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音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

43, Aja / Steely Dan

スティーリー・ダンの不定調性進行分析

43, Aja / Steely Dan

 

   

『彩(エイジャ)』です。
当初、「大人の音楽ってむずかしいなぁ。」と感じました。「むずかしい」というのが最初の「音楽的印象」でした。


Steely Dan - Aja

 

要点をまとめるために歌の部分だけみてみましょう。

BM7 |% |A/B |BM7 EM7 |
Bm7(11) |% |CM7 |% |DM7(9) |% |
E7 |% |GM7 A/B GM7 |G |Gb7 |Eb7 |Ab7 |% |
Bm7 |% |CM7 |% |
FM7 Em7 |3/4 DbM7(b5) |CM7(b5) |% |BM7~

メロディにはAbマイナー的、Aメジャー(リディアン)的な要素はありますが、キーを考えるのはやめましょう。

この曲の転調の意味を、ジャズ理論で分析できたとしても、解明できるのはD.フェイゲンの頭の構造と考え癖だけで、それはあなたにとっていつどのように役に立つかまでを示してはくれません。

分析記号は「ほら、このコードは君の曲でいつも使うエンディングとかに使えそうでしょ?」とは囁いてくれないからです。

そう考えるのはあなた自身です。だから分析記号だけではなく、曲そのものの聴感上から感じられる「進行感」をあなたの言葉で考えていく、という分析がもう一つできるようになるととても便利です。

そしてその「あなたの印象」はジャズ理論の解釈に則っていないかもしれません。全く違う分析をするかもしれません。でもそれでいいんです。

それが次にあなたの動機や目的になり、新たな音楽手法となって生み出されるからです。

 

あと必要なのは自分の感覚を信じる勇気です。

これは最初とても難しいことでしょう。そうできるようになるために少しでも勉強し、自分の感覚を研ぎ澄ませていくわけです。と言って、「ちゃんと勉強できるようになるまでは自分を信じない」というスタンスではありません。今すぐあなたの感覚を信じてください。その行動が、あなたを勉強に駆り立てるからです。自分の感覚を信じていないのに勉強をする、させる、というのは義務教育で身についてしまった奴隷感覚です。

あなたはたとえどんなに未熟でも奴隷ではありません。生まれながらに完全に自由です。で、自由な人間は何も学ぶ必要がありません。だからこそ自分の信じる進むべき道を進んで色々な軋轢を体験し、「もっと知りたい!!!」となるから勉強し始めるのだと思います。

 

音楽に存在するのは不定調性論では「進行感」だけです。

それは作曲家の「音楽的脈絡」であり、それを聴いた聞き手はまた自分なりの脈絡を作り、理解するわけです。ものを知っていればして散るほどその音楽的意味の受容力は強くなります。

 

そして皆が皆同じ脈絡を感じることはできません。

 

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BM7 |% |A/B |BM7 EM7 |Bm7(11) |% |
A/BはVIIbを感じさせます。このバンドが好きなコードです。
つぎのBM7-EM7-Bm7(11)はII-V-I的な、いっせーのっせ!という進行感を感じます。

これをジャズ理論位に則って無理くりII-Vにしてみましょうか。

**************
BM7=b,d#,f#,a#ですから、
C#m7(9,11,13)=c#,e,g#,b,d#,f#,a#

で、似ています?(無理がある)。

EM7=e,g#,b,d#ですから
F#7sus4(9,13)=f#,b,c#,d#,g#,d#

で似ています?(無理がある)。

ゆえに、
BM7-EM7-Bm7(11)は、
C#m7-F#7sus4-Bm7の進化したII-V進行である///

****************
と言い放つこともできるでしょう。でもこれを、他の曲で応用するのは面倒でしょう。
いつ使えば良いか分からないし、あまり好きじゃない、となったら、この手法は一般化されません。何より、なんでこんな代理を考えて、理論的に正当性があるかどうかに苦しめられなければならないのでしょう。あなたにとっての正義は100%理論書の中にありますか?


こうした進行感について、不定調性論では、コードマトリックスというコンセプトで、表にした「拡大した調性を用いる機能感」という方法論もあることにはあります。

Cのサブドミナント特性音を持つ和音、ドミナント特性音を持つ和音、トニック特性音を持つ和音を並べてハイブリッドなII-V-Iを作り上げる手法です。

一つ例を挙げると、
Cメジャーキーの
サブドミナント特性音f,a
ドミナント特性音f,b
トニック特性音c,e
を持っているコードがそれぞれの機能となる、と定めると、
BbM7--Eb7(#5,9)--Ab7(b13)
をみてください。

