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音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

M-Bankスティービー・ワンダー楽曲(コード進行)研究レポート公開シリーズ25-2

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 A Time To Love

事例121;Passonate Raindrops(CDタイム 0:14-)

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Aメロ

B♭m |B♭m(#5) |B♭m6 |B♭m7|

A♭ |A♭(#5) |A♭6 |Cm7(♭5) F7(♭9) |

B♭m |B♭m(#5) |B♭m6 |B♭m7|

A♭ |A♭(#5) |A♭6 |A♭7 |

Bメロ

D♭ E♭m |Fm G♭ |A♭m B♭7 |BM7 B♭7 |

A♭m E♭/G |F# D♭/F |EM7 |A♭ |

D♭ E♭m |Fm G♭ |A♭m B♭7 |BM7 B♭7 |

A♭m E♭/G |F# D♭/F |EM7 |E♭m7/A♭ |

 

Aメロはクリシェ二本立て。

B♭mをIとすると、A♭のクリシェはVII♭のクリシェであり、逆にB♭mをスティービーが良く使うIImのクリシェとすることもできます。

 

Bメロは、D♭ E♭m |Fm G♭ |までがD♭メジャーキー、A♭m B♭7 |BM7 B♭7 |ここがD♭マイナーキーという凝りよう。

 

ユーミン氏もそうであるが、メジャーキーとマイナーキーの混同の具合はさらにすさまじいです。甘いものと辛いもの、軽いものと重いもの、寒いものと温かいものを平気で合わせてきます。

 

またサビの後半では、A♭m E♭/G |F# D♭/F |というクリシェ類似形。

 

四度進行をベースラインの上で半音進行化させる方法。ここからEM7に結びつける。これがIVM7やVI♭M7のような飛翔感を与え、次にここからIIm7/Vに帰着させ(ちょうどIVM7-IIIm7/VIの進行感的な帰着感の利用)、見事主調D♭に帰着させ、平行短調のB♭mに戻してきます。

 

一瞬悲しみと喜びが入り混じってくるような、光と陰りが交互に襲ってくるような違和感がありますが、これがスティービーなりの世界表現なのだ、個性なのだ、と本人が把握している場合、これを示すことによって彼を理解しよう、という想いになります。

三浦氏の著書に、

 

彼の素顔はほとんどの人が知らない。彼は自分自身でもよくそれをわきまえていて、ことあるごとに人々に素顔の自分を知ってもらおうと努力している。言語のハンディがある日本の人たちに対しても同様に。(中略)そんな、ありのままの自分を理解してもらおうとするスティービーには、周囲の人間をして協力を惜しませない強い何かがある。

 

とし、締めくくりとして、

 

ここで私は、自分の見たまま聞いたまま感じたままを書いた。(中略)この本がスティービーの努力に少しでも役立つ=彼を愛する人が彼の素顔を心に思い描く上で少しでも役に立てばこれ以上の喜びはない。うれしいことはない。

 

としています(著書はM-Bankにて読むことができます)。

 

事例122;True Love(CDタイム 0:16-)

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Aメロ

AM7 F#7(♭9) |Dm7 G7 |Em7 A7(♭13) |Fm7 B♭7 |

CM7  Am7 |A♭m7 D♭7(#11) |Bm7 |E7(♭13) |

AM7 F#7(♭9) |Dm7 G7 |Em7 A7(♭13) |Fm7 B♭7 |

CM7  Am7 |Bm7 E7 |AM7 DM7 |AM7 A7 |

Bメロ

Dm7 G7 |Em7 A7(♭9) |Dm7 G7 |Em7 A7(♭9) |

Fm7 B♭7 |Gm7 Cm7 |F7   |Bm7/E |

AM7 F#7(♭9) |Dm7 G7 |Em7 A7(♭13) |Fm7 B♭7 |

CM7  Am7 |Bm7 E7 |AM7 F#7 |F7 E7 |

 

この曲はII-Vそのものが破たんしているのではないか、というような進行感。

II-Vの連鎖が新鮮。

 

それにしてもこの曲はアカペラで歌えなさそう笑

このアルバムはますますスティービー・ワンダーがスティービーのありのままを表現して世界に発信しているアルバムだと思います。

ある程度の制作の自由が許されるがゆえに、単純にR&Bのアルバムを作るのではなく、やはり世界に偏見や境界というものがない、自由な感性で行われる音楽によって、世界中の人に彼の主張や価値観を伝えようとしているのではないかと思います。

 

ユーミンのアルバムでは36枚目にして「I Love You」という曲が収録されています。ラブソングの女帝をして36枚目に出てきたこのシンプルな告白の題名。

そしてスティービー・ワンダーも最新アルバムにこの「True Love」という表題の曲を提示しています。

単なるラブソングなのかもしれませんが、今彼がわかること、を聞くことができる、というのは味わい深いものがあります。

 

事例123;Can’t Imagine Love Without You(CDタイム 0:13-)

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Aメロ

2/4 B♭ |4/4 E♭ Fm7 |Gm7 B♭m7 E♭7 |A♭M7 B♭m7 |Cm7 E♭m7 A♭7(♭9)|

D♭M7 Cm7 |B♭m7 A♭ |Gm7 C7(♭9, ♭13) |A♭M7 Gm7 Fm7 B♭7(♭9) |E♭ B♭7 |

E♭ Fm7 |Gm7 B♭m7 E♭7 |A♭M7 B♭m7 |Cm7 E♭m7 A♭7(♭9)|

D♭M7 Cm7 |B♭m7 A♭ |Gm7 C7(♭9, ♭13) |A♭M7 Gm7 Fm7 B♭7(♭9) |E♭ |

美しい転調の連続した曲。

 

E♭ Fm7 |Gm7 B♭m7 E♭7ここはE♭のI-IIm-IIImと流れ、短三度上がったII-Vで変化をつけて、流れに沿ってA♭でまた同じ流れを使っています。

 

後半は

D♭M7 Cm7 |B♭m7 A♭ |Gm7 C7(♭9, ♭13) |と

A♭M7 Gm7 Fm7 B♭7(♭9) |E♭ B♭7 |

を対句にして今度は通例IVM7から下がってくるような印象を持たせた進行感をD♭とA♭で演出しています。

 

彼が世界平和や人種差別に問題意識を掲げて活動をしているのは有名な話ですが、このレポートを読んで頂ければ、それは単なる売名行為などではなく、彼の人生観や、物事を把握する彼自身の身体的特徴から来ている概念が、それを教えてくれるからで、シンプルに彼の世界に対する物の見方、解釈の仕方への理解を求めている活動であると感じるようになりました。

 

偉大なミュージシャンであることには変わりありませんが、きっと自分がやっていることをただ深く考えず理解してほしいと切実に思って振舞う子供のような影も見たような気がします。

 

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