音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

M-Bankスティービー・ワンダー楽曲(コード進行)研究レポート公開シリーズ17★★★

スティービー・ワンダーの和声構造

~非視覚的クオリアを活用した作曲技法~

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アルバム19;「Songs in the Key of Life(1976)

事例80Love's in Need of Love Today (CDタイム 5:41-)

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スキャットパート

E♭ |Cm7  |Gm7 |  |Fm7 |   |Cm7  B♭7 |

degree key=E♭

I VIm7  |IIIm7  |IIm7  |VIm7  V7 |

楽曲の後半に繰り返されるスキャットで流される部分だが、このなかのGm7、すなわちIIIm7において、9thのサウンドをスティービーは歌っている。Jimi Hendrixの”little wing”のイントロ、曲中でEmキーのVm=Bm7において9th効果的に用いている。IIIm7はフリジアンモードが基調になるので♭9thが調内音になるのであるが、このサウンドが全体をリディアン的に変化させ、陽転してまばゆい光が一瞬差すようなサウンドになる。

スティービーのここでの9thも同様な感じを受ける。調という中で動いていながらも、ここの響きにおいて独自のサウンドを想定できる鋭敏な感覚が感じられる。

ようはIIIm7の時の9thがどんなイメージでそこに存在するか、ということが把握できれば、そのサウンドは使用できるし、それを可能にする考え方としての不定調性論のアプローチを活用頂きたい。

 

事例81 I wish (CDタイム0:00-)

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基本的にはE♭マイナーペンタトニックの定型リフがベースになり楽曲のグルーヴの流れを作っている。イントロのフレーズは、

e♭-g♭-a♭-b♭-a♭-c-c#-d-d#

である。

これだけだとE♭7-A♭7的な流れを感じなくもないが、ベースラインも同様のラインを弾いているので、コード想定するかどうかは解釈者の自由、ということになる。

一小節ずつ考え、最初の4音、後の4音という区分けで領域指定しても良いが、これは明らかにペンタトニックスケールをベースにした、ランイングベース的なリフであると考えられる。

しかし、このリフをただ単にE♭7-A♭7とまで還元してしまうと、このラインのうねりそのものの理解にはまったくつながらない。

 

続く展開部和音と云うより、ここも音楽的なクオリアによる旋律指向性としてラインの流れを作っている、と捉えてみよう。

敢えてこの部分をコード的な領域表記にすると、

B♭-C-Fm-A♭m-B♭-C-A♭m-B♭7(♭13)

と解釈できなくもない。しかしイントロのリフから一貫した流れでラインが作られていき、これはまるでベースラインが一定の固まりの部分で、ある"コード的な存在"を示しているかのようである。

「コード的な」と言ったのは、コードではなく、旋律の固まりがコード進行の変わりのような役割を果たしている、という発想である。

コード的に小節を分割したくなる慣習があるが、本来はそうした慣習などなく、旋律が微細に少しずつ流れを変えていき展開しているのが音楽の流れである。

ここで実践されているのはまさに、旋律が流れを構築している、という点である。

 

かつ面白いのは、明確なコードを与えず、全ての楽器が旋律で似通った雰囲気を紡いでいる、という点である。つまり「コードを想定しない流れ」によって楽曲ができている、というわけである。まさしく音楽的なクオリアによる旋律指向性である。

 

CDタイム1:04-からホーンのラインが、f-e-e♭と流れる。これらがB♭の5th、Cの3rd、Fmの7thというコードトーンに該当する。

これらをコードから想定するのではなく、ラインから想定していく、という発想である。

 

こうした楽曲の学習例としては、ペンタトニックスケールを主に用いることを勧める。7音音階を用いてしまうと、コーダルな展開を持たせる必要性が出てきしまうからだ。

たとえば同曲の3:00-あたりからのホーンのラインは、E♭m7(9,11,13)というコードイメージを感じさせるが、こうしたラインを、コードからではなく、メロディ作成の流れで音楽的なクオリアを感じながら作る、というほうが、ブルースの学習、ジャズの即興的ライン生成の学習に役立つのではないだろうか。コードで考えるのではなく、メロディを紡いでリズムを構築する中で、メロディが流れる音楽的なクオリアを微細に把握し、その一音一音に「流れる動機、方向性」を明確に指定できるトレーニングである。対位法的なアプローチだ。

 

簡単なリフ作りや、旋律パターン作りなどがこの練習としては最適であろう。

 

事例82Summer Soft (CDタイム0:00-)

 

こちらをご参照ください。

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事例83; Joy Inside My Tears(CDタイム 0:19-)

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Aメロ

B   |A♭7(♭9) |D♭m7 |G♭7 |E♭m7(♭5) |B7  |E  (ベースラインがEメジャーペンタトニックでBまで上昇)

