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歌詞については掲載しておりませんので
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こちら等にて確認ください。
アルバム5;『紅雀』(1978)その2
地中海の感傷
Aメロ(アルバム収録楽曲タイム0:33~)
Gm7 Gm7/F |C/E E♭M7 |Gm7 A♭M7 |Am7(♭5,11) E7(♭9) |
Gm7 Gm7/F |C/E E♭M7 |Cm7 Dm7 |Gm7 |
=degree=
(key=Am)
im7 Im7/VII♭ |IV/VI VI♭M7 |IVm7 II♭M7 |IIm7(♭5,11) V7(♭9) |
Im7 Im7/VII♭ |IV/VI VI♭M7 |IVm7 Vm7 |Im7 |
冒頭に全音下降を含むクリシェがあります。
また三小節目のII♭M7も表情豊かです。
二拍でコードを変化させるリズムができる時、コードを変えなくても良い場所にもコードをおくことになり、それが逆に響きの変化、色彩感の微細なグラデーションを作ることができます。
和声の回遊的使用という方法を述べておきます。
このII♭M7はメロディに必要がないけど、これがおかれることで、流れにリズムができ、心情を映した地中海の澄んで淋しげな青を確かにイメージさせる和音ともいえます。
この小節はGm7で支配されているますが、それが一旦離脱するようにA♭M7に移行します。そしてまたダイアトニックコードに戻るような動きのするコードを「回遊コード」といいます。変化をつける一つの方法です。
用例;
CM7 D♭M7 |CM7 BM7 |CM7~
ここではDbM7やBM7はメロディとは関係なかったりします。
ちょっと本筋から外れることで、そぞろ歩きのような雰囲気や、揺れ動く心情的な雰囲気を作ることが出来ます。
紅雀
Bメロ(アルバム収録楽曲タイム0:53~)
A♭/B♭ |A♭/B♭ |Am7 |Am7 |
E♭/F |E♭/F |Am7 D7 |G7 |
=degree=
(key=C)
VI♭/VII♭ |VI♭/VII♭ |VIm7 |VIm7 |
III♭/IV |III♭/IV |VIm7 II7 |V7 |
基本はCメジャーキーで、同主短調に該当する、III♭音、VI♭音、VII♭音を用いた和音が涼やかに響きます。
罪と罰
当時、結婚したてのユーミンが書いたとは思えない歌です。
デビューアルバムの死生観にしても、結婚後すぐの不倫の歌にしても、なかなかリンクしないと思うのです。
逆を言えば、満たされていることを無視する、というか、反対方向に視点が向く、というか、とにかく脳内のアンテナ構造が特殊にできているように感じました。
考えてみてください。現代のアイドルが結婚した後、退廃的な曲ばかり歌ったら、ちょっと心配します。でもユーミンのこのアルバムは不思議と安定しています。
声の幸福感というか、圧倒的自信というか、迷いを楽しむポジティブさ、というか。
そういうものを感じるからかもしれません。あとラテンという音楽の印象かもね。
つまりそのアンテナを持って、この歌詞世界あり、と思えば、何となく納得です。
こういう、一風その人の"今"とずれた作品を持ってくる人がいたら、"天才のサインだ"、って我ら凡人の教室の先生でもなんとなく察知できます。
中身ではなく、その本人から全くイメージできないものが出てきたときなどです。
でも多くが無視されがちです。他人は理解できないから、「この程度なら普通かな?」とかって周りの大人が思ってしまうからだと思います。
それを観察するのも私塾の講師の仕事ではないでしょうか。
外の世界の事より内の世界を優先してアウトプットできる人、を良く観察しましょう。
雨の日には、晴れの日を思い、
うれしい日には、悲しいことに視点が向き、
悲しい日には、うれしいことが頭に浮かぶ。
生を感じると、死がポンと顔を出し、
不幸をみれば、その先の小さな未来が見える。
そういう視点で、ユーミンの歌もできているのだとしたら、いろいろ読み方も面白くなるなぁと感じます。これを「反動的指向」とかって呼んで、これから先のユーミンの歌詞とコードを読み解いてみたいと思います(心理学で専門用語があれば教えてください)。
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