音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

チック・コリア/"Spain"動画から~コード、スケール、アプローチを書き出してみる

2018.10.22⇨2020.9.26更新

www.terrax.site

 

Chick Corea - Spain - Live At Montreux 2004 - YouTube

有名なspain動画の演奏を一般ジャズ理論的に分析してみましょう。

もっと他にも注目したいポイントあるだろ!ってそれぞれの楽器の皆さんの思うところあるでしょう。

 

0:00-1:25 アンコールとあいさつとセッティング

MCで粋なことが言える人はそれだけでセレブです。

 

1:25-2:04 チック・コリア 

Bハーモニックマイナー的なアドリブイントロ

ここはパフォーマンスへの導入で「呼び込み」「注目させる効果」が生まれます。

最後のスパニッシュなb5thがいいですね。

f音=1:58あたり。

グッと聴き手を集中させる効果を感じます。

 

2:05-2:50 E・マリエンサルのF#フリジアンのソロ

最初はフリジアン的ですが、コリアが2:24にGM7を弾くことで、キーが生まれ、これがVIbM7の役割を果たし、Bマイナーキーが生まれます。色合いが薫るように広がります。

コリアはここでもb5th=f音をスパイスとして入れてきます。

最後はBmに吸い寄せられモードもBエオリアンになります。

 

2:50-3:42 J・パティトゥッチのソロ

F#フリジアン的な香りからスタート。中心音をf#にするようにメロディを組んでいく必要があります。

そして同様にVIbM7のGM7によってキーが生まれ、Bマイナーに落ち着きます。

 

3:43-4:04 再びチック・コリア

A    |GM7   |Bm7   |を小節レスな感じで二回繰り返します。

 

4:05-4:28 引き続きチック・コリア

再びF#フリジアン的な雰囲気に戻ります。

F#7と混ぜるようにして弾いてます。

F#ハーモニックマイナーP5↓をベースにクロマチックに崩したりしてます。 

4:22で一回Bmに戻ります。

その手前でF#7のテンションコードらしき濁った響きが鳴ります。

そしてフィルターをいじる。

 

4:28~6:08 Spainのメインテーマ

これはもう市販の譜面を買ってください。

www.jazzguitarstyle.com

素敵なサイトがありました。

コード分析の基本アナライズは上記などをご参考ください。

 

6:08-6:54 皆で見まわしていきなりコリアのソロ

GM7    |GM7    |GM7    |GM7    |

F#7     |F#7     |F#7     |F#7     |

Em7   |Em7   |A7   |A7   |

DM7  |DM7  |GM7  |GM7  |

C#7    |C#7   |F#7   |F#7   |

Bm7    |Bm7   |B7   |B7   |として

(下記やってることの小節振り分けは概観です) 

(1コーラス)

GLydian    |4bar

F#ホールトーン  |2bar

F#オルタードドミナント風   |2bar

Em7=コードトーン+9th   |2bar

Eb7コードトーン+9=裏コード |2bar

DM7コードトーン(6th→5thへのダブルクロマチックアプローチ)    | 2bar

GM7コードトーン+#11+同様に9th→rootへのダブルクロマチックアプローチ  | 2bar

C#7の4thからの半音階的装飾音とコードトーン    |2bar

F#7=root音から半音下降でM3まで#11thをフックに   | 2bar

Bメロディックマイナー   |2bar   |

Bオルタードドミナント的   |2bar   |

(2コーラス) 

Em7コードトーン崩し的    |3bar

F#オルタード又はコンディミ(フリジアン#3とコンディミ手癖が混じった感じ=F#7を先取り   |

F#フリジアン#3とF#コンディミ、b9,13など     |4bar

Em7(9)コードトーン  |2bar

A7のM3rd~Aミクソリディアン7(#11)的なクロマチックを挟んだ下降=スケールではないコードトーンを埋めている感じで   |2bar

DM7コードトーン  |2bar 

Eb7(13)  D7(13) |2bar 

C7(13)    |2bar   

B7(13)   |2bar 

Bb7(13)    |2bar   

Gb7またはB7の#9から三度でのオルタード的ハモリ   |2bar    

最後は解釈の違いがあると思います。聞いた感じの一時解釈と自分に合うコードに脳内変換してます。一度これで弾いてみてください。

 

6:54-7:38 ギャンバレのソロ

(1コーラス)

|   |    |Glydian   |    |

GlydF#7コードトーン  |4bar 

Em7(9.11)コードトーン   |2bar   

A#dim7コードトーン   |2bar 

Dメジャーペンタ  |2bar 

GM7(#11) コードトーン |2bar 

C#7(b9)コードトーンシークエンス    |2bar 

F#7(b13)コードトーンシークエンス   |2bar 

Bm7(9)コードトーンシークエンス    |Bm7   |

B7コードトーン   |2bar 

(2コーラス) 

