音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

和音は二種類しかない~不定調性論の観点から

この記事も独自解釈を含みますのでご留意ください。

もちろん和音は一つ一つすべて異なるのですが、

・動的欲求の強い和音

・動的欲求の弱い和音

と分けることで、あとはどのように和音を連鎖しても、調や機能を関係無く連鎖して音楽を作ることができる、というところに結びつきます。

学問に必要な音楽的機能、学習感覚に刷り込まれた機能的感覚、それらが必要な時もあれば必要ない時もあります。そうした過去の定義が必要な時はそれを用いればいいですが、それが必要ない時どのように考えればいいか、機能感という存在を極限にまで削ぎ落とした時どのような発想を作ることができるのかこの記事では述べています。

 

 

拙論では、 和音には二種類しかない、という分類方法があります。

それは増4度を含むか含まないかの違い 

での分類です。

この分類について先達を探していたらP.ヒンデミットの「作曲の手引」に、そうした分類の萌芽が見られました。

もちろん私の扱いなどとは全く別の次元のものですが、興味深いです。

 

 二種類の和音

① C△

は増4度関係を持ちません。

 

でも

② G7

は、構成音のbとf音が増4度関係になります。

 

①のような増4度を持たない和音を「静和音」

②のように増4度を内部に持つ和音を「動和音」と呼びます。 

 

動和音=動性を持つ和音

静和音=弱い動性を持つ和音

 

この分類だいぶ曖昧ですが、そもそ全ての和音になんらかの動性を人は持たせることができる、と考えているので、これはあくまで分類のための分類に過ぎません。

この「動性」とは、いわゆる西欧文化におけるドミナント7thの慣習感覚からきています。移動したい感、不安定感、安定に持ち込みたい感、落ち着かない感、どのように表現してもかまいません。動きたい欲求、とでも表現しましょう。

特に定めません定めること自体が無意味な話なので。

G7⇨C

においてG7は動和音です。この時G7はCに向かうことで平均律文化圏の人は「帰着感」を感じます。この時の"結びついた感"を「動性による帰着感」と表現します。

これは平均律文化圏が持ち得た増四度に対する感覚と言えます。

"刷り込み"です。

決してドミナントがトニックに結びつかなければならない、という意味ではありません。最初はそうだったかもしれませんが、現代では、

G7→Am7だって、G7→AbM7だって、G7→DbM7だって可能です。

ドミナントはトニックに向かう和音では無く、どこか劇的な展開を作ろうとする和音、ぐらいに砕けてきました。この現代におけるドミナントの"意義"を「動性」という言葉に展開したのです。よりダイナミックな動きを求めているだろうと思わせる感覚 というように表現しても良いと思います。

人が西欧和声について学ぶと、この動性感覚をこの和音に与えないと成り立たないがゆえに、そう述べているだけで、個人個人の動性自体も差があり、絶対的な区分け自体が不可能で意味がありません。この増四度の感覚のみに動性という感情を投入します。この部分だけ慣例に沿っていくのです。

 

科学的な何かがそうさせているのではなく、増四度という、不協和に対して我々がこれまでの音楽感覚で刷り込まれた感覚を拡大解釈していくわけです。

「ざわつくコード」とか言ってもいいでしょう。

何を持って増四度と呼ぶかは、説論独自の周波数クラスがあるので、その範囲に含まれた時点で増四度か否かを数理的に判別します。この記事後半で触れます。

 

 

F7⇨C7(Cブルース)

また、ブルースでIV7⇨I7という進行の時、F7もC7に進むことでも同様にC7ならではのブルース独特の"濁り感""ざらつき感"、西洋和声にはない未解決解決感とも呼べる感覚を持ちます。

 

この落ち着かない感じも"動性である"とするわけです。

 

またC△には増四度はありません。これは静和音です。しかし同時に静和音には短三度を持つものがあります。短三度は増四度の半分です。

この増四度を含まない和音が持つ動性を「弱い動性」とします。安定した和音と言えますが、動かなければ音楽になりませんので、安定しているとは言わず微細な動性を含む、と表現しているわけです。

これも私が決めたことですので、どのように定義するかは個人個人異なると思います。よって、

G7→C△は

動和音から静和音に進行した、と表現します。

G7→Dbも同様に「動和音から静和音に進行した」と表現できます。

これで調や機能に関係無く、進行感だけを表現できます。不定調性的楽曲には非常に便利です。

 

また同時にこれを逆手に取るとCsus4には短三度も増四度がないので「動性はない」となってしまいます。これは方法論の構造が生み出す新しい論理です。拙論ではこのような和音を完全静和音と表現します。動性が定まった和音、動性が極まった和音とでも表現しましょうか。まるでジャンプした瞬間を撮影した写真のように動きが止まりダイナミックな動きのある写真となっている様を静性と表現して考えてみると良いかもしれません。

そのような意味ではCsus4は、必ずしも3度がぶら下がった不安定な和音ではない、と考えることもできるわけです。この和音はこの形態で極まっていると考えてみてはどうでしょうか。

