2018.3.27→2020.10.3更新
Jessica / Herbie Hancock
たとえば、Cドリアンであれば、
Cm7(6)やCm7(6,9)
というコードが「ドリアンを表現する和音」となります。
<基礎>スケール/モード構成度数一覧表/avoid noteについて
ドリアンはm7を持ち、6も持つことが特徴ですから(これを"モードの特性音"という)、それらの音を短三和音にテンションとして含ませれば、「ドリアンの和音」ということができます。
Cm7(6) |Cm7(6) |Dm7(6) |Dm7(6) |
Em7(6) |Em7(6) |Fm7(6) |Fm7(6) |
という進行は、
Cドリアン |% |Dドリアン |% |
Eドリアン |% |Fドリアン |% |
という構造である、ともいえます。
各種のドリアンだけでソロをとることができます。
しかしながら、現代ではそんなことを意識しないで、
Cm7(6) G7 |Cm7(6) A7 |Dm7(6) |Dm7(6) B7 |
Em7(6) |Em7(6) C7 |Fm7(6) |Fm7(6) G7 |
というように合いの手のようにドミナントコードを挿入して、進行感を出すことができると思います。
また、モードを示す手法として、
Dm7 |G7 |Dm7 |G7 |
Dm7 |G7 |Dm7 |G7 |
というように二つのコードでモードを示すときがあります。
Im7とIV(7)をもつのはドリアンだけですから、この進行はDドリアンで演奏すればよいことになります。
もちろんそんなことを気にせず、演奏して構いません。つまりG7の小節の後半を、
G7 A7|
とDm7への進行感を高めるコードを挿入してアルペジオなどでc#をチョロ!っと出すと、ハッとするようなソロになったりします。
マイルスから進化したモードジャズは、放棄したはずのビ・バップを取り込み、組み合わされてより複雑なサウンドを作っていきました。
長い前置きでしたが、このハービーの曲はどうでしょう。
ホルン(?)の音色が入ったところからを書きます。
Gm7 |Cm7 |EM7 |AM7 |
BbM7 |EbM7 |B6 |E6 |
Gm7 |Cm7 |EM7 |A7 D E |
BbM7 |EbM7 |B6 |D7(b5) |
これは四度進行の連鎖が起きています。カタコトの鬱積した感情を述べては、とりとめも無い独り言のような雰囲気を出しています。
Gm7-Cm7
Em7-AM7
BbM7-EbM7
B6-E6
というのはすべてI--IVの関係です。
I=Cのとき、IM7-IV7すなわち、
CM7-FM7
という構造を作るモードは、アイオニアンしかありません。ですから、モード解釈的には、この進行はCアイオニアンを弾く、となります。
Gフリジアン |% |Eアイオニアン |% |
Bbアイオニアン |% |Bアイオニアン |% |
冒頭はこんな風になるでしょうか。
Im7-IVm7という進行は、Iエオリアンも該当しますのでGエオリアンでも構いません。
このように四度進行を連鎖させたモーダルな曲、ということもできるでしょう。
原則ではモーダルな曲では、調的要素を排除しなければならないので、ドミナントコードは厳禁です。しかしこの曲は、最後にD7が出てきます。
ではせっかく作り上げたモードの世界が台無しか?というと当然そんなことはありませんよね。
全体的にくぐもったサウンドで、時折陽転する晴れ間のようなドミナントモーションの感覚は、ある種の「救い」を感じさせます。