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音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

M-Bankスティービー・ワンダー楽曲(コード進行)研究レポート公開シリーズ10★★★

スティービー・ワンダーの和声構造

~非視覚的クオリアを活用した作曲技法~

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アルバム12;「My Cherie Amour(1969)

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事例38My Cherie Amour (CDタイム0:00-)

イントロ

G#7 ||F#M7 |BM7  |BM7 |C#M7 |

F#M7 |BM7  |BM7 |C#M7 G#7(♭9,♭13) |

Aメロ

C#M7 |F#sus4 |BM7  |G#7sus4  G#7|

C#M7 |F#sus4 |BM7  |G#7sus4  G#7|

Bメロ

F#M7 |G#7  |B7(♭5)  |B♭7 |E♭m7 |

G#7 |C#M7 | C#M7 G#7(♭9,♭13) |

※×2後イントロに戻りC#M7 A7 |半音上に転調

=degree= Key=C#からDに最後転調

イントロ

V7 ||IVM7 |VII♭M7  |VII♭M7 |IM7 |

IVM7 |VII♭M7  |VII♭M7 |IM7 V7(♭9,♭13) |

Aメロ

IM7 |IVsus4 |VII♭M7  |V7sus4  V7|

IM7 |IVsus4 |VII♭M7  |V7sus4  V7|

Bメロ

IVM7 |V7  |VII♭7(♭5)  |VI7 |IIm7 |

V7 |IM7 | IM7 V7(♭9,♭13) |

ユーミン楽曲で登場していたIVsus4がここに登場する。年代的にスティービーが先のリリースである。ここでは7sus4にも聴こえる。これがVII♭M7への二次ドミナントになっている。Aメロの四小節だけを見てもキーがはっきりしない。もちろん瞬間的なキーを明示する事は出来るが、キーをじっくり感じることが出来ずにどんどん曲調が展開していく。この斬新さは前回のアルバムで示された不定調性進行がさらに進化した姿といえる。この曲も共作であるが、いよいよスティービーの楽曲の特徴が色濃く出てきた。

この作り方も、和声と和声の連鎖感に脈絡を感じられるか、である。

C#M7からF#sus4において、センターコードになるのは(作曲の発起点として意識される和音は)当然C#M7である。これをIM7とした場合、続くコードはダイアトニックでたいていは続く。それを避けるためには、二つ目のコードで転調的な処理をしなければならない。本来IVにはsus4はつかない。このコード感を持ってきたとき、メロディを作ることが出来るかどうか、である。これこそが音楽理論的に誤った手法でもそこに意図を見つけられるか、である。そしてC#M7のセンター感を打ち消すがごとくBM7への新たな脈絡を見つけた時に、そうしたメロディを一曲の中で完成させられると見るか、これでは散漫になるからやめようと思うか、である。はたまたこれらの進行が既存の曲を参考にしたものか、そうでなければ、先例はどこかにあるかもしれないが、自分では分からない場合に、“こんな進行ありだろうか”と思いながらも完成させる確信が持てるか、である。こうしたことが音楽的脈絡を伴った学習により、新しい音楽を生み出すトレーニングになる。そのためには既存の音楽分析ができる音楽理論ではなく、未知の音楽を作曲者自身が承諾できる音楽理論の発想法が確立されている必要があると感じ、この不定調性論を私は推し進めている。

 

後半イントロに回帰した後C#M7→A7へ展開し、いきなりメロディがa-bと流れ半音転調するのだが、C#M7において、a-b音を歌いだそうと思えば、CM7(♭13)を想定しなければならない。

またはCaugで#5音が想定できて、A7でその音を吸収して歌っていくような感じになるであろう。スティービーの楽曲には、augサウンドも出ているが、C△で#5音を和音の上で歌うことができるからこそ可能な転調利用と言える。覚えてしまえば歌えるのかも知れないが、テンション感を熟知していつでも三和音の上で♭13thが歌える技巧を用い得る必要がある。こうしたソリッドな音使いはユーミンの楽曲の中にも見られる。

   

事例39Hello Young Lovers (CDタイム0:23-)  

