音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

27, ひこうき雲(和音がもつ言語性と作曲への活用)★★★

2017.9.10→2019.9.7更新

ユーミン楽曲の不定調性進行分

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27, ひこうき雲 / 松任谷由実(荒井由美)

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作者の意図が、聴き手一人一人にいつも完全に当てはまるとは限りません。
なぜなら、人間一人一人、感じ方も感性も異なるからです。
ゆえに「自分がどう聴くか、どう解釈するか」が大切だと思います(先生が、こうだ、と言ってもまずは信じないこと)。作曲家が「これは黒だ」といっても、あなたがもし「白だ」と感じたら、それはあなたにとっては白とするのは本来あなたの自由です。

そしてその印象は、明日変わってるかもしれません。

 

下記は私の観点です。

Aメロ
Eb--EbM7--Gm7--
Ab--AbM7--Fm7--
Bb--Bb7--Gm7--
AbM7--Bb7


ここでのキー(調)はEbメジャーです。
それぞれのはじまりは、

Eb=トニック
Ab=サブドミナント
Bb=ドミナント

の主要三和音です。Fm7で区切られています。面白いです。普通はFm7-Bb7というセットで一気に進んでしまうところを、ためてためてゆっくり進んでいくイメージです。

そのせいか結果的に歌詞のメッセージをじっくり聴かせるような効果を感じました。
このゆっくりとした流れが「懐かしさ」のような感覚を演出している、とも感じました。

「たたーたーー」

という下がるリズムのつぶやきのような旋律も影響しているでしょう。


これをヨーロッパ臭への憧れ、みたいにただ外観だけで捉えてしまうと、それだけで分析は終わりですし、自分の曲に生かす時の思考法には繋がらないと思います。

自分の感覚として、それは音楽的にどのような表現の方法に納められるのか、を考える、と良いと思います。

もしこの曲を聴いて、納豆が食べたくなった、と思ったら(極端な比喩です)、それでいいと思うんです。

そこから曲だけでなく、自分への理解が展開していきます。

    


===同曲の三小節目

|Gm7 B♭m7 |A♭M7 |のB♭m7について===

普通に作ると、
|Gm7 B♭7 |A♭M7 |
こうなりますよね、

ジャズでは、A♭M7に結びつけるコードとして下記のように用います。
|E♭M7 B♭m7 E♭7|A♭M7|
B♭m7での跳躍するような変化感がドラマチックですね。この曲のB♭m7は、その考え方そのものを結果的に発展させた利用法となっています。
|Gm7 B♭m7 |A♭M7 |
(そら)|を-かけてゆく| |


「空をかけてゆく」の跳躍感が、実際にB♭m7「跳躍する意思」を訴えるような音楽的クオリアとして添えられ、歌詞の語感と一緒になり、ただの一時転調コードであったVm7がたしかに「跳躍」という“意味”を持っているフォークソング的なコードに進化したように感じます。


歌詞のメッセージを表現するコードを探す、という手法から出てくるコードというものもあるのではないか、ということをこの曲は教えてくれます。

もちろんユーミン氏は、単純に短三度上げたら気持ち良かった、というだけかもしれなません。それでもあなたが「良い」と思える感覚があるならそちらの方があなたにとっての真実で、そこからあなたはもっと新しい解釈や技法を生み出せるかもしれません。大事なことは楽曲の批判ではなく、あなたにとってのこれからのことだと思います。せっかくこうして残された作品から人生を作らせてもらいましょう。


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またこの曲の最後、フェードアウト部分で、
|A♭M7 |B♭m7  |
=degree=
|IVM7 |Vm7  |
このB♭m7は、このサブドミナント→ドミナントマイナーというトニックに戻らない和声進行の浮遊感が「ひこうき雲に乗ってどこまでも」という印象を与えるとともに、「空をかけていくシーン」「残った雲がたなびいているシーン」がずっと連続している映像的、アニメーションの印象を残しているのを感じます(単にアニメで使われたから、そう思う、というだけかもしれません。しかしこの辺りが、人のイメージを構成する曖昧なものだと思います。)。

この二つの和音の中にいくつもの、歌詞になっていないメッセージを感じます。

エンディング、フェードアウトに意味がある曲って他にもあるけど、ああ、こういうことだったんだ、みたいな理解に進めば、自分が曲を作る時、「今回はエンディングを象徴的にしたい」みたいな発想ができるし、そうなって初めて楽曲分析というのは現代的になるのではないか、と思います。

ひこうき雲 


ジャズ理論による、記号化とコードアナライズ、スケールアナライズによる楽曲の理解は形態分析に終わってしまう、という場合があります。

つまりコードを分析し、機能を書き、転調を楽譜に書き込んでも、作曲の際にはそれが柔軟なインスピレーションの起爆剤にはなりにくい、

ということを感じておられないでしょうか。

(機能・記号分析はそもそもフーゴー・リーマンらによる独自論的音楽分析法であり、全ての音楽活動・思想に必要な情報を与えてくれる楽曲分析法とはなり得ていない)


それでは、どのような意識を持てば、この曲に使われた技法を自分なりに実践的に用いることができるのか、です。


「作曲された作品から受ける価値観」「作曲者の心情を想像した時に感じる価値観」「その音楽的進行と展開から自分が得る心情的意味」をまず自分なりに読解し、そこから自分の作品や編曲、ミックス等に生かす創造力の源にする、方法論、技術を抽出する具体的な作業が必要です。ラジオを分解して、構造を調べ、十文で作るためのヒントにする、というような具体性です。

あなた自身が、自在に考えて欲求して良い、ということを改めて発見することがとても大切であると考えています。

拙論に端を発する当ブログでこの観点から様々な思考を展開しています。

ユーミン楽曲はレポートになっていますので当ページ上部のレポートリンクからご覧いただけましたら幸いです。

 

 

 


==コーヒーブレイク〜M-Bankロビーの話題== 

これが一番衝撃的でした。作詞作曲に触れる話は、ちょっと"それ載っけていいの??"って思いました。

ルージュの伝言 (角川文庫 (5754))