音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

<基礎>和音の機能の解説4「機能性を持つ和音の解説3」

その3

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音楽理論を1年ほど勉強された方のためのまとめページです。このページが音を頭に思い浮かべながらすらすらと読めるように勉強してみてください。

機能性を持つ和音の解説・一覧表3

トウ・ファイブ 

II-V進行(トゥファイブ)

IIとは主音からみた2度の和音、Vは主音から見た5度の和音です。

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キーがCメジャーのとき、2度の和音はDm7で5度の和音はG7です。

ではこのII-Vという進行は、なぜここでピックアップされるほど有名なのでしょうか。

それはこのコード進行の根音進行に秘密があります。
一般的なコード進行、
F-G-Cという流れは・・・・
・FからGへの流れが全音下(長2度下)
・GからCへの流れが完全五度下(完全四度上)です。

 

対してDm7-G7-Cでは・・・・
・DからGへの流れが完全五度下(完全四度上)
・GからCへの流れが完全五度下(完全四度上)となってます。

 

先に五度圏を挙げましたが、この五度の進行が最も強い進行とされています。またはF-G-CではF-Gへの流れが全音でダイナミックではないためジャズメンがDm7-G7を活用した、という歴史があると思っておいてください。

 

ジャズスタンダードナンバーで多用され常套句となりました。

 

このII-Vは先のセカンダリードミナントと合わせてバリエーション豊かにアレンジされ、細分化していくことが出来ます。

 

CM7 C7|FM7(B7)|Em7 A7|Dm7(E7)|

Am7 A7|Dm7(D7)|G7    |CM7(G7)|

 先にあげたコード進行をさらにII-Vに分解してみましょう。

 

CM7 Gm7  C7|FM7 (F#m7(♭5) B7)|Em7 A7|Dm(Bm7(♭5) E7)|

Am7 A7|Dm7 G7|CM7 (G7)|

 

マイナースケールのIIがIIm7(b5)のため、マイナーコードに帰着させるII-Vは、

IIm7(♭5)-V7
となります。転じてIIm7-V7もIIm7(b5)-V7も両方II-Vとして自在に使われるようになりました。

CM7 |A7 |D7 |G7 |

この進行もII-Vに分けてみましょう。

CM7 |Em7 A7|Am7 D7|Dm7 G7|

となります。さらにドミナント7thを裏コードにも出来ます。

CM7 |Em7 D#7|Am7 G#7|Dm7 Db7|

さらに、変化させ、

CM7 |A#m7 D#7|D#m7 G#7|Dm7(b5) G7|

と変形・代理することも出来ます。マイナーキーでのII-Vをメジャーキーで使うことももちろん出来ます。

これらをすさまじい速さでアドリブを連ねていく、という音楽がビ・バップ(Be-Bop)です。

元のコード進行はG7-CM7です。

これをダブルドミナントにします。D7-G7-CM7ですね。

さらにドミナントコードを組み合わせます。


C7-F7-B♭7-E♭7-A♭7-D♭7-G♭7-B7-E7-A7-D7-G7-CM7とします。

これをすべてII-Vに分けます。

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れらをさらに裏ドミナントにしたり、それをさらにII-Vに分けたりして自由に進行感を感じてみましょう。ゲーム的な作曲です。

通例のコード進行に一味加えたい時やスムーズな転調や一時転調などに参考にしてみると面白いでしょう。

 

フローティングドミナント

これはG7-CというドミナントモーションやDm7-G7-CM7というII-Vが研究され尽くされ、それらの響きに新鮮味がなくなり、新たに現れたドミナントモーションの形です。
具体的にはII-V-Iという形を
サブドミナント+ドミナント-トニック
と機能を合体させ響きを洗練する、という発想です。


KeyがCメジャーであるときは、F+G、Dm7+Gというのが一般的で、サウンドとしては、

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上記したようなコードとなります。これらを用いて、
Dm7-F/G-CM7
Dm7-Dm7/G-CM7
Dm7-G7sus4.13-CM7
といった進行で弾いてみてください。

柔らかい進行感です。フローティング=浮遊の意味合いどおり、希薄化した軽い響きがモダンです。

同時に前後にsus4やadd9といったコードを併用して用いることで浮遊感をより演出することもあります。

 

 パッシングディミニッシュ

passing diminish と銘打つこのコードはダイアトニックコードをスムーズにつなげる役割をするコードです。

passingとはpass「通過」という意味合いを持つコードです。

このような和音を「経過和音」ともいいます。例を出してみましょう。

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キーがCメジャーの時、

CM7 |Dm7  |

というコード進行の際C#dim7という経過和音を挟んだときのヴォイスリーディングです。
このC#dim7の構成音はC#,E,G,A#ですが、この構成音はA7(♭9)の構成音に含まれています。
A7(♭9)=A,C#,E,G,A#
すなわち、このC#dim7-Dm7という進行はA7(♭9)-Dm7という流れに似ていることが分かります。

これはマイナーキーでのドミナントモーションです。

つまりパッシングディミニッシュコードはマイナーキーでのドミナントモーションの簡略版といえます。

また、
C#dim7=Edim7=Gdim7=A#dim7
という等式が構成音の共通性から存在しますので、これらのディミニッシュコードに代理してもかまいません。

 

