2020-08-06 後年のスティービーの作曲技法のタネが詰まっているアルバム〜スティービー・ワンダー研究レポート6-2 スティービー・ワンダー レポート 前回 www.terrax.site 事例16;Be Cool,Be Calm(And Keep Yourself Together) (CDタイム 0:22-) open.spotify.com A♭ |B/A♭ |D♭/A♭ |A♭ |=degree= (key=A♭)I |III♭/I |IV/I |I | ビートルズ的不定調性進行の楽曲。 スティービーもクレジットに記載されてます。 これはA♭-A♭m7-D♭-A♭という進行が発想上の基本進行と言えます。 これもまた高揚感のある進行となっており、スティービーもヒートアップする様も魅力的。この曲もまた同一進行の中でストーリーを積み上げていく楽曲です。 このアルバムでは、後年のスティービーの作曲技法のタネが詰まっている印象を受けます。 同アルバム曲「Angel Baby (Don't You Ever Leave Me)」 open.spotify.com も同様な進行が用いられてます(キーはD♭)。 まさにこのスタイルが、いま最もホットだ!と言わんばかり。 事例17;Sylvia (CDタイム 0:11-) open.spotify.com B |E |D♭7(#5) D♭7 |D♭7(♭5) D♭7 |G#m |G#m/F# |E |E |E7(♭5) |E7(♭5) |A |F#m |G#M7 |C#m7 F#7 |B |〜=degree= key=BI |IV |III7(#5) III7 |III7(♭5) III7 |VIm |VIm/V |IV |IV |IV7(♭5) |IV7(♭5) |VII ♭ |Vm |(key=G#)IM7 |(Key-B)IIm7 V7 |I |〜 Thank You Loveと同じクレジットでスティービーの名前も入ってます。 彼はこのとき、まだ15歳!! それでもこの展開もいかにもその後のスティービーらしい要素が詰まってます。 五度変化した7thコードや、五度のラインクリシェなど! E→E7(♭5)での段落展開などは、地味ですが、単純に四度進行するよりもその独特な停滞感がとても面白いです。 そして後半のG#へのメジャー終止もスティービーの曲に見られる陽転です。 例)Dm7 G7 CよりもDm7 G7 Aのほうが陽転感が強い。 またさらに、Dm7(♭5) G7(♭9) Aだとさらに強い。こうしたII-Vと解決先のコンビネーションを後は応用するだけ。 Dm7 G7 BやDm7 G7 A♭などの展開が自在にできるようになり、それぞれの進行感が歌詞のストーリー、音楽的な脈絡を備えていればコード進行がマンネリ化する事はありません。 つまり機能感を拡張する、とか、あらぬ方向に転調する、という発想ではなくて、これまでに感じたことのないフィーリングを与えてくれるコードはどれかを探す、という発想で見つけてみるというのが逆にクリエイティブな印象を持ちます。 このころはまだ具体的に、なんで自分がそういうものが好きなのか、分からないまま使う、という感じかもしれないので、しばらくは楽曲の傾向をこのまま見ていきたいと思います。 事例18;Hey Love (CDタイム 0:00-) open.spotify.com CM7 B♭/C |×XtimesFM7 E♭/F | FM7 E♭/F |G7 |C7 |FM7 E♭/F | FM7 E♭/F |G7 |C7 |CM7〜=degree=(Key=C)IM7 VII♭/I |×Xtimes(Key=F) IM7 VII♭/I | IM7 VII♭/I |II7 |V7 |IM7 VII♭/I | IM7 VII♭/I |II7 |V7 |(key=C)IM7〜 単純なI-VII♭/I進行が穏やかな地表を作り、展開部でそっくりFメジャーキーに移行し、II7を挟む。 コーラスの最後にV7を明示しない状態であっさりCメジャーキーに戻ります。 この曲もスティービーがクレジット。 どの部分を彼が作り上げたのか定かじゃないですが。すごいね。 さぞや作曲家のそばにいて刺激を受けたでしょうね。 X7(♭5)のような不思議なコードについても、先輩ミュージシャンに質問攻めをした、というようなエピソードが参考文献にも書かれていたので、演奏の現場で、様々なミュージシャンの技、音からそうした技法を自分なりに昇華していっのでしょう。 目次ページはこちら その7へ www.terrax.site ==コーヒーブレイク〜M-Bankロビーの話題== スティービーと共に過ごした三浦氏の著書。。ぜひ再販してほしいなぁ。。 M-Bankにあるよ! スティービー・ワンダー我が半生の記録―冷たい鏡の中に生きて (1976年)