音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

耳コピを行う前に考えること

2018.7.15⇨2020.7.14更新

参考

www.terrax.site

 

これまでビートルズ(213曲)、ユーミン(370曲)、スティービー・ワンダー(328曲)(それぞれ発表当時)、その他演奏仕事もしていたので無数の曲を耳コピして楽譜、コード譜、DAW打ち込みを行ってきました。

 

専門校時代にはジョージ・ベンソンのアルバム20数枚を全曲(400曲弱)、ジョー・パスのヴァーチュオーゾも30曲ぐらい。

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ギターのフレットを通して音楽理論を身につけました。音楽理論は楽器から学ぶものだな、と知りました。

 

だからと言って見ての通り、すごい音楽家になったわけではありません。

 

 

耳コピが向いている人

上達したいなら「耳コピ」をやれ、と言われるかもしれません。

実に昭和的な発想です。

細々としたことが好きな人、一人でじっくり静かに作業を何時間もするのが好きな人は確かにこの作業、向いています。

また向いていても環境が整わないとできません。

・wifi環境のあるPCやスマホで音楽を聴けること

・小さい音でも聞くことのできるイヤフォンを持っていること(appleの3000円ぐらいのイヤフォンをお勧めします)

・小さな音を聞くことができる静かな環境、時間を2時間ぐらい確保できること

・自分の耳コピ専用の自由時間が毎日2時間以上あること 

です。

あとは楽器が弾ける人、絶対音感がある人はかなりのアドバンテージです。

 

もしこれらが揃わない場合、どれか一つでも耐えられない場合、

「耳コピではない、別な方法で同様の効果を得るための努力を自分で開発しなければならない」ということだと感じてください。

 

では耳コピができるようになると何が有利なのでしょう。

 

耳コピができると何が有利か

単純にそれが仕事になります。サラッとできるとそれだけで信頼度が上がりますし、人間関係も広がります。耳コピはスキルです。

正確にできなくても、ある程度できるだけでも十分仕事になります。

楽曲構造を把握しやすいので人より作業が早くなります。

あとは音楽の講師として仕事に役立ちます。

また音楽分析がしやすいです。感覚だけでなく音楽理論的文脈、歴史的伝統技法を捉えながら、音楽の構造全般を分析対象にすることができます。

日々忙しくツアーに回るくらいの実力がなく、耳コピするぐらいしか仕事がない人ならこれでもいいです。

もしあなたがそうでないなら、耳コピよりも実演奏の時間、作曲発信の実質数を増やしていかれると、上記のメリットを遥かに上回る知名度、実力、ギャラに恵まれます。

是非、どっちが自分に向いているか、考えてから耳コピの価値を考えてください。

耳コピを極めようと思うと1-2年が奪われます。

 

耳コピをやってみよう

まず知らない歌モノ曲を聴いて、歌い出しの歌のメロディを5秒ほど聴いて、ストップしてみましょう。

それで覚えて(できれば歌詞も)、自分でそっくりに歌ってみてください。

正確に歌えましたか?

これがすぐできる人はかなり素養があります。

 

本格的な耳コピ

メロディや楽器のパターンを総合的に聞き取る(カラオケを作りたいとか)ためには、ある程度楽譜が読める、書けることが条件になります。

初級音楽理論/ポピュラージャズ音楽理論の基本は絶対に必要です(または膨大な曲を聞き取る経験数があれば理論は関係ありませんが四、五年かかるかも)。

また、ベースやバスドラを聞くときはEQで低音を持ち上げて聞き取る、といった工夫も覚えます。

現代では再生スピードを下げたりEQいじったりができますが、昔はできなかったため逆に耳コピのスキルが向上したんだと思います。現在では使えるテクノロジーは使いまくってください。費やす時間が半分以下になります。

年長者の「耳コピやれ」は、作物作るならトラクター使うな、手を使え、的な話なので、どうなのでしょう。

 

現代は耳コピは必要ない

コード譜サイトが充実してるので、コード聞き取りぐらいならほぼ必要ないです。

また多少のお金を払えば、ネット上で耳コピしてくれるサービスも簡単に見つかります。

だから絶対に耳コピができるようにならねばならない必要はもうなくなりました。

音楽家の絶対的スキルではありません。

むしろ、耳コピができないから作ることのできる音楽スタイルもある、とも言える多価値観時代です。

耳コピは向き不向きです。

やってて楽しくなかったら速攻でやめた方が良いと思います。それは「あなたには他の生き方があるよ」という無意識からの囁きです。

そして私はいまだに、楽譜がネットに落ちていない曲の耳コピ依頼を受け、1曲700円(コード聞き取り/移調含め、のみの場合)でやっています。

耳コピは必要ないからこそ仕事になります。

 

時間に余裕がある人への課題の提案

人生に余裕のある人は「今から二年間、自分の好きなアーティストの全アルバム耳コピする!!」とか決めて頂いてやるといいです。それができる人なら必ずスキルになります。

息の長いアーティストは普遍性があり、やっていることが適当ではありません。当ブログではユーミンやスティービー・ワンダーがそうした例かと思います。

 

うちの耳コピ分析集です。

www.terrax.site

 

