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音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

クールな停滞と焦燥=モード音楽の先に見えるもの;93, Jessica / Herbie Hancock

93, Jessica / Herbie Hancock

 

 

 


Herbie Hancock - Jessica

たとえば、Cドリアンであれば、
Cm7(6)やCm7(6,9)
という和声が「ドリアンを表現する和声」となります。

 

ドリアンはm7を持ち、6も持つ代表的なモードだからです。

 

つまり和音一つでモードが示されるような和音を楽曲で用いることで、モードを表現する、という拡大解釈を行い音楽を作るわけです。

 

====
Cm7(6) |Cm7(6) |Dm7(6) |Dm7(6) |
Em7(6) |Em7(6) |Fm7(6) |Fm7(6) |
という進行は、
Cドリアン |%    |Dドリアン |%    |
Eドリアン |%   |Fドリアン |%    |
という構造である、ともいえます。この場合は各種のドリアンだけを使ってソロをとることができます。

 

しかしながら、これはあくまでモード技法限定の解釈です。
現代ではそんなことを意識しないで、
Cm7(6) G7 |Cm7(6) A7 |Dm7(6) |Dm7(6) B7 |
Em7(6) |Em7(6) C7 |Fm7(6) |Fm7(6) G7 |
というように合いの手のようにドミナントコードを挿入して、進行感を出すことができると思います。

 

また、モードを示す手法として、
Dm7 |G7 |Dm7 |G7 |
Dm7 |G7 |Dm7 |G7 |
というように二つのコードでモードを示すときがあります。
Im7とIV7をもつのはドリアンだけですから、この進行はDドリアンで演奏すればよいことになります。

 

もちろんそんなことを気にせず、演奏して構いません。つまりG7の小節の後半を、
G7 A7|
とDm7への進行感を高めるコードを挿入してアルペジオなどでc#をチョロ!っと出すと、ハッとするようなソロになったりします。

 

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マイルスから進化したモードジャズは、放棄したはずのビ・バップを取り込み、組み合わされてより複雑なサウンドを作っていきました。

www.terrax.site

モードジャズは、結果的には、和声の展開をバップよりも煩雑にしていった張本人といえるかもしれません。

 

このハービーの曲はどうでしょう。トロンボーンの音色が入ったところからを書きます。

Gm7 |Cm7 |EM7 |AM7 |
BbM7 |EbM7 |B6 |E6 |
Gm7 |Cm7 |EM7 |A7 D E |
BbM7 |EbM7 |B6 |D7(b5) |

ちょっとシンプルに書きすぎたかもしれません。


これは四度進行の連鎖が起きています。

カタコトの鬱積した感情を述べては、とりとめも無い独り言のような雰囲気を出しています。

Gm7-Cm7
Em7-AM7
BbM7-EbM7
B6-E6
というのはすべてI--IVの関係です。

 

I=Cのとき、IM7-IV7すなわち、
CM7-FM7
という構造を作るモードは、アイオニアンしかありません。ですから、モード解釈的には、この進行はCアイオニアンを弾く、となります。

 

Gフリジアン |% |Eアイオニアン |% |
Bbアイオニアン  |%   |Bアイオニアン |%   |

 

冒頭はこんな風になるでしょうか。
Im7-IVm7という進行は、Iエオリアンも該当しますのでGエオリアンでも構いません。

 

このように四度進行を連鎖させたモーダルな曲、ということもできるでしょう。

 

本来モーダルな曲では、調的要素を排除しなければならないので、ドミナントコードは厳禁です。しかしこの曲は、最後にD7が出てきます。

 

ではせっかく作り上げたモードの世界が台無しか?というと当然そんなことはありませんよね。

 

これはこれでやっぱりハービーいいよね

というわけが分からないけど、一番一般に説得力のある言葉が出てきそうですね。


全体的にくぐもったサウンドで、時折陽転する晴れ間のようなドミナントモーションの感覚は、ある種の「救い」を感じさせます。

 

こういう進行で、こういう楽曲作れること自体、すごくないですか?

こうした進行と雰囲気がもたらすモーダルな和音・旋律が作る世界をよりポップに昇華した感じがあります。

 

たとえば、皆さんが日常、知らない街に行って、遠くの工場から聞こえる不思議な音があったとしましょう。どこか不可思議で、不気味で、ノスタルジックな。

そしたら、それを音楽に使ってその雰囲気を完成させればいいんです。それが不定調性論の音楽の作りかた。

Mobb Deep - Shook Ones Part II (HD) - YouTube

これは同曲のプレイをサンプリングしたものだそうです。

何をどう使っているか、その雰囲気と歌詞の世界観がどうアーティストを動かしたか、調べてみて下さい。理屈ではなく、どう感じたか、それをどうしたいか、という意思があれば、それ以上はいりません。

 

=====

Cm7→E△、EbM7-B6といった、根音の長三度進行(又はその少し前は短三度進行も)は当時特別視されていた進行の一つと言えるでしょう。

 

テーマが先に思い浮かんだのか、和声が先だったのか、たまたま生まれたのか、最初からオールスコア頭の中にあったのか、思いも及びませんが、もしあなたの中で何かが感じられたとしたら、それは理論的解析よりもずっと尊い"感情"であると思います。

 

それを頼りに、今日も頑張って行きましょう笑。

それしかないですから。

 

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