たまの不定調性進行分析
58, 海にうつる月 / たま
メジャー2ndアルバム「ひるね」からの一曲です。
奇麗ですね。夜の幻影というか。
Aメロ
|CM7 Bm7|F♯m |CM7 Bm7|Esus4 E|
|CM7 Bm7|F♯m |CM7 Bm7|Esus4 E|
Bメロ
|FM7(♯11) |Dm6 |Am Am7/G|D/F♯|
|FM7(♯11) |Dm6 |Am D |G |
====
サビ
|CM7 Cdim|Bm7 E7|Am7 D |G |
この最初のCM7、「暗!」って思いませんでした?
CM7ですよ?CM7っていったら、明るく洗練されたサウンドのはずです。
イントロもAメロと同じ進行なのですが、Esus4-EがEのキーのような印象を創り出し、CM7がEのキーのVIbM7のように響くからですね。
Cメジャーキーでいえば、
C△-C△-AbM7-
と流れる時のAbM7の、VIbM7の感覚です。この辺は作曲やらないとなかなかつかめない感覚ではあるかもしれません。
また、
|CM7 Bm7|F♯m |CM7 Bm7|Esus4 E|
のF#mへの流れも独特ですね。次のF#m-CM7という増四度進行が、何とも言えない陰鬱さを出しています。
|FM7(♯11) |Dm6 |Am Am7/G|D/F♯|
何度も出てくるこの「滝本さんの#11th」も、このサウンドのことをよく知っている人でないと使えません。
FM7(#11)、皆さんにはどんな響きに聴こえますか?その印象が様々に曲に応じて変化していくのを見極めながら使っていかなければ知っていても意味がありません。
そして次のDm6もじつは前のFM7(#11)同様、増四度を持っています。
滝本楽曲にはこの増四度というサウンドが実に効果的に使われています。
"何となくわかる気がする"、という人が多いのもこのサウンドの不思議な特徴だと思います。
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59, むし / たま
メジャー2ndアルバム「ひるね」からの一曲です。
Aメロ
G9 |% |Gm9 |% |
G9 |% |Gm9 |% |
Dm7 |% |Am |% |
Dm7 |% |A |% |
Bメロ
Em |B |E |A |
Am |D |D |
Em |B |E |A |
Am |D |D |Em7 |D |
このセンターコード転調の技法G→Gmはビートルズも用いていました。
ここではそれに輪をかけてつぎのDm7-Am、Dm7-Aのセクションでも同様な効果が見られます。
景色だけがめまぐるしく変わっていくような印象、「早い雲の流れ」にあわせた太陽と光の風景の陰影のような「風」を感じさせます。
Bメロの最初のEmはまえのAから繋がった時は、AのVmですが、しばらくするとIとして独立され、Bに繋がったときには、完全にBがVであったかのようなまたは、Bに対するIVmであったかのように振る舞わせています。
コードの機能が変わると、当然印象が変わります。
ちょっと試してみましょう。
CM7-Dm7-G7-F#m7-GM7-G7-F7-G7-AM7
ここにいくつもG7が出てきますが、それぞれで異なる印象があると思います。
こうした効果を機能の多解釈効果、として不定調性では機能超越の一つの理由、としています。
CM7-C7-CM7-CM7(11)-CM7-C7-Csus4-C(b9)
というような進行で、メロディを乗せるトレーニングをする、というような自主課題も良いのではないでしょうか。
またあえてコードを動かさない、というのもこの曲では使われています。
Em |B |E |A |
Am |D |D |
Bメロのこうしたチェンジは、コードのエコですね。
敢えて停滞感を出して、曲のジメっとした雰囲気を作っていると思うのです。
CM7-Dm7-G7-CM7では、
CM7=c,eをもつ。
Dm7=fをもつ。
G7=f,bをもつ。
ことで機能印象が成り立っています。すると、
CM7-Csus4-CM7(11)-CM7
これでもそれっぽい流れはできていることになります。
発想力ですね!
57, ワルツおぼえて / たま
Aメロ
F | Esus4 E |Em |F |
F | Esus4 E |Em |F |
Bメロ
D |Am |D | C#m F# |Bsus4 B |Bbsus4 Bb |
Cメロ
Dm |EbM7 |Dm |A |
Dメロ
Cm F |Bb Gm |Cm F#dim7 |G |
Cm F |Bb Gm |Cm F#dim7 |G |
Eメロ
F(b5) | C#m F# |C#m F# |C#m F# |Bsus4 B |Bbsus4 Bb |
これまた激しい旋調性。
キングクリムゾンを思わせるsus4波状攻撃。
F | Esus4 E |Em |F |
をみてみると、
F→Esus4はキーCメジャーの時の
FM7--Esus4-E7-Am7
という流れのIV-IIIを感じさせます。そしてE7に行かず、Emに行くことでCメジャーキーのIIImに流れた印象を持ってきます。そのあとFに行くとIVに向かった時のような、またはAmキーでのVIbに飛んだような感じを与えます。
それぞれのパートへの転調感が全く異なるストーリーを描いた群像劇のように展開していく、そう言うコンセプトなのでしょうか。
D |Am |D | C#m F# |Bsus4 B |Bbsus4 Bb |
ここでもD=IとしたときのVmであるAmへの進行感を契機に、IIVmであるC#mへの流れも追加して、不思議感を出しています。これがBsus4へのII-Vになっていて、そこからsus4連鎖です。
このsus4連鎖にはどんな印象を皆さん持ちますか??
Csus4-C-Bsus4-B
とか
Csus4-C-Dsus4-D
とか
Csus4-C-Bbsus4-Bb
などなど、いろいろな印象を与えると思います。sus4の解決進行は、良く知られた印象なので、ここぞ!という時だけ意味ありげに用いられます。
Cm F |Bb Gm |Cm F#dim7 |G |
ここは「枯葉」的ですね。さいごのGは本来Gmになるところです。これも「枯葉」と同じです。
繰り返されるとき、G→Cmのドミナントモーションを形作ります。流れやすくなる一時転調なんですね。
先にも書きましたが、この四度進行は、求心力が強く転調しやすい進行です。1キーに収まっているようで、いつでも調を飛び出せる進行です。
F(b5) | C#m F# |C#m F# |C#m F# |Bsus4 B |Bbsus4 Bb |
このF(b5)は解釈が異なるかもしれませんが、個人的な印象として、滝本さんの曲には、この#11thがb5thなどの形をとって何度か使われているような印象があります。
滝本さんの#11thは、「こう使えばいいのか!」と膝をたたかせる、分かりやすく効果的なサウンドだと思います。
たま情報提供;マーサ
シンガーソングライター マーサ(大櫛雅子)のブログ♪