GLydian    |4bar 

F#alterd dominat     |4bar 

Em7(9)コードトーン   |2bar   

A#dim7(コンディミアルペジオ下降)   |2bar

DM7コードトーン |2bar 

Glydian  |2bar 

C#7(#9)コードトーン    |2bar

F#7→F#7(b5)コードトーン   |2bar 

Bマイナーペンタ+b5th    |2bar

B7コードトーン   |2bar 

 

7:39-8:23 マリエンサルのソロ

(1コーラス)

Glydian    |4bar 

F#7(#9)コードトーンまたはフリジアン#3     |4bar 

Bナチュラルマイナー(またはBマイナーペンタ)   |4bar 

Bナチュラルマイナー(またはBマイナーペンタ)   |4bar 

Bマイナーペンタトニック  |2bar 

Bマイナーペンタトニック+b5th  |2bar 

Bマイナーペンタトニック  |2bar 

Bマイナーペンタトニック +M3rd   |2bar 

(2コーラス) 

Bナチュラルマイナー  |4bar 

Bハーモニックマイナー   |4bar 

注)本来Gリディアン、F#ハーモニックマイナーb5thなどと書くべきですが、演奏を聞いて頂ければわかるとおり、演奏音の重心はモーダルセンターにはありません。「モード名で解釈して弾いていない」という演奏はたくさん存在することを感覚的に覚えましょう。

Bナチュラルマイナー&装飾音を含む上行するシークエンス |8bar 

Bナチュラルマイナー+C#7(9)コードトーン    |2bar 

F#7(b9,b13)コードトーン   |2bar 

Bマイナーペンタ+9th    |2bar 

B7(b9,b13)コードトーン(バップ的リック)  |2bar 

 

8:24-9:07 パティトゥッチのソロ

(1コーラス)

Bマイナーペンタトニック    |4bar 

F#7(b13)コードトーン     |4bar 

Em7(9)コードトーン   |2bar 

A7(b9)コードトーン+6→5thアプローチ   |2bar 

Bm7(9)コードトーンまたはペンタトニック+9th的 |4bar

C#7の7thからクロマチック下降~オルタードドミナント 的リック   |2bar

F#ホールトーン的?  |2bar

Bm7(9)コードトーン的(Bマイナーペンタ内)   |2bar

B7(b9)コードトーン的  |2bar

(2コーラス) 

GM7(13)コードトーン周辺シークエンス |4bar

F#7のM7thなども含まれる即興的駆けあがり(スケール不明=断定振り分けできず、ほとばしり感あり)   |4bar

Bマイナーペンタトニック内   |2bar

Em7アルペジオ的   |A7オルタード(b9,b13を含むバップリック的)   |

DM7コードトーン  |2bar

GM7コードトーン  |2bar

コードトーンを支点にしたクロマチック下降   |8bar

 

9:08-10:14 ウェックルのソロ

(1コーラス) コリアのコードから

G(6,9)   |4bar

F#7(b13)    |4bar

Em7   |2bar

A7sus4(9)   |2bar

DM7(9)  |2bar

G(6,9)  |2bar

C#7(b9)  |2bar

F#7(b13)  |2bar

Bm7(11)    |2bar

B7(b13)   |2bar

(2コーラス) (3コーラス)も同様

二種類のシークエンスフレーズでドラムソロの流れにストーリー感を作っています

足でカウントをとってみてください。圧巻!

 

10:15- チック・コリアinterlude

(1コーラス)

GM7のコードトーンへのダブルリゾルブフレーズ   |4bar

F#7オルタードドミナントとコンディミが混ざったような |4bar

Em7コードトーンまたはEドリアン  |2bar

A7オルタードドミナント的   |2bar

フリーにクロマチック的に上行/C#  /D  /D#  /E  /F  F#  |4bar

※意図は分かりませんが、最終的にC#7の5thに流れます。コリア独自のII7への流れを同曲で確立していると思いますので、他の動画もチェックして癖を掴んでみてください。

C#7(b9)コードトーン+オルタードテンション    |2bar

F#7(#9,b13)系バップリック的な流れ   |2bar

Bm7コードトーン+5thへのクロマチックダブルリゾルブがスパニッシュ!    |2bar

B7(#9)  |2bar

(2コーラス) 

GM7(13)  |4bar

F#7(b13) |4bar

Em7(9) #4→5th  |4bar

DM7(9)  |4bar

Em7/C#またはG5/C#~C#7とF#7双方のUSTと捉えると面白い  |4bar

Bm7(13)  |4bar

マリエンサルがコリアにセンターを譲るように脇に避けていくところなんかイイですね。

(3コーラス) 