耳コピ=推測すること

耳コピはほとんど経験と勘で進めます。全部完璧に聞き取るのではなく、こうかな?と聞き取った音を楽器で弾いてみたりして「だいたい」でどんどん進めます。

それがいずれは正確になっていく、というだけです。

やがて聞くだけでコードの流れをディグリーで判断できるようになります。

ああ、いまのII7だ、ああ、今のサブドミナントマイナーだ、みたいに。

いきなり完璧には聞き取れません。 

ネットがなかった時代、ギターソロやリフをよく耳コピしてました。

ギターキッズだったので。

あとはトレーニングです。

バスドラだけとってみる、スネアだけとってみる、ギターのバッキングだけとってみる、といった形でどんどん楽器を取っていきます。友人からの依頼も入ります。そのまま続けて社会人になったらお金をもらうようにしました。「自分のためにも自分で聞き取れや!!」とか一切言いませんでした笑。

やがて仕事になるかも...となんとなく感じていたのでしょう。

 

逆に全て完璧に聞き取るような作業は、別途設けて、

「よし、このイントロ、絶対に原曲と見間違うくらい聞き取って、打ち込んで作ってやる」みたいな"イベント"にして集中してやるといいです。人間の集中力は限界があるので、こうしたピンポイント作業を完コピする、というのは仲間内とかでやってもかなり面白いです。

またカラオケ制作打ち込みは別次元ですのでここでの話とは分けてください。私はなんでも改変して自分解釈してしまうので、原曲リスペクト完コピ姿勢には向いていない、と感じました。

 

最初の頃の私のやり方は・・・

・まずキーを把握(もうここで音楽理論が必要です/最近の曲は転調だらけなのでその都度)。

・そのキーのダイアトニックコードを書き出す(今は書き出しません)。

・キーが分かったら、あとはコードをなんとなく聞き取る(必要に応じてベースを聞き取るとコードネームのルートがわかるから推測しやすい)。

・ベースは単音でコードのルートを弾いていることが多いので、ex)キーがAmでベースがa音を中心に弾いていたらその小節はAmである確率が高いです。それをベースにして自分でもコードを弾きながらギターやシンセの音を聞き取って合わせて推測していきます。

・慣れてくるとコード展開を覚えるので、「次はFかな?」とか分かるようになります。最初は王道ポップスをたくさん聞き取る作業を機械的に進めていくと上達も早いです(寝る前毎日20分耳コピとか)。

・初歩の練習曲はアコースティックギター1本だけとかの70年代のフォークソングなどもいいかもしれません。コードも簡単ですから「進行感」を覚えやすいです。

 ・コード進行にはパターンがあるので、曲の長さぶんコードが変わるわけではなく、3−4パターンのパートがあるので、1番を聞き取れば2番もだいたい同じです(特に洋楽・昭和・前平成曲は)。

 ・ある程度聞き取ったら、コードを並べて弾いてみる。違和感なく歌えたら、コード耳コピ完了です。

 ・「予想して聞き取る」です。全部聴きとるわけではありません。洋楽などでは、ミストーンがそのまま記録されている場合もあります。 

・打ち込み制作の原曲に寄せるカバーなどでは私は次のように聞きとっていきます。

バズドラ⇨スネア⇨ハット、シンバル⇨パーカッション⇨

ベース⇨FX類(サウンドエフェクトもの)

ピアノ/鍵盤ものギター/刻み系⇨ストリングス系上物

長時間やると聞きすぎて「耳がバカになって」しまい立体感が失われます。そうしたらもうその仕事は今日はやめましょう。 

 

最初はできなくていい

最初はぐちゃぐちゃで、違和感ありまくりでOKです。

そのうち、

あれ?この展開、このあいだの曲も出てきたな?

この曲の方が聞き取りやすいな?

ひょっとするとあの曲もこういう進行だったのかな?

などと後戻りしながら毎曲毎曲上達していくものです。

あとはそれでも楽しいな、と感じたら確実に向いています。

 

 

耳コピは予測して聞き取り、最後は自分で解釈する。

面白そうだな、と思った人はトライしてください。面白そうと思った人はできます。

私は知りたがりだったので、夢中で耳コピしました。

どうしても時間がないときは、朝起きたあとの15分だけ耳コピに使いました。

寝ぼけたまま朝起きて気がつくと、ヘッドフォンをして、ノートを拾い、ギターを抱え半分目が開かないまま再生ボタンを押してました。朝起きて寝ぼけたまま生卵を飲み干しマラソンに行くロッキーのように。

 

完コピ

DTMでのカラオケ制作など原曲リスペクトな制作はより厳密です。2秒ごとに原曲と耳コピした曲を交互に聞きながらチェックする、的なことをしていました(携帯着メロ・カラオケ打ち込み業務経験あり)。

このレベルになると一人でやるのは大変なので業務として経験すると開眼する方もおられるかも。

 

耳コピができない人もいます

どこにもない音楽を創造したいと強く思っている人=天才型

他人の曲に”そこまで”興味がない人=自分でだいたい頭の中に音楽が鳴ってしまう

...etc様々なその人の素養や普段のイメージのためにその作業を行いたくない、行えない、と確信している人もいます。

そういう人は独自の道を極める道に早く進んでください!

あなたにあなたの生き方を導ける人自体がいないかもしれません。

自分で切り拓かないといけない人生もあります。

 

 

下記制作ページなどでのyoutubeカバー作品は全て耳コピカバーです。

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