米津玄師氏の『Lemon』の現代音楽方法論的カバーというものを作ってみました。
曲後半は十二音技法ではなく、不定調性論です。途中で自分のやりたいことができなくて挫折しました。無能でした。ただこういうダメな感じがすごく自分の感じに合っていたので、そのまま戦略を変え、それに応いて前半部分も整え直して完成させました。結果的にいかにも自分らしいアレンジだと感じます。
前半と後半は特に旋律のリズムがほとんどそのまんま反映されていると思います。
12音技法の記事は別途書かせていただいています。
使用した理由は、仕事の上で十二音技法の制作感を確認しなければならなかった、という点と、曲は無調的でも、聞いたことのある心象が浮かぶ楽曲が意識の上に上がってくると、きっと無調はもっと違う無調へと意識の上では変質するのではないか?という実験をしたかったからです。
何を持って「調性」というのか、に個人の解釈を含めないとすると、それは料理の味を客観的に述べたものと同じだと思います。
カレーの味。きっと一人一人最近食べたカレーの味と、思い出のカレーの味と風景が蘇るはずです。そこには一切の一般性は入り込みません。あなたの思い出とあなたの体感とを、料理評論家が述べる言葉とリンクさせるだけであり、答えは評論家の言葉にあるのではなく、あなたの中のクオリアとリンクしたなんらかのイメージがあなたにとっての答えのはずです。
これを「音楽的なクオリア」としてください。
それらを含めて、『Lemon』を知っている人がこの曲を聞いたときに浮かぶ、"苦いレモンの匂い"があるのではないか、と思います。
1:20ぐらいまではメロディのラインだけ、下記の音列で作りました。
この音列を移調したり、反転したり(inversion)、逆行させたり(Retrograde)逆転させて反転させたりして使っていい、というのが12音技法の作曲方法です。
十二音技法の音世界に、やってみてすぐ、違和感がありました。方法論と方法論のぶつかりみたいなものです。
そこで一挙に計画の変更を迫られ、メロディだけセリー(音列のこと)を使うことにして、伴奏や合間の合いの手は自分の不定調性感覚でのアレンジにすることにしました。
ブリッジ部分は、下記のように、メロディを含んだラインを最初に配置して、和音を厚めに作り、必要に応じておかずを入れてゆきます。
やっぱり自分はこのやり方が好きだな、とか変なこだわりを持ってしまいました。
勉強が足りていません。
このやり方は、単音概念とか、マザーメロディ、という考え方で記事では紹介しています。その他の音楽理論でも似たような手法はあると思います。
途中の
これはおまけです。果実の切れているところだけを音にしました(G7(b9,b13)的なサウンドです)。他は別トラックで作って表示だけされて、音は鳴りません。鳴らしても良かったのですが、なんか表現したいことがごちゃっとするのでやめました。
後半は何度かメロディを弾いて、クオリアが降ってくるのを待ってました。
いくつか作業していたら、あ、不定調ブルージーにしよう、と思い立ち、リズミカルで、ブルーなノリでまとめられています。
やっぱり自分は、システムの中だけで音楽を作る、ということはできないな、と改めて思い知らされました。
多分まだまだなんだ。
最後のこの緑の音。
lemonのメロディになっています。
...El Mónは「世界」という意味なのだそうで、elは女性名詞につく冠詞なのだとか。
詳しくはないのですが、題名として使わせていただきました。文法的に正しいかは???です。そこには今、もっと大事なものがあるように感じたので。