GM7(9)+m7→M7へのクロマチックアプローチ   |4bar

F#7(#9)+M7→rootへのクロマチックアプローチ  |4bar

Em7(9)+b9→9thへのクロマチックアプローチ   |4bar

DM7(9)  |4bar

C#7(b5,b9,#9) オルタードテンションで作るフレーズ   |4bar

Bm7(9,11)  |4bar

(4コーラス) 

GM7+m3→M3へのクロマチックアプローチ   |4bar

F#7(#9)+m3→M3へのクロマチックアプローチ  |4bar

Em7(9,11)   |4bar

DM7(11)通常のアイオニアンモード的  |4bar

C#7(b5,b9,#9) オルタードテンションで作るフレーズ   |4bar

Bm7(b6)エオリアン的  |4bar

(5コーラス) 

GM7  |4bar

F#7(b9)  |4bar

Em7(9)   |4bar

Dのアイオニアンモード的  |4bar

C#コンビネーションオブディミニッシュ  |4bar

ここでコリアがC#7ではコンディミだったのかな、という気付きがあったり。

先の「フリーにクロマチック的に上行/C#  /D  /D#  /E  /F  F#  | | | |」と書いたところも、コンディミが頭にあった上でゆらゆらと上がってるのかな??みたいな解釈も沸きます。

Bm7(9)エオリアン的  |4bar

(6コーラス) 

Gリディアン的  |4bar

F#ミクソリディアンb9的  |4bar

わぁー13♮かよ!ですね。ここでもコンディミなのかな??

Eドリアン的   |4bar

DM7__恐らくb5→5thへのアプローチなので、リディアンではない|4bar

C#7コンビネーションオブディミニッシュ的、これもm7→M13的。  |4bar

Bm7(9)  |4bar

(7コーラス) 

GM7(13)元のフレーズに戻ります |4bar

F#7フリジアンM3的,b13,11  |4bar

Em7(9)   |4bar

Dアイオニアン的  |4bar

C#7テーマに戻るフック  |2bar

F#7  |2bar

Bm7(9)  |4bar

 

12:53~ テーマ戻りエンディングまで

最後にお客さんにテーマを歌わせる暴挙。終始自分がテーマ吹いて良いのか、(いつものように)お客さんに歌わせるパートにするのか迷って出だしが遅れるマリエンサルが印象的です。空気を読む笑。

(マリエンサルは最後も静かに吹き終わりますよね、きっとこの演奏はお客さんメインなんだ、となんとなく感じたからではないでしょうか。この辺は人となりが出ると感じました。最後に吹きまくて盛り上がるし、吹かないことで演奏のhotの沸点を客席に残したままにできます)

 

ラストのかき混ぜ部分は、

A7   |A#dim7   |Bm7  ||

 

お客さんとシーケンスフレーズを駆使して7コーラスのソロは圧巻です。

リズム拍のブレなどもありますが、巧みに互いにわかりやすいフレーズを出し合うことで難なく戻しています。演奏業やっていたのでわかりますが「ミスは機会」です。色々なことを獲得するときです。

 

エンターテインメント意識もさることながら、b9が歌えるお客さんが集まっていることが条件(笑)。 終始リラックスしているムードで彼らのいつものテンションに比べるとグダグダなんですがそれが逆に分析しやすかったです。

 

ジャズのソロの学習は、

Swing時代の好きなアーティスト一人を完コピ。

Bop時代の好きなアーティスト一人を完コピ。 

新主流派以降の好きなアーティスト一人を分析(完コピは無理)。

である程度弾けるようになります。

リックを20ぐらい書き出して順にいつでもどんなキーでもテンポでも弾けるようにしてください。あとは組み合わせていくうちに独自のフレーズが出てきます。

"スケールポジションから即興で弾いて、活気的なソロをその場で生み出す"ができるというのは上記の練習を極めた人の言葉なので"雑誌に出てくる天才"の言葉を鵜呑みにしないように笑。逆です。フレーズからポジショニングに広がり、そこから指癖に従ってポジショニングを活用する、という発想になります。フレーズという型があって初めてポジショニング、になります。

つまり好きなアーティストのカバーの多層構造があなたの個性を生み出すんです。

 

以上お疲れ様でした。 

 

(参考)コリア独自のテンションとコードトーンを分けない不定調性ヴォイシング、ペダルの自由さ、広い左手、が間近でみれます。それぞれの通し演奏ではリズムアプローチの豊かさ巧みさがよくわかります。

Chick Corea Plays "Spain" (Tutorial with Overhead Camera and Transcription) - YouTube