「これがDm7-G7-CM7の発展形です」と言ってもなかなか分からないと思いますが、特性音は確かに持っています。

ですから理論的には、「CメジャーキーのII-V-Iが希少に内在されている解決進行」と言えるわけです。
これは従来の音楽理論の拡大解釈が招いた問題の一つです。
でも「解決進行だ」と思って弾くと、それなりの進行感を得られるわけです。
でもそれは特性音のせいではなく、単に和音が連鎖した時に感じる人の印象、と考えると、どんな和声進行でも進行感が得られます。

BbM7--Eb7(9)--Ab7(13)

と、ちょっと変えた方が、解決感がある、となれば、おいおい何でも良いんじゃん。
となってしまいます。この感覚こそが不定調性論で音楽の展開について最も重要になる「個人の進行感の確立」となります。これが出来上がればあなたはあなただけの音楽理解の方法論を得ます。音楽はますます楽しくなります。そして「一般的にはなんて言ってるんだろう」という疑問が湧き、伝統音楽理論やジャズ理論を学ぶ動機が生まれるわけです。「自分はこのコード、こう思ってきたけど、教科書でもおんなじようなことが書いてある!!」とわかることで色々啓示をもらえることでしょう。

 

また、どう部分の最後のBm7(11)はAsus4/Bのようにも響きます。B-E-Aという根音進行をBM7-EM7-Asus4とした連鎖進行といえます。上部の和声単位は、適宜決めることができます。

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CM7 |% |DM7(9) |% |E7 |% |
ここはVIb--VIIb--I7という形態が作られています。

従来のVIbM7-VIIb7--Imの印象の発展代用といえるかもしれません。
最初のCM7は、Bm7-CM7というフリジアンのI-IIbの感覚が代用されています。
ここでもM7が和声単位として主に用いられます。
和声単位が統一されると、色彩感が似てきますので、逆に変化をつけたいところが見えてきます。
”調とは異なる統一性の概念が用いられている”と、言っても良いでしょう。

 

GM7 A/B GM7 |G |Gb7 |Eb7 |Ab7 |% |
ここでは、G-Gb7においてIV-III7の形式の印象が代用され、次のEb7はVIb7に飛んだように感じ、またAb7はそのII7-V7に感じます。
ここも進行感を知り尽くした人が作っている、という印象を与えます。
ビートルズ楽曲などの先にある感覚ではないかと。

 

Bm7 |% |CM7 |% |
FM7 Em7 |3/4 DbM7(b5) |CM7(b5) |% |BM7~
これはまとめの部分です。
Bm7-CM7は先ほどのIm7-IIbというフリジアン進行的です。

そしてまたFM7でCにおけるIVに飛んだように感じさせます。
こういうのは普段CM7からFM7に飛んだ時にどんな印象が起こることを知り、それをここで使ってみて、全体として変でなければ、使ってみる、という発想で良いのではないでしょうか。
そのかわり「どんな流れになっても、俺は頭のBM7に戻ってみせるぜ」という訳もない自信が必要です。

それからダイアトニック進行的に、ベースラインが下降していきます。
Fm7-Em7-Dm7-CM7といってしまっては、調が明らかになり過ぎるので、
FM7-Em7-DbM7(b5)-CM7(b5)-BM7~
という流れになっています。
このDbM7(b5)は、疑問符で終わる偽終止DbM7の変化系です。そう言う変化性を超えて、IIbの響きをならしてみたら、「良い感じだなぁ」と思った瞬間この進行を個人が自分の音楽で使えるようになる!というのが不定調性の発想です。
そのためにはもちろんIIbM7への進行感を「知っている」必要があります。

 

最後にCM7(b5)について、
ふつうにCM7にすればいいのに、と思うところですが、この和音、何度も弾いて聴き比べてみてください。CM7よりもCM7(b5)のほうが潤いというか、湿ったかんじがありませんか??もちろん各位の感じ方でOKです。

これも和声連鎖の印象力が強化されることによって、「使える武器」が増えた、わけです。
ゲームでは経験値が大切なように、ミュージシャンにとっても耳の経験値の向上によってこうした「普通の人が使えない武器」を使えるんですね。

これを鍛えるのが不定調性の和声論です。


たとえば、
Dm7-G7-CM7
Dm7-G7-CM7(b5)
Dm7-G7-CM7(#5)
Dm7-G7-Csus4M7

など、いろいろケーデンスの部分で試してみて、それぞれが自分の中にもたらす色彩感、印象の変化を確認しながらどんどん使ってみてください!

 

「こんなコードありえない」というのは、現状でのその人が許せるか許せないかを決めているだけであり、宇宙規模から見たら、音楽はもっと精巧な精神構造を表現できるまでの凶王の器が用意されていることを知るはずです。故にガンガン勉強して許容ハニを広げた上で、どこにおさめるかを自分で決めればいいわけです。

そこに勇気がいります。

 

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