音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

彷徨える疾走感~Teenage Riot / Sonic Youthのコード進行分析

2017.10.26⇨2020.9.19更新

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米津玄師作品の記事はこちら。

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こちらは元祖TEENAGE RIOT。

open.spotify.com

オルタナ系のコード進行は、「わけわかんない系のカッコ良さ」で済まされることが多いようなので、不定調性論で一度だけソニックユースやらせてください。 


「型にはまらない」というのは、決して実験性が高い、とかトリッキーなのではなく、単純に自分らしくやってるスタイルが世間の既存型に収まらないだけ。

 

Teen Age Riot
<TAB>

海外にはフリープリンタブルなものがあるのですね、、、著作権を守って活用してください。

www.guitaretab.com

できれば音源を聴いて耳コピしてみてください。

 


「変則チューニングは邪道だ」と決める前に、少し考えてみてください。

ちょっとチューニング変えるだけで、いつもと同じ押さえ方で全く違う響きが出るんです。

 

この曲冒頭は、
D5 C5|G5 C5 |を繰り返します。コード表記は概略です。このリピート感が「焦燥」や「停滞」「圧迫」の音楽的クオリアをしっかり発信しています。

もしこの「変なギターコードの連発」から、なんらかのイメージを受け取れれば、あなたは変則チューニングの魅力を理解しています。

その魅力がなんであるか説明できなくても良いと思うのです。

 

"それ"を感じられることがすなわちいろいろな思考や行動の動機になります。


彼らはそれらの"新しい"響きに感応するように、歌い演じます。その響きが作る何らかのメッセージに感応してる歌い方/雰囲気ですよね。


2:00前後からのアップテンポの独特の疾走感も、「自由だけど、なにすればいいかも分かってるけど、いったいこれ、どこに行くんだ?感」はまさに僕らの80年代の裏側、ですよね笑。平和と幸福の上での葛藤、があったものです。まるで手の届かないところがなんか痛いような気がするような....。


ここではGメジャーの基調もありますが、それに霧でもかけるようにGsus4が同時に響きます。
ジャズがGsus4にM3rdを(又はその逆も)乗せようとした理知的な試みとは正反対の、混沌と迷いをポップに表現するための不協和になっているところが見事です。

歌のメロディラインも結果的に9th、11thあたりを行き来して3rdをただの経過音として使うような感じが良いのです。

「当たるところを探っていたらそこに辿り着いただけ」とか言われそう。

 

少しずつメロディと構造が固まっていきます。
G |Gsus4 G |G |Gsus4 G |

D5(11) |G5,6(またはD5/G) |
というようなかんじでしょうか。

D5(11)、G5.6というのは、あくまでベースと響いている音の感じで取っています。

 

この曲モーダルだなぁって感じます。

"Gアイオニアンモードの曲"だと思います。
モードの曲は、
・その主和音とモード音を提示すること
・機能和声を用いないこと
等ですから、見事に合致します。アイオニアンが普段使ってるドレミファソラシドとは全く違う感じ。そこはきっと変速チューニングだから。普段聞かないギターの響きになってる。


オルタナティブのこうした「モードロック」という側面は、もっとジャズやロックの教材でクロスオーバーの例として取り上げて考える材料としても良いのではないでしょうか。

 

ドラムのビートがスウィングではなくて、8ビートである、ことも重要かと思います。
モードジャズは「停滞」が主な雰囲気でしたが、モードロックは

「彷徨える疾走感」

をスリーコードロックより具体化しているではないですか。

さまよっているはずなのにフォークロックはちゃんとトニックに収まっている、という予定調和のような矛盾に彼らは理屈ではなく気がついて"変則"チューニングで、「同じ弾き方をしても同じ響きにはならない」という若者独特の疎外感を表したのでしょうか。表していなくても、結果的にそういう音楽ができれば、それはやはり答えだと思います。

 

題名;Teen Age Riot

「10代の暴挙」

まさにしっかり題名にも全てが体現されていますね。こうした感受性の脈絡こそが、彼らの音楽をただのファッションではないことを分からせてくれます。

 

 

この先にriotの権化のようなカート・コバーンが現れます。

ソニック・ユースのサーストン・ムーアとキム・ゴードンと知り合うチャンスとなった。サーストンとキムについてを尊敬するほどではなくても一目置いてきたのだが、サーストンと金が自分は同等に扱ってくれたので、カートの自尊心はくすぐられた。

...Heavier Than Heaven

対立関係、などと言われるかもしれませんが、ソニック・ユースはニルヴァーナを支えたバンドの一つでした。

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