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音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

悩ましいaugの響き/スティービー・ワンダー楽曲(コード進行)研究レポート公開シリーズ17-2

前回

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事例82Summer Soft (CDタイム0:00-)

こちらをご参照ください。

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事例83; Joy Inside My Tears(CDタイム 0:19-)

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Aメロ

B   |A♭7(♭9) |D♭m7 |G♭7 |E♭m7(♭5) |B7  |E  (ベースラインがEメジャーペンタトニックでBまで上昇)

B   |A♭7(♭9) |D♭m7 |G♭7 |D♭m7 |G♭7  |Baug(M7) |Baug(M7)  |

サビ

E  |D♭m7 |A♭m7 B♭m7 |E♭7  A♭m7(♭5)?  |AM7 B7(#5) |EM7 |×2

 

関係調を自在に行き来している曲。

Aメロは、BメジャーをセンタコードIとして開始され、

I   |VI7(♭9) |IIm7 |V7 |から

VIm7(♭5) |I7  |IVとなり、このIVはEM7ですが、ここでB7→EのとおりEメジャーキーに転調。

 

そのあとベースラインがEメジャーペンタトニックでB音まで上昇することで歌はBのキーに戻れる、という変化球が絶妙。

E♭m7(♭5)-B7-Eが印象的。

E♭m7(♭5)-A7-Dm7と流れるところの、ミスディレクション。

 

しかし決してEが単発で使用されているのではなく、サビでのセンターコードになっています。

 

またE♭m7(♭5)-B7は、B7(9)/E♭→B7という解釈もできるのでサウンド上は似通ったコードへの移動といえます。

 

それからAメロの最後は、Baugという終了コード。

これはサビでEメジャーキーに展開するためのドミナントの要素もあります。

こうしたサウンドはもはやスティービーの音。

 

サビでは、

I  |VIm7 |IVm7 Vm7 |と進行。

このVm7の進行感がいかにも不自然だが、聴きようによってはやはりスティービー進行。

そのあとの

E♭7  A♭m7(♭5)?  |

このA♭m7(♭5)は少し解釈が難しい。

他のコードのほうが良いかもしれません。

これは続くAM7がIVM7感を持っているのでA♭m7であるのかもしれないが背景に♭5thの音が鳴っているので、ベース音のA♭と合わせてこのように解釈した。

(コードで考えるとは限らない)

 

そして最後の締めにもAM7 B7(#5) |EM7 |とaug系のコードでコーラスを締めています。どこか不安定で悩ましい、いかにもスティービーらしい進行感。

 

事例84;As (CDタイム 0:11-)

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Aメロ

B  B7 |E  |B  B7  |A  |

B  B7  |E  |G#m7  A#m7 D#7 |G#m7 C#m7 F#7 |

B  B7 |E  |B  B7  |A  |

B  B7  |E  |G#m7  A#m7 D#7 |

サビ

G#m7 D#7/A# |G#m7/B C#7 |

G#m7 D#7/A# |G#m7/B C#7 |

G#m7 D#7/A# |G#m7/B C#7 |

G#m7 D#7/A# | G#m7/B F7(9) |

A'メロ

E    |B  |E   |E/D   |

E   |B   |C#m7  |A#m7/D#  C#m7 F#7 |

同曲のAメロではVII♭であるAが登場し、またVIIm7であるA#m7も現れ、VIm7-VIIm7が展開。

 

VII♭とVIIm7の混在にこの曲構造の独自性を感じます。

これもまたG#m7-A#m7という流れがIIm7-IIIm7を想起させるので、そこまでVIIm7感はないです。

結果としてBを中心にすると、そうした分析にはなる、というだけに過ぎない印象も与えますが、こうした混在が作曲している際に、独自感を与えて曲の構造作りのインスピレーションになる場合もあります。

こうしたコード分析に気をとられないように、不定調性論的思考としてのコードの扱い方があるわけです。

   

事例85;Saturn (CDタイム 0:22-) 

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Aメロ

F   |G/F  |Em7   | Am7 |

Dm7  |G   |C   |C  |

F   |G/F  |Em7   | Am7 |

Dm7  |G   |C   |C  |

Bメロ

C  |F  |A♭ |G♭ |

Fm7 |E♭m7 |D♭M7 |D♭M7   D♭7 |

C  |F  |A♭ |G♭ |

Fm7 |E♭m7 |D♭M7 |C7sus4  C |

Bメロの展開がおもしろい。

キーがCメジャーキーとD♭メジャーキーを行き来しています。

 

調という名の境界を自在に踏み越えて楽しんでいるよう。

私は調という枠組みは、ある程度の社会性を持ち、そこから逸脱することは社会性からの逸脱であり、そこが面白いのではないか、と考えていました。

だからこそそれらを体現できる方法論としての不定調性論を作りました。

 

しかしスティービーの曲をみていると、調という枠組みは簡単に崩れます。

 

これも後の参考文献に出てきますが、目のみえない者には境界がない、という話に似ています。彼が感じている世界には境界がなく、世上の人が創る一切の束縛を自分に当てはめない、という信念がごとく、進行感も自在に展開しています。

 

これはG♭-Fm7の流れをIVM7とIIIm7の進行感に代替させ利用したものですが、転調感そのものに違和感をあたえないスティービーらしい展開です。

 

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