自分で作った概念を「私の場合」とするのもなんですが、不定調性の概念自体は数百年以上?前から存在するので、やはり「私の場合」とするべきでしょう。
ここに書いてあることもご自身の文脈に置き換えてください。
まずこんなII-V-Iのフレーズがあったとしましょう。
まんまヴォイシングのDm7-G7-CM7です。
DTMミュージックはこれでいいんです。
DTMは音も綺麗だし、リズムのズレもありませんから人が弾けない(弾かない)ヴォイシングは「それまでにない新しい響き」とも言えたわけです。
今回はここからアレンジ、リハーモナイズ、不定調性化を順々に施してみましょう。
例えば旧ヴォイシングなら、
このよう和音の流れや音域を揃え、スムーズにするとジャズっぽく、合理的です。美しいですが手垢だらけのサウンドです。
このように音を揃えるのは、生の演奏ではそのようにするのが技術的に演奏を豊かにでき、表現に余裕を持たせることができる、というだけです。
このまま保守的なアレンジで続けましょう。次はテンションに置き換えるだけです。
少しだけサウンドが軽くなります。テンションを加えることで響きが曖昧、抽象的、パステルカラーになってきます。
ここでちょっとアナログっぽくアレンジしてみましょう。
音の強さ、とか演奏ニュアンスをつけます。さらに人間ぽさが出ます。
これと先ほどのテンションを乗せただけの音楽は別物です。
どっちがいいか、ではなく、別物です。
音楽理論でできるのはここまでです。
ここから先、このサイト風に言うと、
自分の音楽的なクオリアと信念に従うことで生み出す音楽で食べていく
となります。
そうなると、ここからは決められたアレンジや誰かの真似ではなく個人の文脈を組み合わせた音楽を作れることが独自性の重要な指針になります。
下記は私自身の価値観について述べてみます。皆さんそれぞれの音楽に活用して行っていただきたいです。
和音もII-V-Iの雰囲気を崩さないギリギリのところで関連性を保ちながらも崩していきます。音は何を置いても大丈夫です。その代わり全ての音に対して自分が意思を与えられなければなりません。音楽理論的な支えは全くありませんが、自分の判断で音を置いていくので確固たる確信を持てます。最初は難しいですが慣れます。
自分を信じる、ということに違和感がある人もあるかもしれません。
100%好き嫌いですから。
そして、このように好きなタイミングで協和と不協和の雰囲気をまぶしていくことができるのはDTMだけです。
ちょっと音の強弱やタイミングを変えるだけで不協和音は協和して響きます。
私の不定調性論もこの観点を重視して音を置いています。20世紀では不協和だった和音が、21世紀には不協和ではなくなりました。絶妙な不協和が「"灰色の焦燥感"をしっかり作るサウンド」になっています。
不協和にもpopな意味が当てはめられます。
しかしこの旋律は、
"いかにもカッコつけた現代音楽っぽくしてるやつ"
ですよね。
次を聞いて下さい。こちらは先の旋律感ではなく、より歌うようなフレーズのままこのソリッドな感じを用いた音表現です。
歌詞が載っていたら歌えそうですね。
私にとってはこれはこれでエモーショナルです。
こうしたやりかたを拙論では「音楽的なクオリアを駆使した表現」と言っています。
今回最後の音源です。
いくつかII-Vの音源を聴いてきたので、II-V感を感じてしまっていると思います。不定調性論はそうした感覚も用いてゆきます。調性音楽の伝統があるから、こうした音楽の意義も生まれるのです。
ただ私が好きなだけです。
結果としてこの音源はジャズっぽさ、ブルーさ、現代音楽感、イージーさすべて含んだ印象となり(ある意味、無意味で、無ニーズではあるが)、今私のイメージはこういうサウンドや音楽表現が好きです。
「不定調性世界」は十二音技法によって極められた調的世界のその先の「調的慣習と個人の欲求世界の共存」であり、私の音楽コンセプトです。
20世紀の汎調性主義(調性の存在は最初からあるものとしている印象)とは違います。調性などもともとない存在なのに調性が定義されてしまった後の時代です。
しかしこれにより、日本人に存在するもっと曖昧なバランスを表明しやすくなるのではないか、と思います。
また複調性というのも私自身はわかりません。二つの調性を同時に感じることができないからです。C∇とCmを同時に鳴らすと、現代におけるこなれた音楽聴取の耳ではC7(#9)の「かっこいいサウンド」に感じるのではないでしょうか?そうなると、これは複調ではなく、やはりCadd#9という混じり合った世界として、別途印象を確立してしまうのが私の性格だからです。
皆さんには皆さんの音楽世界のありようがあると思います。
どうぞ趣味作曲では、既存の価値で自身の価値を覆うことなく、自分自身のサウンドをとことん追求してみてください。