さっきはドミナントの慣習から同棲を与えたのに、sus4も解決する慣習があるのだから、動性を持たせるべきだろう、とかお考えでしょう。

ここが微妙なのです。

そもそもの属和音の動性自体が、刷り込まれたものなので、まずそれを意識から区別しないといけません。それは自分が与えている感覚で和音が持っているのではない、と考えます。V7のがリセットされれば、sus4の動性もリセットされます。

そこで動性を与えるのはV7の増四度だけにしてみる、というわけです。

そうしないと次から次へと慣例を法則化する小音になり、気がついたら西欧和声の規則に則らないといけなくなります。

それを求めているわけではありません。

 

このような考え方から、sus4は解決させなくて良い、という考え方も作れます。

Csus4→C

はあくまで機能和声的な慣習的進行です。

Csus4-Dsus4はsus4が持つ静性を生かした連鎖、ということができます。機能和声論だとCsus4-Dsus4は非機能的、と言わざるを得ません。音楽的には美しい響きの連鎖を持っているのに「非機能」と言ってしまうのはもったいない、と思います。

同様に構造の面から考えると、

CmM7は静和音です。

CmM7(6)は動和音です。

c,c#,d,d#,eというクラスターは静和音です。

c,d,e,f#という和音は動和音です。

 

ダイアトニックコードは、

IM7  IIm7 IIIm7  IVM7  V7  VIm7  VIIm7(b5)

ですが、これらを分類すると、

IM7  IIm7 IIIm7  IVM7 VIm7が静和音、

V7  VIIm7(b5)が動和音です。

 

たとえば

Dm7 |G7  |CM7 |

において、

Dm7(b9)|G7  |CM7 |

とする行為は、「Dm7を動和音化した」と表現します。こんな和音「存在しない」というのが西欧機能和声の上では常識ですが、そういうことを取り払った方法論を作っておきたかったのです。

動和音になれば、機能和声論的な「他へ動きやすい動性が追加される」と考え、より進行がアクティブになる、と考えます。不協和でありえない進行、と言わなくて済むわけです。

 

また

Dm7|G7(b9) |CM7 |

であれば、G7はすでに動和音ですから、「G7を動和音の性質を強化した」と表現します(第二種動和音化)。

 

また、和音がC△であるとき、その上でメロディにf#を長い音価で使えば、"その空間は動和音化された"、ということもできます。

 

また一人部屋でギターのCコードを弾いたとき、隣の部屋から悲鳴が聞こえて、それがf#であれば、その空間は動和音化したということもできます。現代音楽的な価値観にも対応できます。

 

周波数さえ特定できれば、この分類により必ずどんな音響空間もどちらかに位置付けができます。

 

今回のお話は以上です。

下記はより専門的な話です。

(余談)cとf#の話 

cとf#は増四度ですが、これを

表面領域基音=c

裏面領域基音=f#

とします。これは1:√2という関係性や、増四度環などの構造からこの関係性を結びつけました。

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一つの音から見て増四度以外の音はすべて二種類あります。 

cの完全五度上はg、完全五度下はf、などです。それに対して表裏一体、一対の音の増四度という音を特別視するわけです。

G7をg,b,d+fと考えるとき、fはbの裏面領域の音です。同様に増四度を与えればいいのですから、G=c#、b=f、d=a♭を加えると、

G7(b9,#11)

という和音の完成です。このように元の三和音G△のすべての構成音の裏領域の音をすべて出現させた和音を「完全動和音」とします。

このように調やスケールにかかわりなく全く別の属和音的存在を作り出すこともできます。

 

またこれらは12平均律だけでなく、微分音にも当てはまります。

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<24平均律表>

この図の通り、例えば、cとf#の増4度関係は、

 (bとcの中点)254.1775≦c>269.2918(cとc#の中点)

(fとf#の中点)359.4613≦f#<380.8360(f#とgの中点)

という不等式で示せますので、微分音でも適用できます。今範囲がc-f#という増四度を形成する範囲内に周波数が割り当てられば、それは動和音と言えます。

 

4:33の"演奏時"にも空調ノイズが増四度を含めば、その小節空間は動和音化したと言えます。何もなければ静和音の状態です。

音集合だけでなく、パーカッシブな音也、怪しい金属音エフェクトが入れば、音響の中に増四度が含まれる確率が高まります。その音集合は、「動和音化したようなざわめいた感じになっている」などと表現することもできます。

 

教材の方ではより厳密に和音の構成音を分類しています。

それらの考え方は調性音楽ではない音使いを構成する時に分類したり分析したりするツールとして使うことができると思います。

 

ドミナントコードの動きやすさから発展した考え方です。

 

www.terrax.site

 

以前、二元論的な話について、厳密な意味で二極化された論理展開は難しいのでは?というお話を書かせていただきました。

circle.musictheory.jp

 

参考

www.terrax.site