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Aメロ

A♭ |A♭6 |A♭M7 |A♭6 |

A♭  |F7 |B♭m B♭mM7 |B♭m7  B♭m6 |

Bメロ

B♭m |B♭m(#5) |B♭m6 |B♭m7 |

B♭m6 |E♭7 |A♭ G♭ |B  B♭ E♭7 |〜Aメロ

=degree= key=A♭

Aメロ

I |I6 |IM7 |I6 |

I  |VI7 |IIm IImM7 |IIm7  IIm6 |

Bメロ

IIm |IIm(#5) |IIm6 |IIm7 |

IIm6 |V7 |I  VII♭ |III♭  II V7 |〜Aメロ

Oscar Hammerstein, Richard Rodgersのカバー曲である。Iにおける6th,M7thの展開、IImのクリシェが二種類存在する曲である。「またか!」なんて勝手に思ってしまうのだが、こうしたパターンの楽曲をなぜ彼が採用するか、というところに音楽活動の根本的な指針が隠されているように思う。自分の音楽を作ることを旨としているのだから、そこには安易な利用、ではなく、ここまでくると信念なのではないか、という思いがよぎる。もう一度問題をここで書いておこう。

スティービー・ワンダーはなぜクリシェ進行を用いるのか。今回の123曲の中に20曲前後の同コンセプトの曲がある。ビートルズの時は全213曲中取り上げたのはクリシェは6曲だけである。

 

事例40Light My Fire (CDタイム 0:14-)

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Aメロ

D♭m7 |B♭m7 |D♭m7 |B♭m7 |

D♭m7 |B♭m7 |D♭m7 |B♭m7 |

Bメロ

B  C#  |F#  D#m |B  C#  |F#  D#m |

B  A#m |G#m7 |G#m7 |〜

Doorsの楽曲である。後半のキーはF#であるが、Aメロは、ちょうどF#をセンターにすると、Vm7-IIIm7にはなる。しかし制作過程では通常このm7の連鎖から作ると想定すると、 D♭m7がセンターになり、短三度のm7への変化感を斬新な進行として活用する、という発想のほうがしっくり来るのではないだろうか。

メジャーコードはいくつも連鎖する事が出来るのであるが、マイナーコードの連鎖は難しい。ポピュラーな手法としては、

IIm7  IIIm7 |IVm7  Vm7|VIm7  |

という平行調の活用があるが、ここでは、同主短調のm7を活用している。

Key=CとCmとすると、

Cm7  |Am7  |~

である。CマイナーキーのImとCメジャーキーのVImの組み合わせである。この進行はスティービーも自身の曲で後に用いている。

転調感の連続、というよりも、m7が短三度で連鎖している状況にどのような音楽的風景、印象を覚え、それが活用できるか、ということへの理解が大切である。先例を用いたスティービーは、こうした音楽の存在感を理解して活用を図っているのではないだろうか。

   

事例41Pearl (CDタイム 0:16-) 

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Aメロ

Dm7 |G7 C/G G7 |Dm7 |G7 C/G G7 |

Dm7 |G7 C/G G7 |Dm7 |G7 C/G G7 |

Bメロ

B♭ |B♭ |G  |G  |

B♭ |B♭ |

Dm  |G7 |Dm  |G7 |

=degree=

Key=Ddorian

 Aメロ

Im7 |IV7 VII♭/IV IV7 |×4

Bメロ key=Dm+Ddorian

VI♭ |VI♭ |IV  |IV  |

VI♭ |VI♭ |

Im  |IV7 |Im  |IV7 |

Richard Morrisの作品。ドリアンのIV7を用いて、VII♭/IVという和音感を添えている。またBメロでは短三度のメジャーコード移動による展開が変化を出している。

B♭への移行は、VIへの進行感であるし、短三度のGへの移行は、平行短調への長調変化の進行感の活用と言える。こうした機能和声の理解ができたら、その進行感を随時用いて作曲の際に音楽的脈絡を構築するトレーニングをすると良いだろう。

またたとえば、C△ |A△ |といった和音をDTMなどで3分ぶんほど打ち込み、それに合わせて歌ってみたり、楽器等でメロディを即興的に作り遊んでみる、というのも一つの方法であると思う。

 

事例42Somebody Knows,Somebody Cares (CDタイム 0:49-)

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Aメロ

A♭7  A♭7(m7→13) |~

Bメロ

Cm  CmM7 |Cm7 Cm6 |B♭m7  E♭ |〜

主和音はA♭7であり、最初の1分は1コード的にリフレインがされ13thのテンションが添えられるだけのパターンである。そして変化するBメロではIIImのクリシェが見られる。スティービーもクレジットがされている。どの部分を作ったのであろうか。クリシェはそれだけで空間を埋めてくれる構造美があるので、一見安易なパターンに見えるが、こうした曲も事例として把握しておくことで、レッスン等での参考資料になるのではないだろうか。

 

事例43Angie Girl (CDタイム 0:06-)

