音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

モーダルインターチェンジって何?2

ちょっと難しい話
純正なモーダルインターチェンジ、という方法論は、先の記事の通り、モードジャズにおいて用いられた方法論です。

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例えば、
Dm7 |Dm7 |Dm7 |Dm7 |G7 |G7 |G7 |G7 |CM7 |CM7 |CM7 |CM7 |
というモード音楽にも機能和声にも取れるコード進行があったとします。


この時、次の立場で演奏することで各伝統的な音楽表現が可能です。

 

ケース1
<機能和声音楽的に演奏する場合=ソロをとる、という部位に特化します>
アヴェイラブルノートスケールで考えることになりますから、コードスケール=機能和声におけるコード進行の各コードに該当するとされる各音集合、について、
Dm7=D Dorian scale
G7=G Mixo-Lydian scale
CM7=C Ionian scale
を用いると学習し、さらに、
D Dorianに於けるavoid noteであるM6th音=bはなるべく過度に使用しない(八分音符以下で、以下同)という意識やG Mixo-Lydianに於けるavoid noteであるP4th音=cはなるべく過度に使用しないという意識、C Ionianに於けるavoid noteであるP4th音=fはなるべく過度に使用しないという意識を持って演奏する、ということになります。

これは教科書に書かれている通りです。

まあ感覚で弾いて学ぶもので、上の理屈はあくまで教材に乗せるための便宜上のものです。

 

ではモード音楽の場合はどうでしょう。
ケース2
<モードジャズ音楽としてソロをとる場合>
モードの考え方を応用すれば、各コード感の関係は一切なく、四小節毎に独立したモードを該当させ演奏させることを考えます。
またこの時、この進行が、CメジャーキーのII-V-Iであることを察知するでしょう。そうなるとこれは機能和声を想起させる可能性がありますので、
まず各コードを、より浮遊感の有るモーダルハーモニーに置き換える必要があります。

モーダルハーモニーとは各モードの特性音=characteristic noteを生かしたハーモニーを作ることで、機能和声的な響きを消し、モード音楽ならではの浮遊した響きを作り上げます。


各特性音は、
D Dorianの特性音であるM6th音=b=AeolianとPhrygianにない音、比較できる音として
G Mixo-Lydianの特性音であるP4th音=c=Ionianにない音、比較できる音として
C Ionianの特性音であるP4th音=f=Lydianにない音、比較できる音として
ですから、例えば、
Dm7 |Dm7 |Dm7 |Dm7 |G7 |G7 |G7 |G7 |CM7 |CM7 |CM7 |CM7 |
をモードに置き換えると、
D Dorian |D Dorian |D Dorian |D Dorian |GMixo-Lydian |GMixo-Lydian |GMixo-Lydian |GMixo-Lydian |C Ionian |C Ionian |C Ionian |C Ionian |
となり、これをモーダルハーモ二ーで埋めないと、モード音楽の特性を示すことができません。


例えば、
Dm7(13) |Dm7(11,13) |Dm7(13) |Dm7(11,13) |G7sus4 |D7sus4 G7sus4 |D7sus4 |Csus4 |Esus4/C |Csus4 |Esus4/C |
などです。極端に機能和声を避ける、という意識です。他にも導音の動きや、トライトーン関係になる和音を避けたり、というようなこともせよ、と私は学びました。


そして、ここからソロをとる際にも、特性音を意識的に用います。
そのモードがそのモードたる特性を表現できるからです。
D Dorianの特性音であるM6th音=bを積極的に用いる意識、かつ軸音=axisであるd音に重心を置いた旋律作り
G Mixo-Lydianの特性音であるP4th音=cを積極的に用いる意識、かつ軸音g音に重心を置いた旋律作り
C Ionianの特性音であるP4th音=fを積極的に用いる意識、かつ軸音c音に重心を置いた旋律作り

さらにC Ionianは機能和声そのものですから、b→cへの動きを導音仕様による機能和声的な旋律になるのを避けるために考慮したりする、ことでモードが本来持っていた野性味をあぶり出すように演奏する、というモード音楽の別の難しさと制限が理論上はどんどん顔を出してきます。


しかしビバップによって固定された進行からの解脱を図るためのこうした試みは、音楽の進化の過程で欠かすことはできなかったのでしょう。


調を意識させないよう、主和音を意識しないよう、伝統的な旋律の流れを意識ししないようにします。伝統的で「美しい」と人が言わないであろうという旋律を構成することでモード音楽の存在意義は増します。
そのあたりはコルトレーンが吹きまくった演奏を見れば一目瞭然です。あの野性味が作り出す雰囲気、あれはまさに彼がモードという音楽に見出した、バップではないもの、自分らしさの根源のようなものに共感して作り上げた演奏スタイルであるとおもいます。

