ユーミン歌詞・コード考 / アルバム「OLIVE」1
ユーミンレポート目次
前の記事
歌詞については掲載しておりませんので
https://www.uta-net.com/artist/2750/
こちら等にて確認ください。
青いエアメイル
<Aメロ>
AM7--DM7--Bm7-Bm7/E--AM7
Em7--A7--DM7--F#m7--B7--E
AM7--DM7--Bm7-Bm7/E--C#m7-F#7
DM7--E/D--C#7--F#m7--Bm7-Bm7/E--AM7
分数コードが、ふわっと浮いて、雨上がりの雰囲気や、懐かしい述懐シーンのイメージを感じます。ボソッと歌って間を置いたメロディの切り方をしているからかも。
F#m7--B7--Eの和音の雰囲気を"翻訳"してみてください。下記は私の翻訳、
「それでね・・・だったの、さらにそれでね・・・だったのよ」
的な文章の説得力を高める語りかけ口調の雰囲気を感じました。
呟くようなメロディがさらに一人想いにふける感じを高めてくれます。
それゆえに、「5年、いえ8年」などと言い直して、自分の妄想を自分で訂正して、「こんな風に思いを巡らせている」登場人物の心情を、この言い直しで全て表現されています。
曖昧さの中に正確さを必死で求めようとする主人公の独特の妄想性、自分を傷つけるような真実がある場合には、それを自分なりの妄想で隠して自分を守ろうとする主人公の生きる力、をも感じさせます。
このメロディーを作っていたら、全体の雰囲気と相まって、こういう歌詞になってしまった、とでもいうメロディーと歌詞、テンポ感の相関が絶妙です。
(もし詞先だったら、またアプローチ変わりますが)
間奏で、Aメロに戻る最後のコードはFaug的なまたはE7sus4(b9)/F的な不思議なコードです。このAメロに戻る前のコードも仕掛けられる場所で、いろんな実験ができます。
主和音または"戻る"ことが分かっている前の部分は、はっきり言ってどんなコードを置いても戻れます(不定調性論でいう"ハーモナイズポイント")。
このVIbaugも効果的です。「欠けてしまって、もう戻らない想い出」感を演出しているコードだと思います。
こういう言葉にしないけど音楽で言ってます、的な要素が「深み」とか「味わい」ですよね。
また曲の最後のVIbも何とも言えない変化感。
曲が終わる時も仕掛けです。いつもトニックで終わる必要はありません。
このVIbの変化感はここでは、新しい季節を迎えて、新しい明日へ向かうわ!という思いをポジティブに感じさせてくれるコードのように思えませんか?
ドラマのエンディングを見ているようです。
ツバメのように
また重苦しい内容なのに、ファンキーな曲調の歌。
外国の歌にはこういうテンションで、死について語る歌がありますね。そういう感覚というのは、真似するものではなくて、アーティストの感性なのかもしれません。
どうも歌詞の内容と曲調に違和感があるんですが、この怖さのようなものは何でしょう。
淡々さ。
死が憧れでなく、忌み嫌うものでもなかったら、なんなんだろう。
それもまた恋とおんなじ、であるとしたら、何となくこういう歌も「恋愛の歌」がもつ独特の色彩感の、反動的指向である「黒い恋の歌」ということになるのでしょうか。
死も恋も出来事。そこに違いはなくて、感情があるだけ。みたいな。
ちょっと物事への考え方そのものについて革新的になりますよね。
ひょっとして自分、自分の考え方に縛られていないだろうか。。
なんて思わされます。
次の記事