音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

Hotter than July〜Musiquarium I / スティービー・ワンダー楽曲(コード進行)研究レポート公開シリーズ19-2

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事例94;Master Blaster (CDタイム 1:24-)

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サビ

Cm  |G7  |F7  |G5 F5 E♭5 C5 B♭5| Cm  |

Cm  |G7  |F7  |G5 F5 E♭5 C5 B♭5| Cm  |

この曲のサビのキーをCmとして考えると、IV7に該当するF7がクールに響きます。

Cm-F7であれば、ドリアンのI-IV的進行ともいえますが、この曲ではV7が用いられているのでドリアンM7、すなわちメロディックマイナーの主要三和音が響いていることになり、興味深い楽曲のサビでしたので、ここで取り上げました。

 

そのあとの小節は、和音というより五度和音を連鎖するようなペンタトニック的な進行でCmに戻ります。

こういう部分を和音進行で必ずしも連鎖してこないスティービーらしさ。柔軟。

 

これらの進行は、Superstitionと同様、メロディによる連鎖感が和音進行と同等な意義をスティービーの中で存在している感、を噛んじます。

メロディの展開をそのままアンサンブルにするのも、コード進行アンサンブルも同じ、という感覚です。

 

例)

Dm7  |G7  |CM7  |

という流れの時、もしG7の部分で変化が欲しい、というような個所には、あえてG7系ではなく、

Dm7 |G5 F5 E♭5 D♭5 |CM7 |

というような、テンション感があり、ぎりぎり調性を保っているが、G7ではない、といったアプローチが聴き手をハッとさせることは間違いありません。

この「5」と入ったコードは根音と五度音のパワーコードと考えて頂いて構いません。

   

アルバム22;「Musiquarium I(1982)

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事例95;That Girl (CDタイム 0:28-)

Aメロ

A♭m7 |A♭m6 | A♭m(♭6) |BM7 D♭m7 E♭m7 |

A♭m7 |A♭m6 | A♭m(♭6) |BM7 D♭m7 E♭m7 |

Bメロ

G♭ |D♭m7 |B♭m7(♭5) E♭7(#9) |A♭m7(9) |

AM7 |DM7 |GM7 F#7(♭5) |F#7(♭5) |

ここではm7が下行するクリシェ。

陰りのある和声感、オルガンも和声進行に沿うように怪しい感じ。

 

BメロのA♭m7(9)-AM7はIIIm7-IVM7感の応用。

同じくBメロのF#7からA♭m7に戻ってくるとき、V7など挟まず緻密な転調の流れを遮断するようにも感じられますが、これがスティービーの転調感。

 

当たり前の進行を使う時、使わない時の選択基準がとても面白いです。

「そうきたのだから、そうあらねばならない」ということがありません。

 

こうした選択基準についてより深く彼の歌詞の研究、楽曲構成の研究を進めれば、どういう選択肢で彼がそれぞれの楽曲のアプローチを選択したかも見えてくるかもしれません。

 

そうでない場合は、転調時から元調への回帰(その他の場合なども想定できるが)については、下記の選択肢を常に頭に入れておけばよいと思います。

選択肢1;オーソドックスなII-V等のケーデンスを挟む

選択肢2;ケーデンスを挟まず宙ぶらりんのままいきなり戻す(事例95のように)

選択肢3;半音、又はシークエンスをはさみコード進行ではない戻り方にする(事例94の例)のように)

 

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