 

もちろん、これ全部Cアイオニアンで弾いてもいいですが、機能和声音楽の感じを作らないように、跳躍音程を用いたり、機械的な四度メロディとかを用いないと、モードの原理は上手に機能しません。

まあ、「あれトリッキーだね」みたいなフレーズがモーダルなフレーズですが、実際の区別とか線引きとかはないのです。本人が上記ルールをどのように解釈して弾くか、だけで。厳密にモード音楽、"勇者はもーだるいんたーちぇんじを発射した!!"みたいなことって別にそこまで何か感慨深い、というものでもないように思います。

実際の例を見てみましょう。

     

Kind Of Blue


So What by.Miles Davis

 

kind of blue 


Kind of BlueのSo Whatのマイルスのソロ、始まってすぐC#音=M7thが出てきます。Dマイナーを想起させる音です。これは考えようによっていかようにでも説明できてしまうと思います。モードの軸音に重点を置くための仮の導音、みたいな発想をしたら、モード音楽のさらに上のフュージョン的価値観を開始2分で成し遂げている、とも言えます。


またEbドリアンでもM7thを使い、マイナーペンタトニック+b5thもでてきます。

そしてしばらくするとDdorianなのにb13thが、"ついに"それはそれは切なく入ってきます笑。いわゆる普通のエオリアン、さきほどあれだけ「機能和声を感じさせてはいけない」といった一番使っちゃいけない音です笑。

 

しかしこれが、とても刺激的なb13thです。ドリアンが基調になって、クールな感じできたところにいきなりの親しみやすい色彩。
まるでずっと笑わない女性が、ふっと切ない表情などを見せる瞬間のような魅力しか、もう私は感じません笑。

 

結局モードジャズの魅力というのは、こうしたモードの混合、色彩の変化感の発見というところから新たに創造されていったのだと思います。
続くコルトレーンも要所要所でA7のバップフレーズを挟んできます。ルール無視かよ感。彼らはどの程度このときモードの約束について議論してレコーディングに臨んだのでしょうか。マイルスがせっかく楽譜にモード音を書いたのに笑。
すみません、この辺の経緯を私は知らないので理解違いがあるかもしれません。


そしてなんとかかんとか多少クールなモード曲であり続けたところが、次のアダレイ登場です。「それ、バップじゃん」というフレージングでそれまでの緊張感を全て更地にしてくれます笑。

ノリもバップで、どんどん曲もクールからホットに変わる笑。
こうしたモードを下地にした音楽の変化こそがその後のフュージョンミュージックの大きな可能性になっていった事は間違いありません。
こんな面白い演奏、確かにないです。スタートラインが違うだけで、こんな新しい音楽が出来ちゃうのか、と感じます。

 

<ヴォイシング>
で、その厳密なルールに戻りますと、
モードジャズでは和声も異なる配置で演奏することでモードの効果が増します。
この時、4度和音のような和音が現れるわけです。4度和音は機能和声を想起させづらい和音だからです。
例えば、C Ionianの和音として、
g
d
a
e
と積み上げた和音を使ったりします。極めてテンションが中心となることで、「いかにもなCメジャーコード感」がなくなります。

こうした工夫の上でモードの響きが確立され、4度和音の使用もそれを期に盛んになっていくわけです。

 

これらを発展させると不定調性になる

Dm7 |G7 |CM7 |を

Dフリジアン |Gホールトーン |Cリディアン |

とすると、不定調性的になります。モーダルハーモニーもまるで変ってしまうし、調的なバランスが崩れます。

「こんなの実際の音楽ではありえない」

そう思われるかもしれませんが、それは現代人の常識の範囲内での発想です。それを超えたところでAIがいずれとんでもない音楽を作るでしょう。不定調性はその時も体系として活用することができるでしょう。

 

では、先の四小節のモード変化を、
Dドリアン |Gミクソリディアン |Cアイオニアン |
の一小節ごとの変化を考えましょう。

時代はチック・コリアのハーモニーを生み出します。

例えば、
Dsus4(9,13)omitRoot |A♭mM7(13) |D/C |
みたいなハーモニーです。

これは
Dm7=D Dorian scale
G7=G alters dominate scale
D/C=C lydian scale

というコードスケールの概念を用いて、かつ単純音楽に聞こえさせないように、モードの概念を用いて、各コードスケールの特性音を用いた和音を作ります。

A♭mM7(13)は、GオルタードドミナントスケールがA♭メロディックマイナースケールのVII度からできる音階であるから、そこからG7が機能するトライトーン、b,fを持つ和音をモーダルハーモニーとして作り、それを堂々と使っていくわけです。この和音そのものが彼の実曲に使われているわけではないのですが、ここでは一応ハ長調に置き換えました。各位楽譜などを購入してご研究ください。