正確ではないかもしれません。

スティービーのこれまでの創作癖を考えると、こうかな、という私の憶測が入っています。

 

BM7で終えて、A6で入る、というのがまた耳で聞いて理解している私としては、“あっているのだろうか”と不安になります。

6thのサウンドが、彼らしさを作っていると私は感じます。

 

一般には、こうした進行を単純に実験的に用いるのではなく、音楽的な意味を把握しながら作っていくトレーニングが必要です。

 

こうしたスティービーの楽曲はそのよいトレーニングになるはず。

彼にはこのコードからこのコードに行かねばならないとか、こういうクオリティの場合は、こういう展開を使わなければならないとか、そういうしがらみを凌駕出来るすごさがあります。

 

また、こうした楽曲を象徴するサウンドが作曲時に出来た場合は、それを曲全体にわたってコンセプチャルに用いると全体の構造が不定調性的でも別の重力や均質性が保たれる場合があります。

 

ここではサビでも頭に6th系の流れを感じ、全体の色調を落ち着いたサウンドに感じさせてくれます。6thはM7にくらべて穏やかで温かい色調を感じるのですがいかがでしょう。

 

事例88;Outside My Window (CDタイム 0:25-)

 

こちらを参照ください。

 

事例89;Black Orchid (CDタイム 0:00-)

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曲のイントロのフレージングがF#リディアンで作られています。

リディアンモードの旋律的使用例として活用できます。

 

事例90;A Seed’s A Star (CDタイム 0:49-)

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Aメロ

Gm  |Gm(♭13) |Gm6 |Gm(♭13) |

Gm  |Gm(♭13) |C7  |C7  |

スティービーの得意のクリシェが如実に出ている楽曲です。

事例として用いることができます。

 

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