2017.12.6⇨2020.9.20更新
鉄板のコード進行なので、ぜひ一家に一進行、曲を作られる方は、一度この曲のコード進行使って一曲作ってください(難しいよ!)。
ちなみに「カノン進行」というのは、パッヘルベルのカノンにて用いられた音楽的流れ、というだけで「カノン」(追唱)の音楽形式の用語との意味はまた少し異なります。
この曲は"よくあるコード進行"をどうやって洗練させるか、という教材のような曲です。
AM7 |E/G# |F#m7 |E |
DM7 |C#m7 |Bm7 |Bm7/E E7(b9) |
AM7 |E/G# |F#m7 |E |
DM7 |C#m7 |Bm7 |Bm7/E Eb7 ||DM7 |
というのがこの曲の一番有名な部分です。
"きっと君は来ない"につながる、"雨は夜更け過ぎに~" からのところですね。
Aのキーで分かりづらい方のために、Cのキーに移調してみます。
CM7 |G/B |Am7 |G |FM7 |Em7 |Dm7 |Dm7/G G7(b9) |
CM7 |G/B |Am7 |G |FM7 |Em7 |Dm7 |Dm7/G Gb7 ||FM7 |
このラインで、
G/BというのはG/Bという意味(分数コードといいます)で、このコード進行のベースラインが、
ドーシーラーソーファーミーレ~
と下がっていくラインになり、これがカッコいいんですね。
これは中級者になるとこだわりとして気がつくところでしょう。
コードではなく、横の流れ。
この進行を三和音にして弾いてみてください。
C |G |Am |G |F |Em |Dm |Dm/G G |
まったく雰囲気が変わると思います。
この差異を「全然違う」と捉えるか、「結局おんなじ」と考えるかでも音楽性に違いが生じます。もちろんどっちが劣る、という意味ではありません。
自分が感じる方向を信じて追求してください。
で、またこの進行では、Dm7/G、G7(b9)、Gb7というコードが勉強できます。
この三つのコードがなくても曲は"成り立ち"ます。
CM7 |G |Am7 |G |FM7 |Em7 |Dm7 |G |
CM7 |G |Am7 |G |FM7 |Em7 |Dm7 |G ||FM7
というシンプルな流れでも弾けてしまうんですね。
このb9をつけるかどうかでも、進むべき音楽性が決まります。
「そんなのつけてもつけてなくても関係ねー」と思えば、それでも良いと思います。
ただし、音楽をたくさん聴いて作ってアレンジしてから決めつけるようにしてくださいね。
この三つのコードですが、
Dm7/G=フローティングドミナント
G7(b9)=マイナーキーのドミナント7th
Gb7=裏ドミナントコード(解決するコードの半音上の属七和音)
最初はなかなかなじめないかもしれませんが、そういうもんだと思って使ってみながら、その雰囲気を体に入れて覚えていってください。
例えば
Dm7 |G7 |CM7 ||
これだけですと、
「はい、こうしてこうなりました。」的な「断定的文章感」だと思います。
まずこれを感じてください。
その流れが持つセンテンスの意味を。
そしてこれを、
Dm7 |Dm7/G |CM7 ||
とすると、ちょっと変わって、
「はい、こうしてみますとね、いかがでしょうか。」という少し優しい感じになり、断定口調が「和らいだ感じ」=音楽的印象、音楽的クオリアにならないでしょうか?
感じ方はそれぞれですけど。
それを普段あなたが使う曲のリアレンジで使い分けるんです。
そして、
Dm7 |G7(b9) |CM7 ||
とすると、
「どうだい、こんなぐあいだよ、どうかな?」
というような、ちょっと「スタイリッシュな感じ」になるかと思います。
まるでドラマのセリフ回しみたいな口調、一般では絶対言わないような。
だから繊細でおしゃれな曲で使ったりしますね。ストーンズを演奏するときは使わないでしょう?
さらに
Dm7 |Db7 |CM7 ||
とすると、
「はい、そうそう、そうそう、そうなるよね。」
という感じで知らず知らず説得されるような流れ、といいましょうか。
あとはそういう印象がその曲に合うかどうかをあなた自身が選別していかなければなりません。
そういうところで、どのくらい曲を知っているか、音楽の文脈を知っているかが問われ始めます。
そして、このレベルで知りすぎると理論に縛られるようになる時期も。でもその後で不定調性論的思考ができれば適材適所で音楽できますね。
次につながるコードとの兼ね合いでいろんな感情を自分に生み出させるよう訓練するんです。
さらに、この曲の場合、最後の裏ドミナントが応用されていて、
|Dm7/G Gb7 ||FM7 |
となって展開部に入ります。
よくみると、Gb7がFM7の裏ドミナントになっています。
このかんじ、どんな印象を感じるでしょうか。
「そしたらさ、」
というような、次に向かいますよ感、が作られていると思います。
これをもう少し細かく書くと、
|Dm7/G G7 Gb7 ||FM7 |
となります。一拍ずつコードが変わる感じです。
こうしたコードは、音楽の旋律にはあまり関係がなく、装飾コードとされるもので、楽曲の楽想が豊かになり、説得力を増してくれます。
こういうのを入れると鉄板の進行の強さに頼らず、自分のやりたいことが見えてきます。
鉄板の進行は、まるで自動小銃を持って街を歩くような感じ、怖いもの知らずです。
自分には何の力もないのに。
世間に浸透している洗脳の力にあやかっているだけですが、鉄板の進行は無条件で人の心に入っていきます。ちゃんと「今自分はそれを使わなければならない状況か」を考えましょう。
何より
「雨は夜更け過ぎに、雪へと変わるだろう」
という歌詞に感動しませんか?
これ「歌詞世界の魔力」ですよね。当たり前のことをただ書いただけですが、呪文的な魅力というか、俳句的な抒情があるので、日本人にはしっくりきます。
また、「雨は真夜中に、雪へと変わるだろう」
でもなく
「雨は朝を待たず、雪へと変わるだろう」
でもなく
「夜更け過ぎ」
という語も。今はあんまり使いません。
とても詩的で、音感もよく、ストーリーの始まりを表していますね。何より力を持っています。雨がみぞれっぽいのか、雨よりも光っているのか。
クリスマスに雪が降るってことは、今年はもしかして、だってクリスマスに雪だろ?
みたいな啓示だらけのシーンですよね笑。いわゆる
b9thが乗りそうな感じ
しませんか?笑。
大切なのは、この「夜更け過ぎ」という言葉が出た時に、
こりゃ鉄板進行の力に負けない歌詞だ!!!
と思えるかどうか。です。採用!!って。
コード進行の力より、この言葉の方がすごいから、全体のオリジナリティが勝ってるんじゃないですか。
だって、もう「夜更け過ぎ」って僕らは歌詞で使えないですもんね。絶対パクったって思われちゃうぐらい強烈な山下語になっています。
著作権があるんじゃないか、とか思ってしまう笑。
そういう曲、言葉、アレンジに自分自身もぜひ出逢いたいですね。