トニックディミニッシュ

このコードは、トニックコードの機能を有していますが、特殊なコードです。

トニックコードになる条件はI,IIIを持つこと、またはI,III♭を持つコードでした。

 

まず以下のディミニッシュスケールを見てください。

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このスケールはC Functional diminish(機能的ディミニッシュ)スケールというものです。

このスケールからCとE♭を持つ和音を書き出してみました。

これらのコードは非常に癖のあるサウンドがするので、「エンディング効果」という形で下記のように使用してみるのはいかがでしょうか。

 

Dm7-G7-CM7-Cdim7
Dm7-G7-B△/C


トニックマイナーの特性音を持つコードですので、短調に終止ですが、さらに険しいサウンドを作り出し、曲調によっては非常に効果的なエンディングで締めることも出来ます。ジャズではよく用いられます。

紆余曲折を歌う曲などではエンディングのコードがただ明るい和音では説得力がなく、暗い和音でも強さを感じられません。

だからトニックディミニッシュのような「苦い和音」にしてガーンと掻き鳴らすことで、紆余曲折の歌の主人公のこれからの強さ、これからの試練を示すことができます。

このとき歌い手は自信に満ちた笑顔で振舞うことでとてもカッコ良いエンディングになります。日本よりもアメリカンジャズエンターテインメントではよく使われる概念です。別にトニックディミニッシュコードでなくてもかまいません。

歌の最後を締めくくる説得力のある和音を探して、ストーリーを盛り上げてください。

 

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※(注)音階(音の階段状表記)の原則としてはA#はB♭♭(ダブルフラット)で表記します。

こちらはC conbination of diminishスケールというのものでC7を含んだドミナントコードで使用するディミニッシュスケールとされています。ここではあえて反則技でトニックコードを拡大解釈し、CとEを含む、という意味でC7(♭9)というコードをトニックコードとして扱ってみましょう。

これにD#すなわち#9thも追加するとトニックコードの特性音とトニックマイナーの特性音を含んだコードが完成します。C7(♭9,#9)というコードですが、一般的ではないコードなので省略しました。

これらのコードも、
Dm7-G7-C7(♭9,#9)
Dm7-G7-A△/C
とし、「トニックとして」弾いてみると、確かに苦いエンディングを表現できます。

人生は苦味を笑顔で乗り越えるところがいいんですね。

 

ノンダイアトニックコード

メジャーキーとマイナーキーの二つのダイアトニックコードの種類以外の和音を全て「ダイアトニックコードではないコード」という意味で「ノンダイアトニックコード」という呼び名で扱われています。

このページで言う、セカンダリードミナントコードや、ドッペルドミナント、トニックディミニッシュやパッシングディミニッシュなどの変化和音、セカンダリードミナントコードでII-Vを作る際のコードなどがノンダイアトニックコードとなるでしょう。

 

しかし昨今の音楽はこのノンダイアトニックコードこそが様々な緊張感や展開感覚を曲に与え、演奏者や聴き手、作り手に多くのインスピレーションを与えていることから、作曲を目指す人は、学習時にいかにこのノンダイアトニックな感覚を自分なりに消化出来るかが一つのステップアップのカギでしょう。

 

ちなみにフローティングドミナントコードの構成音はダイアトニックスケールの音から出来ているのでこれは、ダイアトニックコードの変化形といえます。

 

クリシェ、回遊進行

ライン・クリシェ、変化和音(回遊)進行

楽曲のコード進行で、一つのコードが様々なタイプに変化して進行していく特殊なコード進行です。
1、トニックタイプのコードがドミナントコードに変化して行く進行例
C C(#5) C6 C7 F F(#5) F6 F7 Em7 Am7 Dm7 G7

2、トニックコードのルートが下降するタイプ
I,    C CM7 C7 FM7

II,   Cm  CmM7  Cm7  Cm6  Fm  FmM7 Fm6

 

またこれとは別に、コード構成音が微妙に変化しているだけのパターンもあります。
例;  C  C(#5)  C  C(-5)

 

またルートやテンションが変化していくだけの例もあります。
ルートが変化する例1  

C△ C△/B♭ C△/A  C△/A♭(同一コードで・・・)

 

ルートが変化する例2  

C△ G△/B  Am7  G△  F△ Em7 Dm7 G7(ルートが下がる) 

 

ルートが変化する例3  

C△ G△/B  B♭△ F△/A  A♭△ E♭△/G~(転調しながらルートが下がる)

 

ルートが変化しない例 

C△ E♭△/C  D△/C  D♭△/C

 

テンションが変化する例1  

CM7(13)  CM7  CM7(#11) CM7


テンションが変化しない例 

CM7(9) Dm Em7 FM7(13) G7 Am7(11) D7 G7(トップをD音で統一)


テンションが変化する例2  

CM7(9)(top D) Dm7(top C) Em7(top B) FM7(top A) G7(top G) A7(13)(top E) D7(#9)(top F) G7(13)(top E) CM7(9)(top D)  

 

ラインクリシェとはLine cliche(フランス語)と表記し、常套句というニュアンスを持つ音楽用語です。

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参考

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和音の進行感についての不定調性論の考え方はこちら。

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