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Aメロ

G   |G/B  |Cm6  |Cm6  |C  |C/D  |G  |×2

Bメロ

F#m7 |FM7 |G  |G  |

F#m7 |FM7 |GM7  |D7  D#7   |半音上のキーへ

=degree=

Aメロ Key=G

I   |I /III  |IVm6  |IVm6  |IV  |IV/V  |I  |×2

Bメロ

VIIm7 |VII♭M7 |IM7  |IM7  |

VIIm7 |VII♭M7 |IM7  |V7  V#7   |半音上のキーへ

冒頭のIVm6のキラキラとしたイメージは活用できるインスピレーションを与えるのではないだろうか。IVmには6thを加えると急にキラキラした印象、又は尖ったようになる。これはIVmのm3rdとM6thが増四度、トライトーンの関係になり、不協和度が添えられるからである。またこの曲では逆サブドミナントマイナー進行があるCm6-Cが用いられている。

この作品はスティービーもクレジットされている。

またBメロにおけるVIIm7→VII♭M7→IM7なども進行感を用いた好例である。これはGM7からF#m7に下降した感じは、ちょうどIVM7→IIIm7の感じ、と代替されるからであり、そこからVII♭M7に下降する感じは、IIm7-II♭M7-IM7の変化感の活用と考えることが出来る。たとえば、Dm7-D♭M7では、Dm7のd,aが半音下降するとD♭M7になり、その声部進行が美しい。この進行感を使えるものと知っていれば選択肢となる。

これはIIm7に限らず全てのコードで活用できるのである。あとはこれらの変化感が楽曲の音楽的脈絡を作っていれば良い。

 

事例44I've Got You (CDタイム0:17-) 

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イントロ

CM7 |CM7 |CM7 |CM7  |

Aメロ

D  DM7 |D7  |G  |CM7  |

D  DM7 |D7  |G  |CM7  |

Bメロ

F  Fm |G C C/B |Am |Em7 |Em7 |G7 |G7 |

CM7 |CM7 |CM7 |CM7 |

=degree=

Aメロ Key=D

I  IM7 |I7  |IV  |VII♭M7  |

I  IM7 |I7  |IV  |VII♭M7  |

Bメロ

key=C

IV  IVm |V I I/VII |VIm |IIIm7 |IIIm7 |V7 |V7 |

IM7  |IM7  |IM7  |IM7 |

同曲もスティービーが作曲者にクレジットされている。ここでは、またこれまでの作品に見られないような転調パターンが作られている。イントロでCが中心になるイメージを与えた後、II度調ともいえるDをセンターにしてクリシェを用い、すぐにCのキーのIV-IVmのサブドミナント感を活用してCのキーに循環してくる。

もちろん不定調性論では、こうした「調の配置バランスのアンバランス」が起きていてもそれを“アンバランス”とは表現しない。調の観点からみれば、“なぜここだけこういう感じなのか”というイメージしか残らないが、C→Dという進行感の状態でクリシェを活用したあと、D7→GをII7-Vという進行感で繋ぎCを配置してイントロの調を活用して安定感を演出している、という理解から、あとはその音楽的風景、脈絡を自分の中に作りこめるか、またその脈絡によって自分の曲を作ることができるか、ということに追求を進めて頂きたい。

例)

CM7  |Dm7  |Em EmM7 |Em7  A7 |

D DM7 |D7  |G  GM7 |G7 Gm7 |

DM7 |D♭7 :|

というように進行感の流れに脈絡(自分が感じる範囲で良い)があれば、音楽的連鎖は出来てしまうので、あとはこの流れに沿うメロディ、歌詞を作ればよい。

私自身は少なくとも上記の例だと、単純に進行感がてんこ盛りで連鎖されているだけで、特徴的なメッセージを受け取ることが出来なかったので、下記のように変更をした。

例)

CM7  |Dm7  |Em EmM7 |Em7(♭5)  |

Dm7 |G7 |BM7 |DM7 |

FM7  |A♭M7:|

これは好みであると思うし、これは今の自分だからこうした、という事に過ぎない。これであれば私はこの流れに海岸の涼しい雰囲気と風を思い浮かべることが出来たので、これによってメロディと歌詞も書ける。

こうした音楽の構築法全体が個人の独自法であるがゆえに、この方法そのものは参考にならないはずである。というか参考にしてはいけない、と感じる時もある。このように独自に音楽を作ることを考える、ということを主張していくことで、楽曲を作られる方各位が、既存の方法論をどのように展開し、どのように作っていくことを信念とするか、ということを確立していけばよいと思う。あとヒットするかどうかは、どれだけ自分の音楽に思い入れが持てるか、長く続けるか、それしかないのではないだろうか。

 

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