前回
それでは音を組み合わせましょう。
前回の表を再度。
こちらに基づき、簡単で特殊性のあるものから考えます。
作られたシークエンスとして認識しやすい単位を個人で定めてください。例えば4/4の1小節を1つのシークエンスの最大単位とか、です。もっと凝りたい方は凝ってください。もっとシンプルにしたい方シンプルにしてください。これはどこまでの流れをシークエンスとして感じるか、と云う個人の音楽的なクオリア、に依存すると思います。
Z0型
無音ですからこうなります。実音としては一種類ですが、妄想の中のフレーズは無限大です笑。仏教的な境地ですね。ケージの「4:33」を表現できます。そして誰でもこれによって名曲が作れる、と云う芸術概念の最初と最後の全ての先(?)を含んでいます。
Rp型
同音連鎖です。同音が連鎖しているところはこのRp型、と解釈できます(無音のとこをろはZ0型といおうかな...)。
Z0型を併用するなら、音符と音符の間にZ0型が含まれていない、と証明できない、ともいえますから、お任せします。
そう云う哲学的なところを考えたい方はどうぞご自身も独自論でお考えください。
この場合の組み合わせも一小節の中でできることだけ考えても無限にできます。
変化する音程を決めてユニットを作り、それらを繰り返し繋ぐことでシークエンス感を出すことができ、通例のコードスケールでのメロディ作成とは異なる雰囲気を作り出すことができます。
このとき、よりシステマチックにするか、ベースとなるルールを決めたあともっとゆるくやるかは、演者の判断にまかされます。
次の音源を聴いてください。
変...??笑。
m3↑とM3↓のシークエンスを繰り返しながら、なんとなく該当のコード構成音と関わりのある音を入れて"辻褄が合うように"作ると、フュージョンフレーズが自動的にできます。
ここではGmのII-V部分に同じシークエンスを二つ重ねました。Gmのところでは同じですから、二つのシークエンスしか使ってません。
休符が入ったり、アクセントを変えたりするだけで全く複雑なフレージングになります。
<それ以外の連鎖>
ここでバリエーション表を列挙して威厳を見せたいところですが、それはおそらく「全スケール表」を列挙するぐらい意味がないと思います。バリエーションがありすぎて、何を選んでいいのか、表からはわからないと思います。
その代わり次の「シークエンス構成チャート」をやってみてください。
1.どのくらいの長さのシークエンス/符割りにしますか?
ex...うーん裏拍トレーニング運指練習したいから16分音符の裏だけ最後三連、1小節かな。
2.コード進行を設定しますか?不定調性にしますか?
ex...II-Vの変態フレーズ練習をしたいからII-Vを短三度で連続させようかな
Dm7-G7-Fm7-Bb7-Abm7-Db7...
3.コードトーン/スケールトーンがなんとなく主要に配置されるような不定調的シークエンスを、自分が練習になると思う運指難易度で一つ設定してみてください。
ex...こんな感じかな、、、
ここではコードトーンにアクセントを置いて、その後ろにm2↓M2↓m3↓m3↓+4↓という規則で音を配置しています。最後はDm7ならdを、G7ならgを弾くことになるため、間違っているときはここで分かります。
ギター等フレット楽器だとポジショニングで音程位置が分かるのでシステマチックな運指練習には最適です。聴き慣れないフレーズですから、カオスな曲の1コードスペースでも練習フレーズっぽく聞かれずそのまま使えます。
普段から少しずつ練習しておくと、いざという時の飛び道具、に使えてオリジナルフレーズもできて運指練習にもなって一石三鳥です。
音楽性を疑われたらすみません笑。
このようなコードに対する「協和の濃度」についても個人のご判断で決めていくしかありません。そのためには普段から、何が自分に響いて、何が自分に響かないか、の経験を積んでいかないといけません。
音にしてみましょう。
楽譜は分かりやすいようにト音記号の範囲に置き換えています。
Dm7 |G7 |Fm7 |Bb7|Abm7 |Db7 |Bm7 |E7 |
です。
この場合の練習時のポイントは、
間違っても、間違ったかどうかわからない
という点です笑。
間違っても響きはそれっぽくなってしまうからです。
逆をいえば、
間違いという概念に分けられないくらいの表現を醸し出すのが不定調性フレーズ
