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これもジェイコブ氏の動画からの展開です。
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動画の最初で述べられる「スーパーなんちゃらリディアン」はホールトーンスケールの前半分が半音で接合され続けた音階です。
c-d-e-f#までは全音、それから半音一つ挟みまた全音の同型4音を接合していきます。
g-a-b-c#となりcに解決せず、どんどん五度圏をめぐるように上昇していきます。
c-d-e-f#-g-a-b-c#-d-e-f#-g#-a-b-c#-d#-e-f#-g#-a#-b-c#-d#-f-f#-g#-a#-c...
Clydian(の前半)-Glydian-Dlydian-Alydian-Elydian....です。
このスケールの解説は以上です。。。
あとは雑談です。
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数学的な美しさをどのように実際の音楽で使うか、ですが、縦の世界で転調(転モード)が起きる、という発想が一番シンプルでしょう。
楽曲が途中で転調する
楽曲が文字通り単調にならないように、曲の調を変えることでダイナミックさを作る考え方です。
(図1)
こういう流れはもはやあたりまえですね。
ではこれが水平ではなく、垂直的転調をしたらどうでしょう?
下記のように、「音域で調が変わる」、というような楽曲構造で、あなたが良いと思える曲ができることをイメージできますか?
(図2)
全く意味は違いますが似た発想の技術に、シンセの「キートラッキング機能」があります。様々なエフェクトやフィルターをかけた時、音域によって聴こえ方や音量に変な癖がつかないように、どの音域でもある程度滑らかに変化して聴こえるようにオートマチックに倍音を変化させて出音をくっきりさせる技術です。素晴らしい発想です。
もしあなたが
「僕は低い方がメジャーで、高くなるとマイナーにしたいんだ。だって低い音は暗いだろう?そのままマイナーだとどんよりしすぎるんだ、で高いと今度はキンキンとしてメジャーだとひどく明るすぎるんだ」
という人がいたら、あなたはそうすべきです(不定調性論的思考)。このスーパーなんちゃらリディアンは、拡大解釈すればそういうことをしてみたらどうか?という提案や発想にも活用しうる順列の性格を持っています。
スーパーなんちゃらリディアンは、音域が上がることによってリディアンモードのアクシス(軸音)が変わっていきます。いわゆるモーダルインターチェンジしていくわけです。ここでは「軸音変換」という種類の変化です。
これはちょうど(図2)で示したように音域ごとに音階が変わる楽曲構造になる、ということが分かります。ただあまりに細かく変わり過ぎるような構造にすると音楽的理解をするのは大変ですから、下記のような使い方への展開から入っていくのが良いかな、と思います。
これはリディアンではなく、さらに発想をミクソリディアンに展開してG7の不定調性論的拡張性を利用して、シークエンスで四度移動させた形になって、最後つじつまを合わせてDbから主音cに戻ります(半音下降による強進行)。コードでいうと、
G7-C7-F7-Bb7-Eb7です。これは手癖で覚えていないと即興で組み合わせるのは難しいでしょう。しかしDAW上で楽曲を制作する等では容易にできます。
スーパーなんちゃらリディアンは、この手の縦の展開を可能にする象徴的な素材であり、一般理論ぽくはないですが、ジャズではすでに用いられている古い思想を象徴化した存在である、と言えます。ジェイコブ氏は「音階と言えるかどうか…」と言っていますね。
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そもそも1オクターブで音階が収束するというのはあくまで擦り込まれた常識に過ぎません。
CM7でGオルタードドミナントスケールを使っていいですか?
ジャズを考えてみましょう。
この二小節は、Cアイオニアンで支配されていると言えます。
しかしジャズでは、
このように発想してしまう脳の構造が出来上がっています。音楽性とかではなく、II-Vを拷問のように叩き込まれることで、CM7を見ると必然的にII-Vが頭に浮かんでしまうという一種のPTSD的な反射的な症状が出てしまうのです(個人差あり)。
時にこのようにモード解釈が 脳内では配置されます。正確にはモードが浮かぶのではなく、II-Vのフレージングの指ポジションがイメージになって浮かぶ、と言えばいいでしょうか。当然これは、
みたいになってもOKです。G7 CM7 |G7 CM7 |と分けているんですね。
さらにコンテンポラリーなスタイルでどんどん展開していけば、
が保たれていれば「ジャズ・フュージョン感」がでますので、結果
のように、最初に半音上のC#アイオニアンから入って、次の小節でCアイオニアンに帰着しても「おぉぉx」というジャズのドミナントモーション的感動は訪れます。
(そう、、、結局なんでもいいんだけど..)
つまりジャズにおけるトニックコードの本来のスケール観は、CM7を例にとると、
というような旋律的展開か
といったような、水平軸で変化する音階が一つの和音でセットになっているモーダルハーモニー音楽、ということもいえます。
一つの和音に一つの音階ではなかった、というわけです。でもこれは分かりきっている事です。なのになんでいまだにCM7ではCアイオニアンである、みたいなことを教えなければならないのか。いや、必要ですが。ただその先も教えていただきたいです。必要な人に。
そして、自然界はどうなっているか、というと、
(出典;倍音 - Wikipedia)
ですから、どんどん半音より細かくなり、高い音域にいけばいくほど「統一性」みたいなものは当然失われていくわけです。機能和声論も不定調性論もこれを無視して「どこどこまでを使う」と限定して方法論を創っています(反応領域)。
もちろんホールズワース神も2オクターブスケール、3オクターブスケールを用いる的なことを言っていた通り(出典;伝説のREH教則ビデオやヤングギター誌)、音階を1オクターブに収めるというのは基本的発想の最初の一歩に過ぎません。
だからスーパーなんちゃらリディアンのような発想で「自動的転モード音階」があっても良いかと思いますし、自然界はそういう風に一つの"調"などに縛られていないのだから、調というルールを前提にし続けるのではなく、自分はどうしたいの??にどんどん趣向を凝らしていく必要があります。
もしこの技法を即興的に用いることができるとしたら、現状はAIによる即興演奏ではないでしょうか。人間そのものがアナログな作業を嫌ってきているのに、これだけ増えた音階や方法論をどうやって適切に使い分けろ、というのでしょうか。
では、またちょうちょのメロディを使いましょう。
これをスーパーなんちゃらリディアン的に二分音符でリディアンを展開してみましょう。
このように振り分け、
自動的にメロディをそれぞれのモードに合わせて移旋させます。
そして味付けにそれぞれ主和音を置いてみます。これはもちろん自在にヴォイシングして(各種のリディアンから離れても)構いません。
(また不定調性論では、このリディアンのフレーズを一部変えてもOKです。)
下記和音を添えます。分かりやすいように頭打ちです。
音にしてみましょう。
五回聞くと慣れます笑。現代音楽ですから手間がかかるのは勘弁してください。
比べては恐縮ですが、ついアニメ映画「銀河鉄道の夜」サントラやいくつかのシーンを思い出してしまいました。
細野氏のあの心を掻きむしるエグイ音楽が忘れられません。
こちらで音楽だけプレビューできます。
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今回の音階とは関係ないですが(先の動画ではこの名称の音階存在についてただ質問を受けているだけです)、ジェイコブ氏は、微分音を使ってボーカルハーモニーミュージックを究めつつあります。まさに独自の思考です。