2017.8.9→2019.8.4更新
- モーダルインターチェンジって何?
- モーダルインターチェンジの類別
- 借用和音とモーダルインターチェンジ
- 同コード上でのモーダルインターチェンジ
- モーダルインターチェンジの思考の変遷
- "So What"、"Impression"
モーダルインターチェンジって何?
「借用和音」と捉えられる場合がありますが、借用和音そのものはモーダルインターチェンジの奥義そのものではありません。
モーダルインターチェンジとは=単純に「モードが変わること」です。
「旋法転換」「旋法変換」などと意訳できるでしょうか。
一般にジャズ理論におけるモーダルインターチェンジは、下記より述べる「軸音変換」による技法を差します。
モーダルインターチェンジの類別
1、旋法変換
例;Cドリアン→Cリディアン
2、軸音変換
例;Cドリアン→Dドリアン
3、旋法内変換(構成音は同じ)
例;Cアイオニアン→Dドリアン
4、自由変換
例;Cドリアン→F#ロクリアン
(出典;メーザーハウス;セオリーVI p33(1997)佐藤允彦著)
の四つとなり、3は普通の機能和声音楽ですし、モードジャズが始めたのは1、2です。このような変化を「モードの色彩変化」などということもあります。
4までくると「何でもありじゃん、、」です。ここから先は私は不定調性論で固めています。
借用和音とモーダルインターチェンジ
借用和音でも確かにモードは変わるのですが、それ以上に楽曲の変化感、和声の変化感の方が目立つのが「借用和音」の技法の特徴だと思います。
CアイオニアンがCエオリアンに変わることはハ長調からハ短調への転調であり、これをモーダルインターチェンジと呼んでしまうと、「転調」と「モードチェンジ」の考え方がごっちゃになってしまいます。そうなると「Cドリアン」→「Ebドリアン」も言ってみれば「転調」です。しかしそれでは、「モードを変えて演奏する」こと自体がただの転調となってしまい、マイルスが始めた新しい流れを「それって、ただの転調でしょ?」と言いくるめてしまうことになります。
転調とは主和音IM7またはIm7のモードがアイオニアン、エオリアンに限った状態で作られる伝統的な音楽の場合を指す(伝統機能和声的音楽)わけで、それに反し、IM7やIm7の時にその主たるモードがリディアンやドリアンになることが「モードジャズ」の応用思考でした。
このモーダルな変異を特性に持つジャズ曲における転調を「モーダルインターチェンジ」と表現したわけです。「転調」ではなく「転旋」なんです。
同コード上でのモーダルインターチェンジ
他の考え方として、例えば、
CM7 |CM7 |CM7 |CM7 |
において、
Cアイオニアン |Cリディアン |Cアイオニアン |Cリディアン#5 |
というように、同じコードでモードを変えて演奏するようなものもモーダルインターチェンジしている、と考えることもできます(この時、例えばCアイオニアンにおいてハ長調が想起されないようにする技術、が必要です-次の記事に詳細を書きました)。
これを応用すると、例えば次のような
Dm7 |G7 |CM7 |
において、
Dフリジアン |Gリディアンm7 |Cリディアン |
というように、キーをめちゃくちゃにしてしまうようなモードを使えば、これはモーダルインターチェンジの概念の拡張になっていると言えます。
モーダルインターチェンジの思考の変遷
・転調等によって、音楽に変化を創り出したジャズを極限まで押し広げたのがビバップです。その渦中に正反対の概念が生み出されます。モードジャズです。一つの旋法調子を一貫することで静謐さや神聖さを醸し出す民族音楽的な意味合いを持たせる新しいジャズの在り方。例;ドリアンだけで出来た曲等。
↓
・ビバップが激しいコード変換によるアドリブが、結果的に制限された手グセによって固まってしまい、表現の可能性が頭打ちになったと感じたごく一部の天才たちが、モードが一つになることで逆にリック(手グセ)から解放され自由が生まれる、と思ってやってみたわけです。しかしながら一つのモードの構成音が延々とつながっていくため、結果、意外に全体は単調になりました。ドリアン、フリジアンなどがジャズメンには好まれました。
↓
・そこからもっとモードジャズをドラマチックにするために、使用モードそのものを変化させていく(転調ではなく、転モードする)ことで、カッコよくした!
フュージョンの先駆けです。Dドリアン→Eドリアン。
→マルチモーダルな現代に至る。
"So What"、"Impression"
Miles Davis "So What"やJohn Coltlaneの"Impression"などはどちらも
D dorian(16小節)→E♭dorian(8小節)→Ddorian(8小節)
と変化します。転モード(軸音変換)です。
これがいわゆるモーダルインターチェンジの基本的な「モードのチェンジ」です。
ただし実際にはレコードを聴いていただければわかるとおり、即興時には当然厳密にこれらのモード音の使用が守られるわけではなく、基本的な土台をドリアンに置きながらも、バップフレーズを普通に出したりしますしごちゃまぜです。ちゃんと理解していたミュージシャンも少なく、過渡期の中で押し広げられ、すぐに頭打ちとなりました。まあそれがまた聴感上新しかったのですが。
このちょっとしたモードジャズの触感はバップ時代のマンネリズムにもがいた当時の彼らでなければ得られない快感だったのでは?などと想像してしまいます。
70-90年代にやり尽くされていると言われています。
当時のフュージョンを探して分析してみてね。
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機会があれば、ジャズ、フュージョンプレイヤーに、モードを次々変えて演奏していくスケール練習などを見せてもらうと良いでしょう。
続く
より突っ込んだモーダルインターチェンジの話はこちら
当ブログの楽理関連記事目次はこちら