と書くこともできます。フリージャズや不定調性的音楽の特筆点かも知れません。
またはそこに意図が存在すれば、人の耳には意味が感じられてしまうという性質を御活用しているのかもしれません。
例えば3シークエンス目のFm7のところはこんな構造の音が鳴っています。
これをモードにすると
Eハーモニックメジャー+b9thというものです。
たまたまなのですが、このアプローチ音もEsus49でC7でもF#7にもなれないので、本当にカオスな響きになっています。
これを無理やり調的に解釈したり、Fm7でb9thとM3が鳴っているからダメ、と決めつけるのが果たして良いのか、という点が問題になると思います。
このフレーズは理論では作れません。しかしシークエンス的思考でなら数秒で生み出せます。筆算にインド数学を使うか、電卓を使うか、個人のライフスタイルに依存します。
理論的フレーズは理論で作ってください。
それ以外のフレージングはそれ以外のあなただけのやり方を模索してください。
あとは"盛大に間違った"フレーズがシークエンスになり「連鎖された時に生まれる進行感」を新しいと感じるか、それはなしと感じるかは個人の音楽的経験や素養で決めれば良いと思います。音の連鎖に意味を持てるか持てないかだけでもご自身で決めて頂くと、ご自身の音楽の今の位置付けが分かるのではないかと思います。
これ、どこが変??か聞いて分かりますか?
冒頭がDm7なのにいきなりe♭から入っています。だから変と言えば変です。しかしジャズではこういった半音上からのアプローチも行われていますし、そもそもここではそれ以外の音がめちゃくちゃなわけですから、そういう意図なんだろうなぐらいに思う感覚が始動するので、冒頭の音の間違い感はかなり希薄になるはずです。
...と思える人はこのフレーズは音楽として成り立ちますし、それはこれこれこういう理由で絶対ダメ、というのであればその人はそれを採用しなければ良いだけです。
その結果本当に自分を自由にするのは自分だけの方法論であると思います。そこまで自由になりたいなら。
それゆえいざという時のためにご自身の独自論を密かに持ってみてはいかがでしょう?とご提案申し上げています。でもご家庭にシェルター作る人が少ないように、独自論を持つ人も少ないと思いますので必須ではありません。
機能和声的な音楽は、多くの音楽愛好者に聞き分けられるくらい親しまれています。
だから「間違ったアルペジオ」ぐらいはすぐ聞き分けられます。「なんか普通だったら聴かない感じ」を作るからです。
シークエンスという概念が作る構築美
フレーズがシークエンスになっている場合、演奏者や表現者の力の入れ加減が安定するので、それぞれのシークエンスの音観が分かりやすくなります。アクセントや音価がバラバラにならず、シークエンスで弾くことで聴感的にはリズミックな統一感が感じられます。
その対極にあるのが不定調性の完全即興ですが、これは捉え所もない砂漠や大海原の模様のような雰囲気です。その中で突然サソリが這い出てきたり、魚が飛び上がるのでそれっぽい世界観が生まれますが、西洋庭園の美のような有限の統一性などはありません。どちらかと言えば「幽玄」です。あとはどっちをその都度自分に求めるか、の選択だけです。こういうコード進行に対するアウトの具合を「協和の濃度」「協和の分解能」「協和の三次元の構図」などというような考え方でご自身の感じ方をまとめると良いと思います。
不定調性論でもモデルがないといけない、と思い、無理やり自分が感じる音のモデルをモデルにしました。このキューブモデルはいくらでも変形可能にしてあります。
また今回用のキューブのモデルを作ってみました。
このような関係性がある時、さきのFm7とEsus49の関係を
Cm7 Bsus49の関係に置き換えて関係性を見ると、
このようにそれらの関係性の位置どりが分かります。あとは、このモデルにおいて響きのバランスをとる時、bの表面であるfを鳴らすか。逆にbをやめて、eの裏のb♭がなるようにするか?とか音程配置のバランスを見ることができます。
音に対する印象は随時変わるので、関係性が変わらない音の配置を作っておくとオリジシナリティを維持できます。さらに不定調性では「音楽的なクオリア」という発想があるので、ここでは9thの響き欲しいな、と一般理論の感覚を無造作に代入できたりします。
この辺りも瞬間的な直観的熟慮(不定調性用語)が大切になると思います。
続く。