B   |A♭7(♭9) |D♭m7 |G♭7 |D♭m7 |G♭7  |Baug(M7) |Baug(M7)  |

サビ

E  |D♭m7 |A♭m7 B♭m7 |E♭7  A♭m7(♭5)?  |AM7 B7(#5) |EM7 |×2

 

関係調を自在に行き来している曲である。

Aメロは、BメジャーをセンタコードIとして開始され、

I   |VI7(♭9) |IIm7 |V7 |から

VIm7(♭5) |I7  |IVとなり、このIVはEM7であるが、ここでB7→EのとおりEメジャーキーに転調している。そのあとベースラインがEメジャーペンタトニックでB音まで上昇することで歌はBのキーに戻れる、という変化球が絶妙である。E♭m7(♭5)-B7-Eが印象的である。E♭m7(♭5)-A7-Dm7と流れるところを、ミスディレクションしている。しかし決してEが単発で使用されているのではなく、サビでのセンターコードになっている。

またE♭m7(♭5)-B7というのは、B7(9)/E♭→B7という解釈もできるのでサウンド上は似通ったコードへの移動といえる。

それからAメロの最後は、Baugという終了コードである。これはサビでEメジャーキーに展開するためのドミナントの要素も持っている。こうしたサウンドはもはやスティービーの音といえる。

サビでは、

I  |VIm7 |IVm7 Vm7 |と進行する。このVm7の進行感がいかにも不自然だが、聴きようによってはやはりスティービー進行である。そのあとの

E♭7  A♭m7(♭5)?  |

このA♭m7(♭5)は少し解釈が難しい。他のコードのほうが良いかもしれない。各位この部分は見当をつけて頂きたい。これは続くAM7がIVM7感を持っているのでA♭m7であるのかもしれないが背景に♭5thの音が鳴っているので、ベース音のA♭と合わせてこのように解釈した。

そして最後の締めにもAM7 B7(#5) |EM7 |とaug系のコードでコーラスを締めている。どこか不安定で悩ましい、いかにもスティービーらしい進行感を持っている。

 

事例84;As (CDタイム 0:11-)

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Aメロ

B  B7 |E  |B  B7  |A  |

B  B7  |E  |G#m7  A#m7 D#7 |G#m7 C#m7 F#7 |

B  B7 |E  |B  B7  |A  |

B  B7  |E  |G#m7  A#m7 D#7 |

サビ

G#m7 D#7/A# |G#m7/B C#7 |

G#m7 D#7/A# |G#m7/B C#7 |

G#m7 D#7/A# |G#m7/B C#7 |

G#m7 D#7/A# | G#m7/B F7(9) |

A'メロ

E    |B  |E   |E/D   |

E   |B   |C#m7  |A#m7/D#  C#m7 F#7 |

同曲のAメロではVII♭であるAが登場し、またVIIm7であるA#m7も現れ、VIm7-VIIm7が展開している。VII♭とVIIm7の混在にこの曲構造の独自性を感じる。これもまたG#m7-A#m7という流れがIIm7-IIIm7を想起させるので、そこまでVIIm7感はない。結果としてBを中心にすると、そうした分析にはなる、というだけに過ぎない印象も与えるがこうした混在が作曲している際に、独自感を与えて曲の構造作りのインスピレーションになる場合もある。

   

事例85;Saturn (CDタイム 0:22-) 

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Aメロ

F   |G/F  |Em7   | Am7 |

Dm7  |G   |C   |C  |

F   |G/F  |Em7   | Am7 |

Dm7  |G   |C   |C  |

Bメロ

C  |F  |A♭ |G♭ |

Fm7 |E♭m7 |D♭M7 |D♭M7   D♭7 |

C  |F  |A♭ |G♭ |

Fm7 |E♭m7 |D♭M7 |C7sus4  C |

Bメロの展開がおもしろい、キーがCメジャーキーとD♭メジャーキーを行き来している。調という名の境界を自在に踏み越えて楽しんでいるようである。私は調という枠組みは、ある程度の社会性を持ち、そこから逸脱することは社会性からの逸脱であり、そこが面白いのではないか、と考えていた。だからこそそれらを体現できる方法論としての不定調性論を作った。しかしスティービーの曲をみていると、既に調という枠組みすらない。これも後の参考文献に出てくるが、目のみえない者には境界がない、という話に似ている。彼が感じている世界には境界がなく、世上の人が創る一切の束縛を自分に当てはめない、という信念がごとく、進行感を自在に展開している。

これはG♭-Fm7の流れをIVM7とIIIm7の進行感に代替させ利用したものであるが、転調感そのものに違和感をあたえないスティービーらしい展開であると思う。

 

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